ハニートラップなんてまだ無理すぎる「えー!明日からの夏休みの間に彼氏んち泊まるのきゃー♡」
「じゃあもう決定じゃない!」
クラスメイトの友達達からはこういう話がよく出る。
「めちゃくちゃにされちゃうじゃなーい!」
「やっだ、止めてよ恥ずかしいじゃん!」
「ね、未夢ちゃんは?彼氏んち泊まる事ある?」
「えっ…いやーわたしはー…」
「これを機にお願いしてみたら?彼氏になら甘えたい事あるでしょ?」
甘えたい事か…まぁ、ない訳じゃないけれど。自分から甘えるって事はまだ何か慣れないなぁ。やってみた所で彷徨の事だから動じなさそうだし、という恥ずかしくてそんな簡単には出来ない。
「ハニートラップってやつよ!」
「は、ハニートラップ…」
「有効的なのは、やっぱり彼氏のベッドに寝っ転がっちゃえばいいんだよ」
そもそも、泊まりって言っても、必要性は今ないんだよね。でももし、泊まりたいって言ったら「いいよ」って言うのかな?そんな話があって夏休みに入る。
━━━━━━━━━━━━━━━
「泊まってもいい?」
「えっ」
パパとママが仕事で不在、宝晶おじさんも出掛けていない。夏休みの宿題持って彷徨んちは流れのようなもの。その間に、あの時友達と話した事を話してみた。
「泊まり?」
「ダメ?前一緒に住んでたことを考えたら楽勝でしょう?」
「楽勝って…あん時は…」
「じゃ、ちょっと準備して来る!」
あの流れは何か微妙な反応だったな。でも、今回に関してはただ泊まりたいって訳じゃない。『ハニートラップ』の単語が頭に浮かぶ。いやいやそんな簡単に出来る物じゃない。でも、勇気は必要だよね。
自宅に戻って泊まりの準備を進めてまた戻る。そのまま夕飯前にお風呂を借りた。
多分、あれは泊まりには同意しなさそうな感じだ。無理やり事を進めたものの、追い返しはしなくとも、よそよそしくされそうな気がしてならない。
「お風呂ありがとーあれ…」
以前使わせて貰っていた客間に布団が敷かれてある。これは、確定だ。致し方なくって感じの。
「この部屋使ってた部屋だから自由にしていい、ぞ?」
「え、あー…彷徨の部屋は、やっぱダメ、だよね?」
「えっ。何で、おれの部屋?」
「友達が彼氏さんのお部屋に夏休み泊まりに行くんだーって言ってて……か、彼氏のお部屋でお泊まりって、何かいいなぁって……ダメ?」
うわぁ…形容しがたい顔をしている。絶対断られる。
「わかった」
え、本当に
「わーい♡」
「………はは」
まさかいいって言うとは思わなかった。なんかどこかちょっと微妙な感じにも見えたけどいいよね!
━━━━━━━━━━━━━━━
彷徨の部屋で過ごして数時間。
ヤバい、わたし、眠い。まだ粘りたいのに睡魔がドンドン流れて来てる。それに気が付かれた。
「先に寝てていいぞ?おれまだもうちょい見たいから」
うっ…やっぱり気付かれてる。せっかく彷徨の部屋なのに、ダメだ限界だ。ハニートラップなんて上級者な事わたしには無理だ。
「う…ん…そうするぅ…」
ふらふら立ち上がって布団にダイブ。よく見なかったけど。
「えっ、ちょ!」
「んー…?ふふ、あー…彷徨の匂いするー…」
ダイブした布団は彷徨のいい匂いが詰まったような、安心する匂いが溢れている。
「ぎゅって…して貰ってる、みたいー…」
気持ちいい。
「彷徨もー…寝よ?」
呼んだつもりだったけど、ここでわたしのスイッチ
瞬く間に切れてしまって、どうなったか分からないまま朝を迎えた。
━━━━━━━━━━━━━━━
翌朝目を開けると、彷徨が目の前で眠っている。狭い布団にまさか2人で寝てたの軽い所じゃなくて大パニックになった。そんなことお構い無しの彷徨がようやく目を開け始めて、バッチリ目が合う。
「え……………?」
「…おはよ?よーく眠れましたか…?人の布団でぐっすり眠ってくれましたね」
「あ、あ…の…わたし…なん、で…?」
「おれもビックリ…ですけど?」
わたしが昨日真っ先にダイブした布団って…彷徨が使ってる方だった?布団なんてよく見てなかった。
「近いなー…」
「ひょあー」
シングル用に2人が無理やり横になってるから近いに決まって、て1日一緒に寝ちゃうって有り得ない!こちらはもう色々とキャパオーバーになっているのに相変わらず余裕な彼氏。
「何もされなかっただけ有り難いと思えよ?」
「何もって…何?」
確信的に何か知ってるに決まってる。ただわたしだって全く理解がない訳じゃない。でも、今は惚けてみてもいいかもね。
「何でしょうね?ま、後々分からせてやるよ」
「な、に、知ってるの?」
彷徨が急に屈んだと思ったら食べられたようにキスされた。
「~っ」
な、何すんのかなぁこの人は。本当にいきなりだから頭が追い付かなくなる。
「…少なくとも、こんなもんじゃないって事だよ」
昨日ハニートラップとか言ってたじゃないわたし。でもこんなんじゃ、やっぱりまだまだ無理みたい。
この感じだと、仕掛ける前に近い内大変なことになる、かも、ね。