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    さくみ

    @poisaku393

    随時ラクガキか小説更新。大分やりたい放題。なお、勝手に消すことあるます。気に入った、刺さったものあればリアクション、感想等どうぞ🌠

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    さくみ

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    たまにはしたためませんか?作業BGMはYOASOBIのハルカだった裏話

    返事「うーん…どうしよ」
    中学卒業式直前の3月7日の帰宅後、未夢は悩んでいた。腕を組んで悩める理由は1つ。明後日はいよいよ卒業式なのだが、友人からとある事を聞いた。『3月9日は、サンキューの日って言われているから、感謝を伝える日でもあるんだって!』との事。未夢は何かで伝えたかった。受験を無事にパス出来たのは紛れもない彼氏の彷徨のお陰だ。少々理解力が足りない自身に対し、しばしばスパルタ気味に、散々分かるまで付き合ってくれた。親より先に感謝すべきだろうと言う日頃の思いだ。
    「やっぱりカボチャの何か、かなぁ…?でも得意じゃないしー…」
    悩む事1時間。
    流石に料理系は諦めた。部屋に向かって机に座り、取り出したのはレターセット。今時は本当に使う頻度がないものの、普段なかなか言えないことはこういうのでもいいかも知れない。卒業式が終わって、こちらに帰ってきたら渡せばいい話だ。
    描き始めてから約2時間。1枚に収めるのに苦労しながらも封筒に入れ記名。
    「……と、出来た!」
    ペタリと封筒を〆るシールを張ってようやく完成。明後日に渡すだけだ。
    「見て…くれる、かな?」
    ━━━━━━━━━━━━━━━
    第2ボタン戦争をくぐり抜け、涙ながらの卒業式は無事に終了。逃げ帰るように帰宅した。
    「疲れたー!」
    「ホント…ほらっ」
    手に握られた物を受け取ると、手のひらに転がる小さなボタン。
    「お前が欲しいとか言うから…マジでキツかった…」
    このボタンを死守のため、女子達が獲物を狙うハイエナのように見えたと彷徨は言う。
    「取っといてくれてたのわーい!」
    上手いこと隙を見て先に第2ボタンだけ外し、あたかももう取られたかのように仕立てあげたが、そんな事はセンサーでもあるのかと思うくらい『先に外してあるに違いない』と聴こえ、背中からトリハダが立った程だ。何故バレたか理解力不能。
    「流石、美少年コンテストV3のレジェンドは伊達じゃないよね?」
    「だから付き合ってるってせめてクラスのやつらに公言すりゃ、こうはならんだろうに」
    「い、言いたいけど、な、なんか恥ずかしくて…」
    「まあ、もう終わったことだからいいけど…」
    明日からは春休み。高校の入学式までは一先ずゆっくり出来る。
    「お前、明日からどうする?未夢の事だから暇~とかどっか行こーとか始まるだろ?」
    「え!デートしてくれるの彷徨ったら優しい~流石美少年コンテストV3♡」
    「オイこら。何おちょくってんだ!」
    「いったーい、引っぱたかないでよお~あ、そうだ!」
    未夢はカバンから一昨日したためた封筒を取り出し、彷徨に突き出した。
    「はいっ!」
    「えっ、何?」
    「今日って、サンキューの日って言うんだって。感謝、を伝えるにはいい日だと思うけど、…こう、日頃の彷徨への感謝の気持ちと言うか…言いにくい事、書いてみたの…あ、後ででいいから!見て!」
    「おれに…?」
    彷徨にとっては予想外に直面し、戸惑ったもののそれを素直に受け取る。
    「あー…さんきゅ、後で見る」
    日頃、山のようなラブレターの封筒を見て来たが、今日が一番じわっと来るものがあった。
    「じ、じゃあね!」
    未夢も未夢で途端に恥ずかしくなりバタバタと自宅に逃げ帰る。鍵を掛けて顔を真っ赤にしながら玄関にしゃがみ込んだ。
    「…なんて…思う、かな…?」
    ━━━━━━━━━━━━━━━
    制服をしまい、部屋に戻った彷徨はさっそく受け取った封筒を開けた。

    彷徨へ
    中学卒業したね!去年の事を思い出したの。
    最悪の形で彷徨と会って、バタバタしながら4人で過ごして、それから2人だけになって、バラバラになるかと思いきや大どんでん返しだもんね、うちのパパとママには本当に振り回されました!

    「ふっ…確かにな」

    それから進級して、またみんなで楽しく過ごせて良かったよね!受験に関してはありがとう💦スパルタ過ぎて鬼かと思ったけど、合格を2人で見に行って番号を見付けて嬉しかったのがまるで昨日のようです。本当に彷徨のお陰です。また高校からお世話になります!

    「んーつまり、…勉強か?」

    近い内に出掛けたいなー!美味しいケーキ屋さん見付けたので奢ってね♫

    「ハイハイ…分かりました」

    普段恥ずかしくて言えないからちゃんと書いて伝えます!やっぱり彷徨を好きになって良かった。いつもありがとう!これからもよろしくね♡
    未夢より

    「…あー…くっそ…」
    読み終わると、彷徨はゴンッと鈍い音を鳴らしながら机に突っ伏した。ダメージ、と言うよりは恋人からの手紙の可愛い破壊力が凄まじかったからだ。
    「……いちいち可愛い事すんなよな…全く」
    立てかけてある冊子の間から取り出す1度も使った事がない便箋の束。柄は桜柄。
    「まさか、使う事になるなんてな」
    シャーペンを握り出し、思うままに走らせた。
    ━━━━━━━━━━━━━━━
    未夢は自宅の部屋でゴロゴロしていた。
    「渡してしまった………あー…どう思ったかなぁ…重たい内容だったかなぁ…」
    枕にしがみついて百面相が止まらない。返事が欲しい訳じゃない。ただ、普段なかなか言えないので伝えたいだけだった。
    その時インターホンが鳴る。
    画面の向こうに立っていた人物を見て未夢はドアを開けた。
    「ど、どうしたの?」
    「はい」
    渡されたのは、桜柄の封筒。
    「えっ、えっ、これは…?」
    「返事」
    「へ、へへへへ返事ぃぃぃぃ」
    未夢は発狂した。
    「要らないなら…「い、いる!ありがとう!見てもいい?」
    「ここで…いいけど」
    封筒から中身を取り出し、折り畳まれた紙を拡げた。

    返事、書いてみた。誰かから貰った手紙に返事なんてろくに書いたことないから、書き方とか変だったらそれは勘弁して欲しい。

    「…おれ、戻ってるから。じゃあな」
    「あ、あぁ、うん」

    確かに振り返ったら色々あったけど楽しかったのは本当だなと思った。次は高校進学。勉強に関してはまた教えてもいいけど、自分でも理解出来るように頑張れ。

    「うっ…仰る通り…」

    あとお前、いくら恥ずかしいからって手紙にあんな恥ずかしいこと書くなよこっちだって照れ臭い。まぁ、おれのことうんぬんは嬉しかった。こちらこそありがとう。高校も、これからもよろしく。

    2度目の発狂。外なので声には出さなかったが。シンプルで、実に彷徨らしい所が出ている。
    (…うー…好き)
    唯一らしくない封筒に、ちょんと口付ける。
    「ありがと…」
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