輝きを取り戻せ②翌日の放課後、俺は2-1全員を呼びつけ、黒板にデカデカと『労いパーティ開催in西遠寺』と書いた。全員なんだなんだと騒いでいる所に気合いを持たせる!教壇をバチッと叩いて全員の視線を向けさせる。
「と、言う訳でぇ、彷徨んちでこれ、週末の土曜日昼にしまーす!何故かって言うとここに元気のない人がいるからでーす!」
と言い、俺は未夢ちゃんに指を指す。未夢ちゃんはキョトンとしてたけど。
「わ、たし?」
元気ないヤツはもう1人いるけど、そいつはこっち向くなとシッシッの手振り。そう言ってられるのは今の内だぜ彷徨さんよ!
「まぁまぁ、なんて言うかほら。俺らもさ、このメンツで過ごす時間も減ってきてるしさ、思い出作りって言うの?やろうかなーって。なー彷徨。で、会場は勿論お前ん家の本堂でいいよな?」
すると彷徨はすっと片手を上げた。
「本堂よりは外を提案」
「外?」
彷徨は教壇まで来て、黒板に俺が書いたタイトルに『BBQ』と付け加えた。
「で、いいかと思って」
「おーBBQかいいじゃん!」
クラス全員ザワついた。確かに西遠寺でBBQは今までした事がないしな。
「まぁ、流石に家にはセットはないから誰でもいいから持って来てもらえたら…」
「セットでしたらわたくしにお任せ下さいませ♡トラックで運ばせますわ」
流石金持ちお嬢様花小町さん。
「食材や飲み物は各自色々持ち込みで。何でもいいです」
「それも多めに提供致しますわ♡」
「お、おう助かる。後は火を取り扱うから保護者と言うか一応大人を…」
「それもご安心下さい。家の料理長を呼びますわ。料理のプロですもの、火の扱いには困りませんし」
花小町さん様々だ。という訳で全ての準備が整った上で週末を待つ事になった。
次の日、未夢ちゃんに呼び止められた。
「あのっ、三太くん」
「お?なーに?」
「昨日、何でパーティなんて……?」
素朴な疑問ってやつ?
「クラス全員ってか、ん~まぁ本音は未夢ちゃんにとっての思い出作りみたいな?未夢ちゃん元気ないしさ、まぁ彷徨のヤツもだけど」
「えっ?」
「ごめん、俺彷徨から聞いちゃって」
交際している事をと話すと未夢ちゃんは固まってしまった。あぁ、やっぱり誰にも聞かれたくないことなんだよな。ましてや交際相手が彷徨なら尚更って事で。
「だ、だだ、誰にも…」
「言わないし言ってないし大丈夫だーって!俺と彷徨のかたーい男同士の約束だから誓うよ~」
「…そうして下さい…く、クリスちゃんにバレたら間違いなく殺されるし…」
全校の女子達からも集中放火だしな。こっわ!
「おいっ、三太こっち」
今度は彷徨かよ。またもや踊り場に移動。
「なぁんだよ未夢ちゃんのこと口説いてた訳じゃないぞ?」
「んな事聞いてねえよ!土曜日、クラス全員来るのは構わないけど、お前絶対言うなよ?」
「何を?」
「だからおれと未夢の事だよ」
こっちもかい。俺って案外信用ないのな。
「大丈夫だっての、言わねぇって!」
「本当か~?案外口軽い所あるからさ」
「はー?口軽そうなのは光ヶ丘みたいな優男じゃん!」
教室の方でクシャミが聞こえた気がした。
さて、土曜日の昼前になり西遠寺前にはトラックが2台やって来て、西遠寺の境内内は壮大なBBQ会場に変貌を遂げていた。ありとあらゆるセットが準備され、マジでパーティのようだ。
用意が整い、全員に飲み物を注いだ紙コップを持たせ、俺は咳払い。
「ではでは、各自飲み物OK?今日は食べまくるぞー!かんぱあああい!」
「「かんぱーい」」
「野菜取って~」
「あぁーってめぇそりゃ俺が育てた肉だぞ!」
クラス全員が和気あいあい。開催した甲斐が有ると言うもの。問題は等のアイツら何だけども。まずは未夢ちゃんは、花小町さんや他の女子らと話している最中だ。
「未夢ちゃん、お肉如何です?全国からのA5和牛を取り寄せましたの♡」
「さ、流石クリスちゃん~!贅沢過ぎるBBQだよ…こんな機会二度とないよ~」
「未夢ちゃんって、いつ転校になっちゃうの?」
1人の女子がNGワードをぶちまけた。あぁ、女の子って怖すぎる。
「あ…うーん…まだ何とも…でも限りなくタイムリミットは近い、とは思う。まだ、ママ達からの連絡ないんだけど…」
いかん、アレはダメだ。未夢ちゃん悲しむ!
「はいはい女子のみなさーん!ジュースは如何?俺取ってくるからさ、未夢ちゃん次何飲む?」
「えっ、えっ!」
未夢ちゃんに笑顔を持たせないと開催した意味ないからな!
「じゃ黒須くんあたしコーラ」
「あたしはジンジャエールね」
「オレンジジュース~」
「はいはいっ、纏めてお持ちしまーす!未夢ちゃんはー?」
「あ、わたしもオレンジジュースで…」
「りょーかいしたぁ!」
ひとまず遮ってやったぜ、俺賢い。さて、彷徨の方はー…ってアイツ本堂に腰掛けて何傍観してんだ全く。ホントに輪に入らないヤツだな。
俺は頼まれたジュースを女子達に引渡し、親友の隣に腰掛けた。
「なんだよ?」
「なんだよじゃないです~お前俺が開催した意味理解してるー?未夢ちゃんだけじゃなくてお前にも関係があるんだぞ?」
「うっさいなぁ…いいよこっから見てるから」
全く相変わらずの孤高決めやがって。今の時代、一匹狼は流行らなくなるぞ?多分!
「お前未夢ちゃんとも喋ってねぇじゃん」
「当たり前だろ下手に近ければバレる」
それもそうか。ん~ならばここはこの黒須三太人肌脱ぎましょう!
「俺、アイツら引き付けるからさ、未夢ちゃんと少し抜け出して来いよ。流石に敷地内から出るとアレだけど」
「は、はぁ」
「どうせ家にいても付き合ってる者同士のようには接してないんだろ?見てりゃなんかそんな気がする」
「要らん気使うな」
「またまたぁ~お前も未夢ちゃんとちゃんと話す時間必要だと思うわ。」
暫し真剣に彷徨に話す。根負けしたかは分からないが、彷徨がガシガシ頭をかいて一息入れた。
「…分かったよ」
なんか初めてコイツに勝った気がした。
「よし、さり気なく未夢ちゃん呼んで来るからさ」
「三太」
「なんだ~?」
「…サンキュ」
「どういたしまして~もっと頼ってくれよ相棒!」
「相棒になったつもりはないけど」
かー!そういう所だよコイツは!
さて、女子に囲まれた未夢ちゃん。どう誘いましょうかね?漢三太、いざ参りましょう!
「未夢ちゃーん!」
俺はすぐ様実行へ移すことにした。女子達に囲まれた未夢ちゃんをどう誘い出すか。俺は頭のいい彷徨とは違うから策をこねくり回すのは無理だ。直球が一番俺らしい。
「また黒須くんだー」
「今日はとことん未夢ちゃんに絡むね?」
「黒須くんってばもしかして?」
おーい、女子の皆さん妄想の所悪いけど俺はそんなの1mmもありませんよ?未夢ちゃんに好意なんて向けたら彷徨に絞め殺されかねない。アイツを敵に回すのはVSチートを相手にするようなもの。GAME OVERを無限ループするだけでゴールはない。
「女子の皆さん、変な妄想は辞めてくれよな。確かに未夢ちゃん可愛いけどさぁ」
「かわっ」
「俺にはもったなさすぎるので流石に遠慮しときます。ただ、俺未夢ちゃんとちょーっと話したい事あるからさぁ、未夢ちゃん裏来れない?」
「わ、わたしえっ、裏って…ま、待って三太くんここじゃダメな用なの」
「うん!俺と未夢ちゃんだけで話をしたいので」
「好意めちゃくちゃあるじゃない!みんなー黒須くん未夢ちゃんを呼び出したよー告白タイムかもー!」
「マジか堂々過ぎるな三太~」
「いよっ、漢三太イカしてるぞー」
あぁ、お陰でクラス全員に丸聞こえ。男子にもはやし立てられた。彷徨に聴こえたら殺されるからおっきい声出さないでくれぇ。
「と、兎に角ですね、手短に済ませるからさぁ!お願い未夢ちゃん~」
「わ、分かった……わ、わたしでいいなら…」
「告白成功願うぞ三太~!」
「頑張れー!」
お前らちょっと黙っててくれる聴こえるマジで彷徨に聴こえるから本当に勘弁して!ビクビクしつつ本堂の裏側へ未夢ちゃんを連れ出す事に成功。しかし、微妙に何人か着いて来てる感否めない。マズイな。
「未夢ちゃん!ちょっと俺用事できた!」
「はい?」
「裏側に先に行って待っててよ。後で行くから」
「……?あ、うん…」
未夢ちゃんは訳が分からないといった感じながらも渋々裏側へ歩いて行った。さて、未夢ちゃんの事は後彷徨に任せよう。俺は野次馬処理へ行きますか。
アイツらが無事に解決しますように!
彷徨達が戻って来たのはその20分後だった。その間、すぐに彷徨がいないのも勘づかれたし、告白はどうしたなんて騒がれるし、裏側を見に行こうとする野次馬処理が大変だった。なぁ、俺、頑張ったよ?
さて、BBQ開けの翌週。彷徨からお呼び出し。
呼び出し後直ぐに頬をギリギリ抓られた。
「いだだだだ」
「今回はこれで勘弁してやるよ」
「なあにすんだよ腫れるだろーが~…あ、もしかして連れ出した時の聴こえたから?」
チラッと視線を送る。
「丸聞こえだ」
どす黒いオーラが見えた気がした。
「やっぱり~?でも俺だって頑張ったんだからもっと褒めて欲しいくらいだぜ?」
「はぁ……ったく…」
「で?お前らはあの後解決したの?」
「あぁ…まぁな」
ほくそ笑んでる所を見ると和解、と言うか改めて仲睦まじくなったって事かな?畜生何か妬けてくる。
「あっそ、良かったッスね俺は野次馬処理で大変だったんだからな」
「あぁ、お疲れ様」
「ひっでぇ~それが親友に対する態度かあ?なぁ彷徨~今度は俺の慰安会しよー」
「やだ」
あーあ、何か俺も彼女欲しくなったな。近い未来、素敵な出会いがありますように!
終わり
続く