みゆかな※WARNING※
キャラクターをピックアップし、今回だけは思いっきりかなみゆではなく、みゆかなのリバって感じで、ひたすら彷徨を弱くしたややシリアステイストになっていますが救いはありますよ。それでもいいどんとこいやって言う強者様だけ↓
「……………うわ…最悪…」
内容は覚えていないが悪夢ではあったような気がしてならず、目覚めが悪い。夏のせいなのか、体質の影響なのかは分からないけれど、既に心が疲れたような変な感覚だった。
起きてから死んだようにぐったりして座っている彷徨の目は、開いているけど己を閉ざしてしまっているかのようにどこかに行ってしまっている。隣から来て早々、様子がおかしいことに気が付いた未夢は慌てて駆け寄り、ぺちぺちと頬を叩いて彷徨に呼びかけながら精神を戻そうとした。
「彷徨ってば!大丈夫具合悪いの」
何度か呼びかければ、瞳に光が見えたような。そのせいかようやく未夢の姿が目に映ったようだ。
「未夢……?」
「ねぇ、大丈夫?」
「あぁ…」
「どっか痛い?苦しいの?」
「平気。なんとなく、今日は目覚めがよくなかっただけだから」
「怖い夢でも見たの?」
「多分」
笑っているように見えるけど、元気はやっぱりなさそうで。見かねた未夢はギュッと彷徨を抱き締める。いつもはして貰ってることが多いが、安心させてあげたい一心だった。
「彷徨はね、わたしのことあーだこーだ言うけど、彷徨も1人で抱え込むから息苦しかったり寂しがったりして辛くなるんだよ。そういうとこ、わたしも似たようなとこあるからなんか分かる」
「何、言って…」
「自分のことはいつも後回しにして、人のこと先に気にかけて神経尖らせちゃってるもん。だから、疲れちゃって変な夢でも見ちゃったんだよ。頑張り屋さんすぎなの」
トントンと背中を叩かれたり摩ったりされていると、忘れてしまっている感情が湧き上がりそうになる。誰かに甘えるなんて気持ちは、ずっと忘れてしまっていた事。
「おじさんに言いづらいなーって事ならわたしに言ってもいいんだよ?まあ、頼りになるかは分からないけどね」
あはは~なんて言いながら未夢は腕に力を入れる。
「もっと誰かを頼っていいんだよ?苦しかったり辛くなったりしたら言っていいんだよ?わたしもいるけど、彷徨の周りにだってたくさん人がいるんだからね」
いつか、自分に向けて言ってくれた事をそのまま返す。周りには人が、みんながいることを。
「泣きたくなったら泣いたっていいんだし、恥ずかしい事じゃないよ。男の子だって泣きたくなる事あるの普通なんだから」
「…」
「もう我慢、しなくていいんだよ?」
糸が切れたような、頭の中でそんな音がして。
気が付いたら、ぶわっと零れ始めていた。
「……あれっ……何で……」
固まって退化してしまっていると思っていた涙腺からは、崩壊したように水が流れ出る。自分の意思では泣くつもりなんて微塵もないのに。
「大丈夫、大丈夫だよ彷徨。ちっちゃい時からずっといっぱい我慢してたんだよね。頑張ってたんだもんね」
「……っ」
物心つく前の母の死。母がいない事に気がつくようになり、辛くて泣きたくて苦しい幼少期を経ていると思う。何せ、1番甘えたい時期に甘えられなかった。父に母の事も聞くことが出来なくなり、“辛さ”、"悲しさ"、"寂しさ"など、成長と共に決してそれは誰にも見せたくなかった部分だったはずだ。無意識に殺していた感情だったのかも知れない。それでも歪まずに来れたのは、様々な人間関係を経て、誰かを想う気持ちを持つようになったからなのかも知れない。
本当は優しいのに、そういうのは不器用で自分から絶対言わない。でも、優しさはちゃんと誰かに伝わっているのだから。少なくとも未夢にはそれが分かる。
「彷徨は、色々辛い事たくさんあった中だけど、それでもみんなに優しくしてくれるよね。わたしもね、そんな彷徨の優しい所、好き。彷徨の事、大好きだよ」
未夢の裾を引っ張るのが精一杯。時々肩を震わせるのを全力で受け止めてあげたくて、落ち着くまで未夢はギュッと彷徨を抱き締めたまま待ち続けた。
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バシャリと冷たい水で何度も顔を洗い直した。酷い目の充血と腫れ感が否めない。恐らく今日で一生分の涙を使い果たしたのでは?と鏡越しの自分の顔を見詰めて、「ひでー顔…」と一言呟いた。
「ありゃ、目ぇすごい腫れてる」
「こっち見るなもう最悪…」
カッコ悪い、頭に浮かぶそんな文字。彷徨は自室で布団に横になって未夢に背を向けた。
「またギューってしてあげようか?」
「マジで勘弁して下さい…すげー恥ずかしいんだぞ」
「えー、彷徨可愛かったんだけどな~」
「本当に勘弁」
保冷剤で目をひたすら冷やす。保冷剤で瞼を隠しているため未夢の事は見えてない。
「少し、落ち着いた?」
「ん、まぁ……」
「わたしにはまた甘えて欲しいなー…なんて!」
「………難しい事を言う…」
「難しくないよ~ただ素直さが足りないから!」
素直になれと言われてもこの性格である。簡単にはじゃあ、とはならない。でも今回は少し凝り固まっていた何かが堕ちたような気はあった。
覚えてない夢の内容が、今になって僅かばかりだが浮かんだ気がした。
暗い場所で、自分の知っている人が次から次へといなくなる恐怖。そんな時に急に順番に現れた光が3つ。その内の2つも結果いなくなって、後の1つも消えようとしていた所だった。何かそんな感じで、まるで、これまでの生い立ちを表しているような。モヤモヤする嫌な内容。
「…でも後1つだけは、居なくならなかったんだ」
「へ?」
「あぁ、目覚め悪いって話。朝は忘れてたけど夢の事。3つ光があって、その内の2つは消えた。後の1つも消えかかってた。おれじゃどうしようも出来ない。でも、結局消えてない。だってその1つは今ここにいるんだから」
ぼやっとまだ腫れが残る目の視線は未夢を見ている。
「未夢まで消えてたら、頭可笑しくなってたかも」
彼女が元の町に帰っていたら、気が狂っていたは大袈裟だが、少なくともまた誰にも言えない苦しさだけはずっと残っていたのかも知れない。
「未夢いないとか…耐えられないかも」
未夢はすぐ彷徨の傍についた。
「い、いるわよ!」
「うん、だからあの夢は最後だけ間違ってたんだ」
身体を起こして自分から未夢に寄り掛かる。
「何か、急に素直になっちゃった?」
「さあ…?でも、悪くない」
「彷徨は定期的に心のメンテナンスが必要かもね」
「はは、もう整ったから大丈夫」
「本当に~?必要ならやっぱりわたしギューってしてあげよっか?」
「じゃあ、やって」
少しだけ口角が上がった。
「あら…本当に素直になっちゃったね」
「未夢にしかしないし、したくない」
未夢はさっきと同じように、さっと彷徨を抱き締める。
「あー…ヤバい…」
「え、何が?やだ、わたし汗臭い」
「違う…心地良い」
母の温もりは知らないが、多分こんな感じなんだろう。何で今になってこんな脆いのかは分からないが、今だけは素直でいられそうだ。
「今日は何かおれダメっぽい」
「ダメって、また泣いちゃいそう?」
「泣いてねえし、もう泣かねえよ」
「えー?わたしの前では素直になるんでしょ?」
「んなの今日だけだし」
「えー今日だけー?わたしいつも彷徨に助けてもらっているから今度はわたしが助けてあげたいのにな」
「助かってるよ十分」
十分心の拠り所なのである。ヒビだらけだった心は、修繕されたのだ。
「じゃあ今日だけ素直さん。何か他に言いたいこととかして欲しいことある?」
「んー…今は、このまんまでいい」
暫くこのまま抱き締めたままでいろってことだろうか?でも未夢的には他にも何かしたい。
「わたし、やりたい事追加していい?」
腕を解いて、彷徨の頬を手で包む。そのまま彷徨の唇に自分のを付けた。ちゅっと軽いリップ音がして、すぐに離れる。
「な、にすんだ…よ、バカ」
「あ、真っ赤だ、彷徨可愛いー♡」
「あぁ、もうっ…」
「今日はいっぱい甘えていいよー」
「もうしない!だー離れろって!」
まだ目だって腫れが引いてないのにと文句をタラタラ言うが未夢はまるで聞いておらず、やりたい放題だ。でも、決して嫌ではない。今日ならいいか、なんて絆されてしまったから。
今までの自分を断ち切るようにするには十分な時間だ。だから、言葉にしないけど彼女に心から感謝するのだった。
END
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ダラダラ長い後書き
まず、謝罪です。大変申し訳ございませんでした( ´ㅁ` ;)素敵なかなみゆばかりの場所にこんなん投下してしまいました。それでも読んだぜって方は本当にありがとうございます😊
今回は彷徨君をスポット当てをしたかったんです。だぁをだいーぶ大人になってから読み返してみると、描写には一切ないキャラクターの裏側とかも妄想しちゃいまして。いひっ。今回の彷徨君は16~17くらいを想定してやりました。
もし、スポット当て需要ある、またみゆかなよろしくという希望者様おりましたらご連絡お待ちしています(えっ)