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    さくみ

    @poisaku393

    随時ラクガキか小説更新。大分やりたい放題。なお、勝手に消すことあるます。気に入った、刺さったものあればリアクション、感想等どうぞ🌠

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    さくみ

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    かつて書いていたかなみゆプロポーズ。ですが、フォロワーさんとお話してて、ふと彷徨くんに言ってもらいたいセリフがあるので後日再構成した話を上げたいと思います!

    満月に見守られて書店に来て物色したが心惹かれるものは特になし。出口に向かう途中、女性雑誌コーナーを過ぎようとした時、先程まで読んでいたのか、女性が雑誌を置いて先に出た。置かれた雑誌は、結婚雑誌。もうすぐ22になるけれど、結婚について深くまで考えていた訳じゃなくて。かと言って全く知らん顔していた訳でもない。大学卒業までもう少し猶予もあるし、だから自分達はまだ早いと思っていた。ただ、

    ''待っているのだろうか?"

    何て思ってしまった。それにしても見てしまったタイミングが悪すぎる。明日会うのにこのモヤモヤ感を引きずらなければならないのかと。
    「で、どこに行きたいんだっけ?」
    翌日の午前中、予定の10分遅れで未夢が自宅から出て来た。遅刻に関してはもう動じなくなった。何せ昔からだから。あれこれ言えば「女の子は可愛くなるために支度に時間がかかるの!」とお決まりが返って来るだけだ。
    「駅前に新しいカフェが出来たの!彷徨と最初に行きたいなーって」
    「いいけど出来たばっかなら混むんじゃねぇの?」
    「行列なら止めちゃってもいいけど、まずは行くだけ行こう?どうせ彷徨暇でしょ?」
    「どうせっておいっ!」
    頭に浮かんでは消える【結婚】の文字。未夢は、どう思っているんだろうか。
    ━━━━━━━━━━━━━━━
    行きたがっていたカフェは、時間帯が早かったためかとりあえず行列が出来る前に入ることが出来た。注文したアイスコーヒーと冷たいカフェオレが目の前に置かれる。
    「ん~おいしー♡」
    「あれ?お前ケーキは食わないの?好きじゃんケーキセット」
    「え、いやー今日はいいかなぁーって」
    何故か目を逸らす。ダイエットでも始めたのだろうか?別に見た目がらりと変わった訳じゃあるまいしと言いたくなるが、また「デリカシーない!」とかまくし立てられるのは面倒なので閉ざす。
    「前の中学に居た時仲良くしてた子がね、歳上の彼氏さんと秋に結婚するんだって。結婚式の招待状貰っちゃって行くの楽しみ~♡だからほらパーティードレスのために体のこと考えなきゃって!」
    またもや【結婚】ワード。少し過敏になっているだけだろうと言い張る。
    「三太君もやっぱり、あのアイドルのキョウコとそのまま結婚の流れになるのかな」
    「三太が、結婚………ね。今は流石にしないんじゃないか?有名人と結婚は下手に動けばパパラッチされるだろ?挙式とかしないだろうし」
    後こんな店の中で有名人のプライベート話は極力しない方がいいと思ってしまう。
    「未夢は?」
    「え?」
    「けっ………定してるのか着ていくパーティードレス」
    今、口に出しそうになった。
    『結婚したいか?』
    慌てて言い替えたが、バレただろうか。
    「そうまだ決めてないんだよね~でもちょっと今お財布的には悩みが……ねぇ、今日試着だけでもいいから付き合って欲しいな!」
    「あ、あぁ、分かった。行くよ」
    未夢は鼻歌混じりに再びカフェオレを飲んでいるけれど、果たして気にしていないのか誤魔化しているのかおれには分からなかった。
    パーティードレスは購入には至れずとも、試着は楽しんでいた。それにしても肩出し多すぎで全部却下したいくらいだ。とりあえずボレロだけは着ろと釘だけ刺しておいた。
    「目星は付けれてよかった!ちょっとパパに少し前借りしようなあ…」
    「どれだけ今ピンチなんだよ」
    「しょうがないでしょ、また季節変わるから秋服欲しいしメイクだって新調したいんだもん!大人の女の子はオシャレに忙しいんですぅー」
    今日だって少しヒールのあるパンプス履いて、足元まで気を使っているようだ。リップは色付きのものを使い、前よりにもメイクするようになっている。アイメイクも。口にはしないけれど、綺麗になって来ているのかは確実で。
    「なぁ、公園行かないか?」
    「公園?」
    「この近くの公園、海が見えるから」
    ━━━━━━━━━━━━━━━
    西遠寺程高台とはいかなくとも、夜の海を見るくらいなら十分高い位置にある公園だ。今日は満月と星空までセット。未夢が好きなロマンティックとはこんな感じだろうか。自分には微塵にも合うとは思ってないけれど。
    「わーホント海が綺麗!満月が海に反射してるよ~」
    横で子どものように大騒ぎして、昔から変わらない。見た目では大人びたことするようになっても根本的な所は変わらない。
    「ね、わたし達って満月に縁あるよね」
    「えっ」
    「ほら昔、温泉堀りに行って崖から落ちた時の夜も満月だったし…あと海の家の時。サクラ貝の、ね!…知ってる?あの日満月だったんだよ。あと、ルゥ君達とお別れした時も…」
    全部中学時代の事だ。満月まで覚えてたのか。
    「……まーた昔の事ひっくり返して…」
    「わたしにとっては大事な思い出なの!彷徨ってホント興味ないよね~」
    「そう言う訳じゃないけど…」
    忘れてた訳じゃない。誰かのために体が動いていたなんて初めてだと思っているくらいなのだから。
    「だから今日の満月も、何かあったりするかなーって一瞬思っただけよ」
    昼間あれだけ気にしていたワードが再び脳裏を過ぎる。イベントって言うには軽すぎる。でも、刻むなら今の方がいいのかと思ったら行動は早かった。
    「未夢」
    「何?」
    「今はまだちゃんとしてないから…大学も卒業して十分整ったら…」
    頬が焼けるように熱い。月明かりがあっても、今が夜で本当に良かった。
    彼女の左手を取って、薬指に触れる。
    「十分整ったら、ここに嵌めちゃうか?」
    「え…」
    「だから………結婚!未夢が、おれと!」
    顔から火が出るとは正にこういう事だろう。本当に今が夜で良かった。でも言ってしまってよかったんだろうか。満月からの雰囲気の勢いで言ってしまったようなもんだ。これがプロポーズと括られるならばもうやり直したい。
    「けっ、こん…わたしと…?」
    「そ、うだよ。他に誰がいるんだよいる訳ないだろ」
    その薬指に、その内ちゃんと嵌めるものをあげる事を伝えたら、しがみついて来た。
    「ほんとに…?わたし、彷徨の、お嫁さんに…?」
    周りには誰もいない。それをいい事に抱き締め返してやる。
    「もうちょいしたら、な」
    「えへへ、嬉しい」
    女子が好きそうなロマンティックな雰囲気なんて苦手だ。でも今日くらいなら良いのかも知れない。月を背景に、なんてドラマやマンガ過ぎてあまりにも自身には似合わないけれど。その時を待つための約束として刻み付けたい。だけど、その前にやっぱり。
    「…あー…ホントはダメかも知んないけど、やっぱり言い直していいか?」
    「え?」
    柄に合わない咳払い1つ。
    「光月未夢さん、おれと結婚して下さい」
    「はい、よろしくお願いします!」
    笑顔の目に涙を浮かべていたのが分かった。こちらまで目頭が熱くなりそうになるのを堪えて、今度はその唇に誓うために口付けた。
    ━━━━━━━━━━━━━━━
    「あ、婚約指輪……」
    帰り道、重要な事を思い出した。普通なら婚約指輪有りきなものだろうが、衝動のままにプロポーズしてしまって肝心なものがない。
    「あー…悪い…大学卒業まで待って」
    何とも示しもつかないしカッコ悪すぎにも程がある。
    「やだな大丈夫だよ、いつでもいいんだから!」
    「それに挨拶もちゃんとしなきゃだし……」
    「心配いらないと思うけど」
    「バカ、こういうのは男からすればケジメなの。あの2人にとって大事な一人娘を貰いたいってことなんだから」
    「う、うんそっか…」
    母の未来さんならともかく、父の優さんには反対される覚悟で挑まなければならない。
    「ね、聞いてもいい?どうして今日急にプロポーズしてくれたの?」
    「え、嫌だったか」
    「違うわよ!ただなんで今日だったのかなって…」
    「きょ、今日言いたくなったんだよそんだけ!」
    「えぇ~何か隠してない?」
    満月に触発されたなんてとてもじゃないけど言えなくて。悟られたくないので、黙っておくことにした。

    End
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