新人艦の非日常な一日 いつも通り朝八時、自衛艦旗掲揚のラッパが基地に響く。いつもと違うのは早い時間にも関わらず、カメラや保冷バッグを手に続々と集まってきたお客さん達の姿があることだろう。中には少し眠そうな顔も見えるけれど、毎年恒例の一大イベントだけあって岸壁は朝から賑やかで嬉しそうな笑顔に溢れていた。
わくわくと洋上でのひとときを楽しみにする人々を乗せ、順次出港していく僚艦達をいってらっしゃいと見送ってしまえば、先ほどまで基地にこだましていた喧騒は名残を残すのみとなる。自艦は就役から間もないこともあって不参加だ。そういえば春にこちらへとやって来てからというもの、基地では傍に誰かしら同類達がいた気がする。こうして一人過ごすことは久しぶりだと束の間の静けさを楽しむことにした。
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