目が離せない※TOAから転生現学パロ設定
「どわぁぁぁ」
図書室で必要な本を取りに行き、台座に上がって手を伸ばしてあと少しで背表紙に届くって時にお約束。載っていた台座から転がり落ちた。身長はそんな低くないけど高くもない。男としては、欲を言えばもう少し欲しい171cm。ルークは落ちた時に後頭部をぶつけたので、のたうち回った。
「チクショー…ガイもジェイドも今すぐ20cm縮んじまえばいいのに…」
背の高さが目立つ今いない親友と世話になってる実家の家庭教師へ恨みを込めて呟くと、転がっている自身を上から見下ろす緑色がそこで呆れ顔。
「…何してんの?1人で何ごっこか知らないケド、図書室ではお静かに、キホンでしょ。叫び声うるさい」
「お、落ちたんだよ気付けよ!」
「ホントバッ……カでしょ」
「溜めて言うな!」
ルークは仕方なく身体を起こす。シンクは絶対にこういうのには関わらないのが分かるからである。面倒事には決して入って来ないのである。
「シンクは何でここに来たんだ?」
「図書室だよ?用があるから来たに決まってるでしょホント頭弱いよね」
「コラ、歳上を敬え。オレの方が先輩なんだから!」
「……先輩、ねぇ?僕より賢かったら敬っても良かったけど」
「ああん」
「だからうるさいっての!」
バチッと手で口を塞がれる。シンクは小柄ではあるが、入部している空手や兼部の柔道では早々にメンバー入りしている実力者であるのは知っている。それなりに力が強いのでルークはもがいた。
「もがもがー!」
「…だったら静かにしてよね」
「ぶはー!殺す気か」
「殺しても良いけど、まだ捕まりたく無いから遠慮しておくよ。ていうか、ホントあれから馴れ馴れしくしてくるよね?友達いないって噂ホントなんだね」
「なっ…」
ルークはこの街では有名な財閥の次男坊。しかし、権力者の息子であるが故に、誰もルークに近寄らないため友達らしい友達は、兄貴分のガイくらいで幼少から居なかった。
そもそもシンクと会ったのは、シンクの入学式の時に遅刻ギリギリだったルークがフェンスを飛び越えた先にいたのがシンク。着地に失敗したルークは新入生を巻き込んで転んだのである。今はもうないがその時顔にキズが付いた。そこから申し訳なさからか、ルークは何かとシンクに話しかける場面が校内で増えた。シンクは「先輩、迷惑デス」と一蹴したがそんな事では引かないルークだった。
「あれから絡まれる僕って何て可哀想なんだか…」
「うるっせぇ!いいじゃん…おまえとは、うまく言えねえしよく分かんねぇけど、運命レベルな何かを感じたんだよ」
「気持ち悪ッッ」
「はぁ」
「君と運命レベルな何かって何…冗談やめてよね。生憎僕は何も感じないから迷惑って言ってるでしょ?」
言うだけ言って、必要な書物をサッサと取って退散しようとするシンク。
「あぁ、もう…無駄に高いな本棚」
「これか?ほらよっ!」
目的の本を逆にルークに取られて渡される。
「届かないなら?このルーク先輩に何時でも言えよ」
踏ん張るルークにシンクは溜息。
「……僕の奴隷になりたいなんて物好きな先輩デスネ?」
「誰が奴隷だっつーの」
「ホント…訳分かんない先輩」
フッとほくそ笑んだシンクは手をヒラヒラさせて、一応「じゃーね先輩!」とだけ言って図書室を後にした。ピシャリと図書室の戸が締まる。
「と、取ってやったんだから礼を言えよあんニャロ…!全く腹立つヤツだな…」
運命レベルの何かを何故感じるか分からないが、
「多分…シンクと何か共通点があるんだろうな…全然分かんねぇけど」
明確な理由は分からない。それでもシンクから目が離せないんだろうなと思いながら図書室を後にした。
END