充電時間「転校する夢だった…」
うわーん聞いて~なんて言いながらいきなり部屋に飛び込んで来た未夢。内容も、
「なんで今更…」
その程度のものだ。
そもそも実際に転校になっているとすれば2年も前の話。だが結局、転校の必要が無くなったので何故今更そんな夢をと疑問でしかないのだ。
ただ、不安事でもあるのだろうか。夢は心理を現すとも言うものだ。
「不安がって何か隠してる事ある?」
「ないわよ…わたしだってなんで今更とは思ってたけど…あっ」
何かあるんだな
「あるんじゃん…心あたり」
「いや、でも大した事じゃないし…」
大した事じゃなかったとしても、多少思うから夢が創り出されたのかも知れない。「言いなさい」と目で圧を掛ければ、素直に吐露する。
「あ、甘えたい、なぁ…って」
「はぁ?未夢が甘えるなんて日常茶飯事じゃん」
普段普通にしている。なのに?
「夢にあったんだけど、こう…彷徨がね、腕を拡げていかにもここに飛び込めーって感じでわたしが入ってギュッと…」
「それ転校関係なくね?…ただのシチュエーションの問題?」
それをやって欲しいのだろうか。
「で、何してたんだっけ?あ、そうだ充電!充電すれば転校しても頑張れる…みたいな感じだったなぁ…」
「充電ねぇ…それほんとに転校関係ないな」
要はシチュエーションの類か。それが転校として繋がるのは理解不能。まぁ、所詮夢の内容なんて大体めちゃくちゃだ。考えるだけ無駄。
ただ、抱き締めてやることに関して充電、って言うのはまぁ何とも未夢らしいと言うか、そこは同意してもいいだろう。なんならおれにもメリットになる。
「はい」
サッと両腕を拡げてやる。
「えっ」
「して欲しいってなら」
「あ…えっと…じ、じゃあ…お、お邪魔シマス」
勢いはないがぽすりとくっ付いて来た所で、背に腕を回して固定。
「温かい…」
「他には?」
この際、今して欲しいこともついでに実行してもいいだろう。聞けばゴニョゴニョと歯切れが悪い。
「なんだよちゃんと言え」
「………………ス………て…しい……」
言いたいことは分かった。可哀想なくらい耳まで赤くしているがおれからすれば刺さるだけだ。視線を合わせてやればキュッと目を閉じた光景だって、可愛すぎて心音を加速させるだけ。この2年、顔に出ないようにするだけのコントロールが以前より下手になってる。それだけおれもやられている。
「んっ」
「……あっ、やべっ!」
気が緩んで思わず押し倒した状態になる。ヤバい。
「「………」」
「あー…悪い、退くから」
「……のに」
「えっ」
「退かなくていいのに……」
思考が停止する。もう、充電処じゃなくなりそうだ。