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    さくみ

    @393online

    随時ラクガキか小説更新。大分やりたい放題。なお、勝手に消すことあるます。気に入った、刺さったものあればリアクション、感想等どうぞ🌠

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    さくみ

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    彷徨君に関した没ネタ。

    『未来図』
    「なんだよ親父。日曜日のこんな朝っぱらから叩き起しやがって…しかも何で本堂…」
    「日曜日だからこそじゃ。全く寺の息子が休みでもぐうたらしおって。お前ももう17じゃ。お前の人生じゃからとやかく言うつもりはなかったんじゃが、真剣に聞いておこうと思っての」
    日曜日の朝6時。昨夜は生徒会の書類を遅くまで仕上げていて、深夜1時頃にようやく寝れたと思いきや、僅か数時間後に宝晶に叩き起されてた挙句、本堂に来いと言われ文句タラタラだ。日曜日くらいゆっくりさせて欲しいのに、そんな事はお構い無しなのが西遠寺家現住職である。座布団に正座させられウンザリだ。朝から何の説教する気なのだろうか。
    「彷徨よ…ワシは後どれくらいここで住職としているか分からん。じゃが、ワシの代でたたむのは惜しい気もしての。お前はこの寺を継ぐ気はあるのか?」
    「……何かと思えばそんな話をするためにこんな朝っぱらから叩き起されたのか…」
    「ええい、ワシは至って真剣じゃぞ彷徨!彷徨の人生をとやかく言うつもりは今までなかった。母親を早くに亡くして寂しさや我慢をさせておったから、お前には好きな事を存分にさせてやりとうと思っとった!」
    と言う割には自分だって好き勝手やりたい放題は変わらないじゃないかと彷徨は思ったが、口にせず黙って宝晶の話を右から左へ聞き流した。
    「ワシの次に寺の跡継ぎはお前しかおらん。無理に継がせるつもりはない。じゃが、今の彷徨の本心を確認して起きたいのじゃ」
    「本心…」
    「17だからまだ早いかとも思っておったが、もう17だからじゃ。もし、お前が継ぐともなれば、後継者として然るべき西遠寺家を伝えねばとな」
    そろそろ将来への進路を確定しろと言われているようである。うすうすどこかで考えなければならないとは思っていた。古い寺ではあるが、自分が育った家であって思い出が全く無い訳ではない。
    宝晶も大分年老いて来ており、まだまだ現役なのは違いなくとも、それも後どれくらいやれるか宝晶自身も心配だから彷徨に継ぐ意思があるのか確認したいのだろう。
    「昔は継ぐ気全然なかった。今は、断片的だけど視野にはある。ただ、まだハッキリは言えねぇよ。やるとしたら、おれの中の土台を全部整えてから、かな」
    「どういう事じゃ」
    「おれだって人生計画あるんだよ。後どれくらいで何をして、とかさ。すぐやれって言われてもそれは無理。ただ、全く継がないとは思ってないから、そこは安心しろ親父」
    「…そうか。すまんな、急かせてしもうて」
    「別に」
    本堂を出て自身の部屋に移動する前に、そのまま裏手へ回る。そこにはひっそり鎮座する、亡き母の墓。墓の前に立ち、話しかけるように呟く。
    「親父はあぁ言ってたけど、おれ、案外寂しがったり我慢したり何かしてなかったから。人付き合いも含めてこれでも結構楽しんでるんだ。おれの心配は要らないから、親父のこと見ててくれよな………母さん」
    そう言って、身体を伸ばせて墓から離れようとした時、スーッと心地よい風が後頭部から上へ駆け抜けて行き、まるで、撫でられたような感覚だった。彷徨はパッと後ろを向いたがそこには墓があるだけで、当然誰かいる訳ではない。だが、直感的に母だったんじゃないかと思えた。
    ━━━━━━━━━━━━━━━
    自室の押し入れから取り出したのは、写経の手本。それを机に拡げた。これは昔宝晶からもらったものだ。いつかお前も書けるようになと幼い時に受け取っていたが、結局1度も書いたことはなかった。書道用の用具も出して、墨をする。筆に漆黒を馴染ませて、手本の上から半紙を敷き、筆でなぞりあげる。
    「あっ」
    墨を付けすぎたのか酷く滲んで、歪んだ文字がそこに写っていた。
    「意外と難しいな…」
    宝晶がしていた事は何度も見ている。お経は子守唄のように毎日聞き、あっという間に覚えてしまった。写経の姿だって何度も見ていたのに。いざやると写すだけなのになかなか書けず苦笑い。
    「ふはっ、下手くそ」
    将来的に本堂で、それを行う自身の姿は全然見えないけれど、この先どこかで確実に次の住職は自分なのは見える。その隣には大切な人、あわよくば新しい家族も迎えていて…なんて未来だったらいいのにと思えた。
    「もっかいやるか」
    「かーなーたっ♡数学と現文教えてー!」
    バァンと戸が開いた音に驚き、同時に筆がジャーっと滑った。
    「あ…」
    「あれ、何これ呪文でも書いてるの?」
    「おーまーえーなー」
    「きゃーごめんってばー!」
    だが、やっぱり今はそんな想像全く出来ないと思うのであった。
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    Remma_KTG

    DOODLE診断メーカーで出たやつ書いてみた。

    蓮魔の長晋のBL本は
    【題】柔い眼
    【帯】物にも人にも執着しない貴方が怖い
    【書き出し】雨に混じるよく知った匂いを気づかれないように吸い込んだ。
    です

    #限界オタクのBL本 #shindanmaker
    https://shindanmaker.com/878367
    柔い眼 雨に混じるよく知った匂いを気づかれないように吸い込んだ。墓から線香の匂いを連れてきていて、それが妙になじんでいた。
     同じ傘に入る男の肩が濡れている。長可はそっと傘を傾けて彼の体を影に入れたが長い髪はどうしても濡れてしまう。片手で髪を引き寄せて、雑にまとめて肩に載せてやる。長可より背の低い男の表情かおは、前髪で隠れてしまってこちらには見えない。
    「……悪い。片手じゃうまくまとまらねえわ」
    「帰ったら切るんだ、そのままでいい」
     さっきまで他の話をしていた高杉は、一瞬だけこちらに反応をよこしてまた元の話の続きに戻った。駅近のガード下にある特定の条件を満たした時にだけ現れる謎の古本屋があってなかなか手に入らない希少な本を取り扱っているんだとか、金品では売ってくれず他の代価を要求されるんだとか。そんな眉唾な噂話をわくわくした様子ですらすら話す。適当にあいづちを打ちながらほどけてまた雨に濡れ始めた髪をそっと集めた。
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