卒業アルバム自室の押し入れの整理をしていると、色褪せていない中学時代の卒業アルバムが出て来た。入れた記憶が全くなかったが、同棲する時、隣の自宅から荷物を移動する際にダンボールの中に紛れてしまったのかもしれない。未夢は掃除の途中だったが、懐かしさのあまり座り込んでそれを開く。
─────ペラッ… ペラッ…
3-1のクラスメイト達。仲良くしてくれた彼等は、各々同窓会で再会した後自身達の挙式に来てくれていた。
「ふふっ…みんな若いなぁ。そりゃそうなんだけど…」
ページをめくる度に行事時の写真や集合写真等楽しかった事が脳裏に蘇る。あれから更に時が経ったが、なかなか連絡をしてないなと思っていた。
「あ」
文化祭のページ。たまたまだったが彷徨と写った写真が載っていた。当時自由に変装した喫茶の出し物。お前は客寄せだ三太に言われ、無理やりウェイターにされた彷徨は渋々気味で着た格好。しかし、やはり学校一のモテモテの彼氏の客寄せ力は群を抜いていたのは間違いなく、クチコミで他校生の女子生徒まで並ぶ程の長蛇の列が3-1前に並んでいた事を思い出した。
「ふふ、やっぱり似合ってるなぁー…」
「何が?」
ぬうっと頭上から声がした。見上げると檀家の法事から戻った彷徨がそこにいた。
「あ、やだ急にビックリさせないでよ…」
アルバムはまだ閉じてない。
「おまえ…何でんなもん見てんの…」
「あはは、掃除の途中なんだけど見つけちゃって。ふふっ」
最後のクラス事の個人写真から探した『西遠寺 彷徨』の写真。その写真の幼さがある顔と目の前の旦那の顔を見比べた。大人にはなったが、
「なんだよ」
怪訝な顔で彷徨は見る。
「大人にはなったけど…根っこは変わらないのよね」
あの頃の姿だって脳裏に焼き付いている分思い出すのは容易い。今では喧嘩もするが頼れる自慢の旦那であり、娘に優しい一児の父でもあるけれど。
「は?」
「ううん。お帰りなさい、お疲れ様」
言いながら、その頬を手で寄せて唇を付けた。
「…なっ、なんだよ…」
久しくそんな事を妻にされて、一瞬だが照れた夫の姿を見たのは久しぶりだった。
「あ、休憩に何飲む?コーヒー?お茶?檀家さんからいただいたお団子も食べようよ」
「それはいいけど…どうしたんだよおまえ。」
「んー…なんか想い出に浸っちゃったと言うか…勿論彷徨の事だけじゃないけど。見てたら懐かしくてつい、ね。そうだ未宇から聞いたの。最近お友達と自分の親の卒業アルバム見るのが流行りらしいのよ」
「ゲッ…なんだその地獄みたいな流行り」
なんと言う時代の流れになったもんだと彷徨は嫌な顔をした。
「まだ見せてないけど、その内見たいって言ってくるわよ?」
「見せるならそんなガキの時のじゃなくて高校くらいの方がまだいい」
「えー?だってあんまり変わってないからこれでもよくなあい?全然老いてないわよ彷徨は」
「よくない、無理」
時計はもうすぐ午後15時代を回る。娘が友達連れて帰ってくる頃になる。
「とりあえず休憩休憩!もうすぐ帰って来るし」
─────ペラッ
「あっ、何わたしの個人写真見てんのよー!」
そこに写る中学生時代と今の彼女を見比べた。
「あんまり…変わってねぇよおまえも」
夫のフッと笑った顔に久しくドキリとした。
「そ、それはどうも…」
「ただこん時はマジで幼児体型だったよなぁ。よかったな、成長して」
「なっ、ななっ…か、…かぁなぁたぁぁぁぁ」
ドタバタと戦争が勃発。
その頃丁度友達を連れて帰って来た未宇が、玄関で立ち尽くして呆然としていた。走って逃げる父親と、怒りのままおたまやフライパンを投げ飛ばす母親を見ながら。
「未宇ちゃんのパパとママって元気で仲良しだよね」
「あ、アハハハ…」