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    さくみ

    @poisaku393

    随時ラクガキか小説更新。大分やりたい放題。なお、勝手に消すことあるます。気に入った、刺さったものあればリアクション、感想等どうぞ🌠

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    さくみ

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    輝きを取り戻せ②の中盤。裏側でお話をする2人の話。さて、和解になるのか?

    輝きを見せて三太に変な気を遣わされた。
    まぁ、今回は感謝でしかないけれど。クラス全員いる中で、連れ出しが上手く行くかは定かじゃないが告白するために未夢を連れ出してるとか何か聞きたくない言葉が全部丸聞こえで耳に入って来る。
    …あとでちょっと絞めてもいいだろうか、なんて不穏な事を頭で仕舞いつつにいると、砂利を踏む足音が微かに響く。やり方はさて置き、連れ出しには成功してくれたようだ。
    「もう…三太くん、いつになったら戻って来るのかな?」
    「三太は戻らないよ。おれと三太がここに未夢連れて来るようにしたんだから」
    腰を上げて未夢に近寄れば、未夢はぽかんとしていた。多少、混乱気味なのだろう。
    「えっ…彷徨?って、あれなんでいつからここに」
    「お前、おれがあっちにいないことすら気が付いてなかったのかよ…」
    「うっ…」
    「ったくお前らしいよ。ほら、ここに座れよ」
    本堂の真裏にも階段があるので、おれは未夢に座るよう促し、自身も腰掛ければ未夢が若干反対に移動した。
    「なんだよ隣に座ったらダメなのか?」
    「ち、違っ…き、緊張するんだもん」
    「緊張って…………」
    「だ、だってわたし、あの日以降から…必要最低限な事しか彷徨と喋ってなかったから…」
    「…」
    確かにそうだ。
    赤ん坊とシッターペット、大食らいの宇宙人達が故郷へ帰り、静まった西遠寺には2人だけ。今迄と変わらない。話すとしても食事どうするとか必要最低限の日常会話程度。
    あの日から、ずっと未夢は塞ぎ込んだままだったから。
    「…三太に言われたんだよ。もっと話す時間作れって。それで連れ出しって形にした」
    「…でもクラスのみんないる今じゃなくても…」
    「そしたらお前、おれと普通に話してくれたか?きっかけとか取っ掛りもないだろ。多分、アイツらが帰った後もきっと同じままだったと思う」
    未夢と話す時間、確かに必要だと思う。本音は絶対隠すタイプだし。
    「…それは…」
    「だろ?おれもそう思った。話すタイミング、作れなかったと思ってる。こんだけ家に一緒にいてもさ、話せないもんなんだなって、正直、参ってたよ」
    未夢は不安気に、足を腕に抱えて俯いた。
    「わたしの…せいだよね…わたしが、転校の事ばっかり気にしてるから…」
    「…」
    「考えても、もうどうしようもない事なのは頭で理解はしてるの。元々ママ達の仕事の都合上でこっちにいるってだけで…元の生活に戻るだけ。でもね、やっぱ…やっぱり……」
    言いたい事は、分かる。分かっている。多分、自身も同じつもりでいるから。
    「……くしゅっ」
    少しだけ、風が強くなって来た気がした。着ていたカーディガンを脱いで羽織らせる。
    「それ羽織れよ。少し冷えて来てるから」
    「……前も、こういう事、あったね。さり気なく、貸してくれて…わたし、あの時何回も彷徨に言おうとしたんだよね。好きって」
    「あぁ……でも先に言ったのはおれだもんな」
    ほんの数週間前の事。
    「…あっ!そうだあの宇宙船の時だって!わ、わたし言おうとしたのに、口にっ…キッ…順番おかしいんだから!普通は逆でしょバカ」
    あぁ、それか。
    「は?今更そんなの蒸し返すのかガキかよ」
    「なぁんですってー」
    「うるさっ!また塞ぐぞ」
    距離をワザと詰めれば騒ぎ立てるだろうからしなかったけど、ホントはカマしてやりたいくらいだった。
    「ば、バカぁ!変態!」
    「ヘンタ……何か……やっと喋ってるなおれ達」
    「…うん。ごめん、彷徨。わたし、変に転校する事で頭いっぱいで、過敏になってた。せっかく……両想いになれたのに、ね」
    「未夢…」
    ずっと塞ぎ込んでいた未夢が一瞬、笑みを見せてくれた。多分これは無理してる訳じゃなさそうで、心臓が激しく音を鳴らした。おれも重症のようだ。
    「今日は嬉しかったな!三太くんに感謝だよ。こんな楽しい事考えてくれたんだもん。あ、彷徨も、か!」
    「ふーん、楽しいか?」
    「うん!ホントに楽しんでたんだから!嘘じゃないからね」
    「また無理に作り笑いでもしてたんじゃねぇの?」
    コイツは口なら幾らでも誤魔化そうとするからな。
    「失礼ね!」
    「そう、ならいいけど」
    「わたし、あとどれくらいここにいるか分からないけど…」
    やっぱり聞きたくないなその話は。
    「それまでは、みんなと…」
    辞めろって、あぁっ、聞きたくない。
    「彷徨とっ…」
    言い切らせる前におれはもう未夢を抱き寄せてしまっていた。
    「なっ……」
    「悪いけど、その話終わり。おれはもう聞きたくねぇの。いいじゃんいつも通りにしてれば…この数週間、ずっと見てないんだよ笑った顔。頼むから、そんな泣きそうな顔すんなよ…」
    これじゃ、"その時"にちゃんと見送ってやれそうにない。引きずってしまいそうだ。
    「……ごめん…またやっちゃった…」
    「バカ、未夢…見るなら、笑ってる顔が見たい」
    手を頬に添え、自身に向かせる。
    あぁ、なんだよ、結局泣き顔じゃん。
    「…ご、ごめっ、見ないで」
    「そんな顔させるために開いたんじゃないのにな。本末転倒だな…調子狂うよ、泣いた顔ばかりで。笑った顔の方が…可愛いのに」
    あ、思わず口が滑った。パッと口元に手をやったがもう遅い。
    「か、可愛いって……彷徨…わたしの、そんなの考えた事、あるの…?」
    「そ、そりゃ…自分の彼女の顔なんだから、笑った顔が一番に決まってるだろ…」
    墓穴掘った気がした。ヤバい体温上昇が激しい。告白の時だって照れ臭さはあったが、ここまでにはならなかったハズなのに。
    「そ、そろそろ戻るか。あまり戻り遅いとヤバいし…」
    「う、うん…あ、これ返すね。わたしがこれ着てても分かられるし。ありがと」
    羽織らせていたカーディガン。暫く考えた。
    「…いや、着てろよ」
    察しの良い奴ならおれが貸した事ってだけで察せるだろうし牽制になる。
    「えっ」
    「本当はもう喋っちまいたいんだけど?ずっと隠すなんてまず無理だって」
    「う、うぅ、でもっ」
    「口で知らせるのがダメなら、おれは行動で周りに示すけど」
    「…行動…?だからカーディガンの、事?」
    まぁ、勿論それだけじゃないけれど。
    「未夢。向こうに戻る前に1回いい?」
    「えっ、何を?」
    「キスしていい?」
    距離を詰めた。
    「えっ……あ、のっ…」
    「恋人にしか出来ない事、していいですか?」
    「…うぅ…バカぁ」
    「バカとはなんだよ。あとはちゃんと笑ってくださいね?」
    じゃないとおれも調子狂う。まぁ、どうしたって君の笑顔が一番だなんて、もうそんな歯の浮くセリフはおれには言えやしないけれど。
    「彷徨……ありがと…今日、BBQパーティにしてくれて…」
    「三太にはおれから言っとくよ。バッチリ伝えなきゃいけない事があるからな」
    「そうなの?」
    「じゃ誤魔化しはそれまでにして、もう目を閉じてくれませんかね?」
    「……は、い」
    未夢から礼なんて言わせない。三太のことだから無いとは思うけどホントに惚れられちゃ堪らないからな。
    そう思いつつ、漸く観念したか未夢が目を閉じてくれたので、静かにそこに自身のを重ねた。離して暫し視線が合っている。また吸い寄せられそうになるのを堪える。これ以上は待ったを掛けた。続きなら幾らでも出来る。
    「なぁ、明日、デートでも行くか?」
    「えっ、ホントに」
    「暇だろお互い」
    「行く!」
    それは、今日一番の笑顔だった。
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