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    105@海自艦擬人化

    @sanpomichi105

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    105@海自艦擬人化

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    118+177+175
    夏イベントの裏側。以前書いた話のリメイク

    #擬人化
    Humanization
    ##本編

    新人艦の非日常な一日 いつも通り朝八時、自衛艦旗掲揚のラッパが基地に響く。いつもと違うのは早い時間にも関わらず、カメラや保冷バッグを手に続々と集まってきたお客さん達の姿があることだろう。中には少し眠そうな顔も見えるけれど、毎年恒例の一大イベントだけあって岸壁は朝から賑やかで嬉しそうな笑顔に溢れていた。
     わくわくと洋上でのひとときを楽しみにする人々を乗せ、順次出港していく僚艦達をいってらっしゃいと見送ってしまえば、先ほどまで基地にこだましていた喧騒は名残を残すのみとなる。自艦ふゆづきは就役から間もないこともあって不参加だ。そういえば春にこちらへとやって来てからというもの、基地では傍に誰かしら同類達がいた気がする。こうして一人過ごすことは久しぶりだと束の間の静けさを楽しむことにした。
     
     参加予定である明日の広報に向けた準備もあらかた終わり、容赦なく照りつける日射しを避けて日陰へと逃げ込んだ。じんわりと熱の籠った風が運ぶのは、自動車の走行音と向かいの造船所から時折届く金属音。そして蝉の鳴き声。それらに混ざって自分の名を呼ぶ声が聞こえた。
    「あたごさん」
    「みんなで出てったから暇してるんじゃないかと思って」
    「そうでもないですよ。僕はぼんやりするの好きみたいなので」
    「そっかー。それじゃあ俺も」
     そう言いながら、隣にすでに腰を下ろしていた。あたごさんにとって僕が基地に来た初めての後輩らしく、なにかと気に掛けてくれ助かっている。ただ、もう少し放置してくれても構わないのだけど。もう慣れた? だとか、夏はこれだけ暑いくせに冬は極寒だから覚悟した方がいいだとか、セミの大合唱の合間にぽつぽつと言葉を交わす。そうしている内にいつの間にかもうじき出港組が帰ってくる頃合いになっていた。入港用意のため人の行き来が増えてきている。
     
     再び艦と人々とで賑やかになった岸壁に、楽しいながらもやや疲れ気味の様子のお客さん達がぞろぞろと下艦してくる。そこへ混じって同類の姿もあった。
    「ただいま」
     上から居場所を確認していたのか、自分たちのもとへまっすぐやってくるみょうこうさんへおかえりなさいと二人揃って声を掛ける。
    「あたごもこっち来てたんだね。ふゆづき、留守番で寂しかった?」
    「別に寂しくは。ところでどうして頭撫でてるんですか……」
     この人に掛かると子供扱いされているようでどうにも居心地が悪い。返ってきた「なんとなく」との答えに思わず不服の声が漏れた。もちろん、仕事面では尊敬をしているけどそれとこれとは別だ。
    「みょうこうさーん、俺は不参加寂しかったんで撫でてくれても良いんですよ――?」
    「お前はなんか暑苦しいから断る」
    「酷い!」
     頭上で交わされる気心を知る者同士の応酬をぼんやり耳にしつつ思案に耽る。この人たちに付いていけるだろうかという不安と、この先ことあるごとにこうして巻き込まれるのか……という気がかりを。一瞬、うっすらと意識が遠ざかったのは夏の暑さだけではなさそうだ。
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    105@海自艦擬人化

    DOODLEかもめ(新幹線)とやはぎ(艦)。セルフクロスオーバーみたいなものです。
    新米の冒険 駅から続く電車通りから外れて海沿いの遊歩道を軽く駆け抜け、公園の端まで来るとそこから人々が憩う様子をふわふわと潮風を浴びながら眺める。この景色は元々は海から見る予定であったけれども、あいにく天候の折り合いが悪くて叶わなかった。それ自体はいまも残念に思っているものの、こうして別の機会にでも自ら赴けるあたり、人の身に意識を宿したことのありがたさを感じる。まだ慣れていないのもあってしばしばバランスを崩してしまうけれど。本体の性質のせいかこの身体でも走るのは好きだ。でもたまにはゆっくり歩くのも良いな、と遊ぶ幼い子供の笑い声や木々のざわめきを耳にしつつ元来た道を戻るべく振り返る。
    「こんにちは!」
     いつからいたのか、視界の手を伸ばせば触れられる距離に子供が立っていて、思わずびくっと身体が跳ねた。やや緊張した面持ちで声を掛けてきた子供は背格好からしてまだ小児料金が適用される年頃に見える。驚いて真っ白になった頭でもそれだけは真っ先に過ってちょっと可笑しくなった。落ち着いて思考を巡らせる。確か出掛ける前に先輩からは「人からは見えないのだから、もし迷ったら呼びなさいね」と言って携帯を持たせてくれたのだけれど。中には見える人もいる、ということなのでしょうか。こんなことなら対策を聞いておくんだったと内心はあたふたとしながら何を言うべきかを考える。
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    105@海自艦擬人化

    DONE祝・118進水日!10周年おめでとう~!
    雨上がりの記憶 不意に目を覚ます。直前まで夢でもみていたのか一瞬、ここはどこだっけと頭をよぎった。薄暗い中で視線を巡らせて、艦の馴染んだベッドであることを確認する。枕元に置いているデジタルの腕時計を手探りで掴み、顔の前でかざすと時刻は〇五二九を示していた。付近のベッドではまだぐっすりと眠っている者が大半のらしく、機械の作動音が低く響いているのを除けばしんと静まっている。
     もう一〇年前、か。
     寝起きの少しぼんやりした頭で今日だなぁと思い出す。時刻と並んで表示されていた日付は八月二二日。かつて海へと滑り降りた日だ。当日朝は普段と違う様子に緊張していたのか、単に暑くて寝苦しかったか、もしくは夢見でも悪かったのか。起きてしばらくの間ぐずぐずと泣いて、立ち会いのしらゆきさんを困らせたような記憶が朧気に残っている。ただ、さすがのベテランと言うべきか、彼の気性ゆえか、あれこれと世話を焼かれている内にすっかり機嫌が治っていだから不思議なものだ。僕では同じように出来ないだろうと思う。艤装中に〝ふゆづき〟の舞鶴配備を知ってからは生まれ故郷とのことでしばらくご無沙汰だけど、と注を入れながらも馴染みの店をいくつか教えてくれたりもした。就役後に訪れると既に閉めているところも多くあったけれど、続いているところの中には自分も気に入って、通っているところもある。出港中ですぐには叶わないけれど帰ったら久しぶりに買いに行くのを楽しみにしていようと思う。
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