【ヒス晶♀】My wish is only you. 1
世界の秘密は解明された。壊れかけの世界は救済された。その瞬間、私の役目は終わりを告げて、だからそれはきっと必然だったし、私たちはある程度それを予測していた。
もう〈大いなる厄災〉とは呼ばれることのない月の、圧倒的な神秘の下、私の身体は淡い光に包まれた。足元から吹き上げるあたたかな風に衣服や髪が舞い上がって、懐かしい音がどこかから聞こえた。チン、とエレベーターが到着する音、行き交う車のエンジンノイズ、雑踏のにぎわい、軽やかなお喋りの声、スマートフォンの着信音――私の世界の音。は、と息をこぼしたところで、私の周囲に立つみんながどよめいた。私の身体が、指先からさらさらと光の砂になって、消滅しはじめたから。賢者。賢者様。賢者さん。賢者よ。――魔法使いたちが、口々に私を呼ぶ。私はぎゅっとくちびるを引いて、
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