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    さくみ

    @poisaku393

    随時ラクガキか小説更新。大分やりたい放題。なお、勝手に消すことあるます。気に入った、刺さったものあればリアクション、感想等どうぞ🌠

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    さくみ

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    新だぁの夫婦かなみゆ。未宇ちゃんが中2になったその日の妄想。
    いい夫婦の日に出そうかなと思ったけどこれ以上文伸びないからやーめたっ!てことでこちらにぽいっ!どうして彷徨パパはおれ達が出会った頃~なんて言い出したのビックリしたわ…浸った?浸ったのか?からがーって打ちました。

    タイムスリップしたかのように「おれ達が出会った頃と同じ、中学2年生か…早いな」
    一人娘が今日から中学2年生になったのと同時に、夫の言葉で、未夢はあの頃の事をふと思い出していた。
    親の仕事の都合で、母の知人であるここに残され、宝晶が修行だといなくなり、寺の一人息子である彷徨とは(実は会った事があったのは後に知る)初対面、不安でしかなくなってしまった当時。
    朝食の片付けと洗濯回して干してを済ませて、一息。縁側に腰掛けると、彷徨も腰掛けて来た。今日は寺の事ではなく、デスクワークに勤しんでいた。住職とデスクワークの2足のわらじがすっかり板についている。
    「さっき思い出してたか?中学2年生の時」
    「そう、ね。思い出してたの」
    「おれもだ」
    「ふふっ…ルゥくん達が来て大騒ぎの毎日…やだ懐かしい」
    何せ宇宙人の赤ん坊が飛び込んで来たのだ。友人達を誤魔化すのは一苦労の日々。
    「それから何十年経って、あの子達が…わたし達の娘が今度はルゥくんに会って、わたし達も会う事が出来て…」
    「数奇すぎて、怖いくらいだな…」
    「でも、未宇…まだ思い出してないのよね…」
    「その内、ふとしたキッカケで思い出すさ。例えば、ルゥと再会するとかな」
    その可能性は如何程なのか。夫の言葉に未夢は少し怪訝した。
    「そんな0.何%みたいな事起こり得る?」
    「起こり得たから、今があるんだろう?全てここから。おれ達が出会った事から全部始まった。きっとまた何かあるさ」
    「あ…」
    実際、ここに預けられ、彷徨やルゥと出会った事だって限りなく有り得ない0.何%以下のような奇跡に違いない。
    「…案外西遠寺ってパワースポットなのかしら?」
    「ぶっ…!バーカ、ただの古寺だろ」
    「やだ…住職とは思えない発言よそれ」
    現住職である夫からの信じられない言葉。義父が聞いたら嘆くに違いない。
    「なぁ、戻れるなら戻りたいか?あの頃に」
    「中学2年生?」
    「そう」
    「あぁ、誰かさんが入浴を覗いた時ね?」
    「おいっ!今までの流れでよくそこにいったな」
    「わたしには強烈に、鮮明に忘れられないわよ!」
    「どうせ思い出すなら恋人同士時代とか出て来ないのかよお前は…」
    何が恋人同士だ、と未夢はジト目を夫に見せた。だが、それも記憶にある。初めての彼氏が今の旦那になるなんて、あの頃は想像もしてなかった事だ。本当に数奇なる経験を重ねて来たと思い馳せる。
    「付き合ったばっかの時はガチガチだったもんな」
    「お互い様でしょ?」
    「ま、それもそうか。なぁ、一瞬だけ戻ってみるか?付き合ったばっかに」
    「恋人同士に?やあね、いい歳こいてそんなくだらないこと…」
    すっと彷徨が至近距離の眼前。あと少しで触れるギリギリだった。年甲斐も無い事をしてと未夢はそんな夫を引っ叩こうとした。
    触れはしない、そのギリギリで、べっと彷徨は舌を出した。
    「ふっ、期待したか?」
    引っ叩く前、未夢は一瞬だけ、イタズラたっぷりのその仕草が、あの頃の彷徨に見えていた。今でもたまにやるけれど、今の瞬間が1番あの頃に見えた。見た目こそ随分大人になったが、根本的な所はあの頃のままだ。
    「そう、ねっ!」

    バチン!

    結局未夢は引っ叩いた。
    「~いっでぇ……!」
    「もうっ、なーにが恋人同士に戻ってみる、よ!年甲斐も無い事しないでよ、中2の娘がいるオジサンなんだから!」
    「オジサンって…じゃあお前だってオバサン、いや"おばたん"か?」
    かつて友人の小さな従姉妹に、未夢が呼ばれていた呼称。
    「彷徨ぁくだらない事言ってないでお仕事に戻ってくれるわたしもこれからお掃除するんだからぁ」
    「はいはい仕方ねぇな…」
    彷徨に背を向け未夢は縁側から立ち上がる。後に続いて彷徨も。
    ふと、彼は呼び止めた。彼女の振り返った顔が見てみたくなって。
    「未夢」
    「もうっ、なあに?」
    くるっと振り返った表情があの頃に一瞬重なって見えた。思わず、彼女が髪を縛るのに使っているリボンを解く。長い髪がフワリと拡がり、その姿は本当にあの頃そのもの。妻であり、母親となった彼女だが、今でも眩しく見えるのは気のせいじゃ無いのかも知れない。それこそ余計、綺麗に。自身を引き寄せてしまう引力が働いているのではないかと錯覚すらする。
    (あぁ、ホント…年甲斐も無いな…)
    彷徨は未夢の肩を捕まえ前髪を寄せて、その額に口付けた。
    「……やっ、だ、もうっバカ!」

    バチン!

    本日2度目のヒット。彷徨は連発を喰らって蹲った。正直今のが1番痛かった。未夢は夫を引っ叩いた後リボンを取り上げまた髪を縛り直して怒号。
    「いい加減怒るわよ」
    「もう怒ってんじゃんか…あ"ーいってぇ…中2の時より凶暴さ増したよな…」
    「失礼ね!彷徨本当に今日可笑しいわよ!頭打ったの」
    「しょうがねぇだろ…今でも気持ちは変わってないんだから…グレードは変わったけど」
    「なによグレードって……」
    「そりゃ…────あい…」
    言いかけて彼は止めた。こんな歯の浮いた事、かつて何回言っていたかなんてイチイチ記憶してない。多分言えていたとしても1回だったかも知れない程度だし、柄に合わない。後10年若ければまだ範疇だったかも知れないけれど。
    「ま…確かに年甲斐無いし止めておくよ。あのさ、午後用が済んだら買い出し付き合うよ」
    「へ?」
    「デートみたいだろ?」
    「どこがよ…ただのお買い物、夫婦で行くの普通にある事でしょ」
    ケラケラと笑い出した夫。
    「もう、何か調子狂っちゃったわよ…」
    「何それ、珍しくドキッとしたって事か?」
    「えぇ、したわよ?本当に頭打ったのかと思ってね」
    顔を見合わせお互いに笑ってしまった。今のが1番恋人同士に戻った時みたいで、それがなお笑えてしまった。
    「もう、こんな所娘にもお義父さんにも見せられないわよ」
    「全くじゃ彷徨…!お前何と年甲斐も無い…現住職としての威厳も全く無いし情けないのう!」
    物陰から宝晶が急に出て来たので2人は驚いた。
    「おっ、お義父さんいつからいらしたんですか…」
    一体どこからどこまで見られていたのか、「うぅ」と未夢は顔を手で覆う。何とも恥ずかしい事この上無い。
    「親父…立ち聞きかよ」
    「夫婦仲が悪くないのはいい事じゃが、お前はやはり修行した方がいいじゃろうな、たるんでおる」
    昔から父親から聞いていた"修行"の単語は聞き飽きている彷徨は、宝晶に冗談じゃないと切り捨てた。
    「嫌なこった。そもそも興味ないし、親父みたいに長期間あちこち行って、家庭を蔑ろにしたくないし」
    「なんじゃとうわしがいつ家庭を蔑ろにしていたと言うんじゃ!」
    「コイツが来た時だってサッサとインドに行ったのはどこの誰だっけか?」
    父子のバトルが急に始まったので、付き合いきれないと未夢はその場を離れ、家事に勤しむのだった。
    先程の夫の行動には本当に年甲斐も無くドキッとしてしまった事を忘れるかのように。
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