SHOWの後で今や売れっ子のスーパーエンターティナー、光ヶ丘望。"バラの貴公子"と異名を持った彼は全国各地、果ては海外公演まで開催している。何処でやっても満席。鳥達と薔薇が飛び交う手品ショーは彼の醍醐味である。次の公演がこちらでやるとのことで郵送されて来たチケット2枚片手に行った公演は今回も満席。参加のお礼に毎回鳥達がくれる薔薇は、男性に白、女性に赤を。これも大変好評なのである。『敬愛する僕のファンの皆様、親愛なる友人達に感謝を』とお決まりのセリフ付きだ。
「あー、面白かったね!」
「何か、インコ増えてなかったか?」
「わたしもそう思った!」
「手品師ダメになったらインコ園でも出来そうだな」
「やだ、何それ止めてよ笑っちゃう~」
手品ショー終了後、行く宛てがなくなった。時間的にもまだまだ。
「何か喉乾いたな~ね、休憩しようよ!」
「あー休憩ね。じゃ、ここなんてどうだ?休憩」
彷徨が指差した建物。白黒タイルで覆われたオシャレな構えだ。出入口は地下に向かって降りていくタイプ。看板の休憩と1泊と金額の文字。
「えっ………ホテル…?………なっ彷徨ぁ何考えてるのよバカぁ!」
「くくくっ…ぶふっ…!あーダメだ笑う」
彷徨は相当ツボにハマったのか腹を抱えてしゃがんで笑い出していた。
「じょ、冗談でも止めてよこ、こんな真っ昼間に…!」
「くくっ……!いや行く人は普通に行くし。おれも構わないけど?」
「行かないわよバカ!」
「あははダメだー!お前面白すぎる」
ケタケタと笑う彼の背をバシバシと叩いて怒鳴る未夢。
「もー…」
「今度行こうな今度」
「~っ。こ、こんなとこ行かなくても、家に帰ったら………ゴニョゴニョ……」
「へ?」
顔を真っ赤にした彼女に釣られて、赤面する。思わず口元を抑えた。
(あークッソ、それは流石に色々アウトだろ)
(うわー言っちゃった言っちゃった、言わなきゃよかったかもー!)
さぁ、今日はあとどうする?