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    mhnt_mis

    @mhnt_mis

    成人済みの方向けの文章ばかりを置いております。
    褒めてもらえると尻尾振って喜ぶのでやさしい反応もらえると嬉しいです。
    主にまほやく、ついすても載せるかも。
    誰の地雷にも配慮してません。

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    mhnt_mis

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    一度は書いてみたかった、⚪︎⚪︎しないと出られない部屋ネタ!鉄板です!

    #ほしまほ2

    ⭐︎ほしまほ2展示作品⭐︎ヒス晶♂小説『⚪︎⚪︎しないと出られない部屋with東』ほしまほ開催おめでとうございます!そしてありがとう…こんな最高オンリーが開催されることに感謝しかありません。今回ヒス晶♂参加ですが普段はネロ晶♂ばかり書いていて、ヒースクリフ・ブランシェットとは…、という…ところからはじまったのですがあんまりエロくなんなかった。魔法使いたちって長命なので性欲あんのか…?という疑問があるのですが彼は18です。間違いありません!そんなわけで18歳ヒースクリフ・ブランシェットと晶くんの18禁のお話です。読めるのは成人済みの方のみ。よろしくお願いします。

    ⭐︎⭐︎⭐︎

    「ん…ふっ…ぅ、ぁ、ん…っく、あ」
    「晶様、お声を出しても…」

    お腹の中がじくじくと熱くて背筋がぞくりとふるえるはじめての感覚に、目に溜まっていた涙がほろほろと頬を伝って、ふりふりと横に首を振ってヒースに否定の意を示す。
    だってこの箱は内側から外へは干渉できると任務がはじまるときにファウストが言っていた。
    つまりヒースと俺の声は外にいるみんなは聞くことが可能なのだ。
    今ヒースクリフが外から聞こえないよう魔法をかけているけどその魔法が万が一誰か魔法使いに破られでもしたら俺のあられもない声が世間に晒されてしまうだろう。
    それは絶対に避けたい。
    そもそもどうしてそんな訳のわからない空間で声を抑えて、片想いの相手だった筈のヒースとこんなことなっているかといえば、任務だ。

    ⭐︎

    東の地方にある小さな村から、前回の厄災の日以降、宝石が散りばめられた美しい宝箱が村にあらわれ、困ったことになっていると依頼が届いた。
    村人たちはもちろん、箱についている宝石で儲けようと思い箱を取り合って争う…ということはなく、見つけた村人が不審に思い、村長に知らせたという。
    そして箱を移動させようと思ったが、それはどんな力自慢が動かそうとしても全く持ち上がらなかったというのだ。
    宝石を取り除こうとしたものがいたらしいがその意図を察したかのように手が弾かれててしまったらしい。
    ならばもうそのまま置いておこうということで宝箱は放置された。
    そして箱が発見されてから不思議なことが起こり始めた。
    ベットに入ったと思ったのに気づけば全く別の部屋にいるのだという。
    そして部屋の中で見つかる不思議な要求に応え続けて疲れ果て、気味の悪い箱を破壊して欲しい、もしくはどこかへやって欲しいと日が経ってようやく魔法舎に依頼を出したといわけだ。
    因みに、箱が現れてすぐに依頼を出さなかったのは箱の要求が「猫になってごろごろする」とか「大声を出す」とか「限界までお菓子を食べる」とか、そんな内容ばかりだったために魔法舎に依頼なんて大袈裟すぎる…と考えたかららしい。
    ただ問題なのは、箱が選ぶ相手が、この村で睡眠をとっているうちの誰かをランダムで選んでいるらしく、何回も箱に入れられる人や、急ぎの用が控えてる人はたまったものではない、とそういうわけでようやく重い腰を上げたのだそうだ。

    「で、これがその箱か…」
    「結構凝った造りだね。この装飾の煌びやかな感じはなんというか…、西っぽいというか…」

    赤ベースに金の金具、海のような色の細かな宝石たちは花の形に散りばめられ、錠前の部分には大きな透明な宝石が組み込まれていて、なんというか、とてもギラギラしている。

    「派手ですね…、豪華でとても綺麗ですが、これ魔法がかけられてるんでしょうか?」
    「あ、賢者様…!」
    「えっ」
    「…賢者、不用意に触っては」

    伸ばそうとした手を隣にいたヒースに慌てて止められ、後ろで見ていたファウストに叱られてしまった。
    ヒースクリフの整えられたきれいな手が温かい。
    もしかしたら俺の手が冷たいのかもしれない。

    「す、すみません、ヒースもありがとうございます」
    「あ、いえ…、す、すみません…!」

    離れていかないきれいな指先を思わずまじまじと見ていると、ヒースが慌てて手を離したので「あっ」と思う。
    任務中に何を考えていたんだろう。
    ヒースの肌が恋しいなんて、と急に恥ずかしさとか、緊張感が足りない情けなさとかが襲ってきて無意識にヒースが触れていた場所を片方の手で守ってしまう。

    「あー…、と、これさぁ、俺知ってるかも」

    なんだか変な空気の中、気まずそうに話を切り出すネロが手を挙げて発言するとファウストが授業中の先生みたいに「はい、ネロ」とちょい、と指差した。

    「昔見たことあるわ」
    「僕は見たことがないな、いつのものだ?」
    「覚えてねぇけど、西で見た。冗句グッズかなんかでさ…たしか人の欲望を叶える箱?だったかな」
    「欲望?つまりなんだ?」
    「んー、たとえばシノがたらふくレモンパイを食いてぇなぁと思いながら寝るとするだろ」
    「今まさにそう思ってる」
    「ハハ、帰ったらな。そうするとレモンパイがたくさん出てくる。食っても食ってもどんどん」
    「なんだ、最高だ」
    「けどそれは箱の中の出来事だからな、実際に腹が膨れるわけじゃない」
    「ふぅん」
    「つまり、幻覚みたいなものか?」
    「そ、なんか西の高名な学者さんが人の欲について研究して、そのために作った箱とかなんとか…」
    「西の高名な学者…」
    「それって…」
    「………」

    『にゃ〜ん』と猫ちゃんのようなその顔が全員の頭の中に浮かんでなんとも言えない空気になる。

    「あれ?」
    「どうした、ヒース」
    「ここ…、傷が入ってる」
    「あぁ、その箱壊れるんだよ、なんだったかな、記録がいっぱいになると?壊れるみたいな」
    「なるほど、人の欲を溜めるのに限界があるということか…」
    「なんつうか…手間のかかる事するよなぁ」
    「しかしよく覚えていたな、ネロ」
    「あぁだってこれさ…盗も、あ、いや、盗もうとしたやつが客にいてさぁ!なんか覚えてたんだよな!」
    「…へぇ」
    「そ、そうなんだ…」
    「そうなんですね…」

    ネロの手癖の悪さは周知の事実なのでちょっと呆れたようなファウストとヒースに晶は戸惑いながらも相槌を打つ。
    なんにしてもネロのおかげでこの箱についてはよくわかった。

    「この箱が欲を溜め切るまでになんとかできないでしょうか…?」
    「そうですね、村の人たちもちょっと疲れているような感じがして…、ネロは知っていますか?」

    俺が尋ねるとネロは、小さな顎に手をあて考える仕草をするが思いつかないようで「うーん…」と困っている。

    「そんな方法あんのかな…、先生なんかない?」
    「僕も正直思いつかないな、もう本人に聞いた方が…、それかシャイロックなら何か知っているんじゃないか?」
    「だな、一旦魔法舎帰るか」
    「そうですね…」
    「待て」

    制したのはシノだ。
    赤い柘榴の実のようなきらきらとした瞳が真っ直ぐ俺たちの方を向いている。

    「どうしたの、シノ」
    「お前ら本当にそれでいいのか」
    「え、なに…どういうこと…?」
    「シャイロックとムルに聞いて解決したら東の面目が立たないだろ、いいのか」
    「…別に」
    「うん、いいよな」

    ファウストとネロの消極的な返事にシノが、手にした鎌の先を、ダン!と地面に打ちつけてツンとした表情をする。

    「いいわけないだろ、俺はここに残って箱を壊す方法を探す」
    「えぇ〜」
    「東の魔法使いたちは頼りになるってことを見せてやるぞ」

    ネロの渾身の「えぇ〜」は無視されて結局全員で村に泊まることになった。
    要は箱の中に入って箱がいっぱいになるまで欲を記録させればいいのだ。
    なら魔法使いの頭数が多い方がいい。
    念の為、ファウストが魔法舎に便りを飛ばして箱の解術方法を聞いて、もし自分たちではなく村人が入ってしまった時の場合に備える。
    そんなわけで一先ず箱の側で野営することになった。
    村人たちに野営して一晩様子を見ることを伝えると、責められるどころか申し訳ないからと野営に必要な食材や、必要なものをこちらで用意すると言ってくれ、ありがたく受け取ることにして、まるで課外学習のような雰囲気になる。
    元の世界でも滅多にキャンプなんてすることがなかったから、わいわい火を囲んで食事を取るのが少し楽しい。
    任務なのにそんなふうに思ったりして、バチが当たったのかも知れない。

    ⭐︎

    「賢者様…!」
    「ん…ヒース?」
    「あぁ、良かった、お目覚めになられたのですね…」

    目が覚めると心配そうに眉を寄せていたヒースが、安心したように、そっと微笑んだ。
    お母様似のヒースの表情が柔らかく微笑むと、まるで天使ようで後光が差しているような気さえする。
    いつまで経っても見慣れない美貌に感心していると、野営のテントで寝ていたはずの自分が全く別の場所にいることに気がついた。

    「ここは…もしかして箱の中ですか…!?」

    選ばれたのは俺でした…、なんてどこかのコマーシャルで聞いたことのあるようなフレーズが思わず頭を過ったけれど、それどころではないだろう。
    神妙に頷いたヒースクリフの表情に、胸がキュとして少し緊張する。
    それに二人きりでベットの上というのもなんだか心臓に悪い。
    恐る恐る部屋を見渡すと、なんだかとても品のある部屋だ。
    淡い紫がかった青色の、朝焼けの手前のような空の色で揃えた壁紙に寝具、それからカーテン。
    そこでふと、見覚えのある部屋だということに気がついた。

    「あれ…?ここってもしかしてブランシェットのヒースのお部屋…」
    「そうなんです。箱に俺の記憶を読み取られてしまったのか…、理由はわからないのですが…」
    「ってことは…ヒースのお部屋そっくりの箱の中…?」
    「のようです…」

    困ったように眉を下げているヒースの顔には戸惑いはあれど、焦る様子はない。
    きっと危険なわけではないのだろう。
    それでも用心深い彼らしく、ここから動かないようにと言われその通りにする。
    ベットから降りたヒースクリフはなにか異変がないか、あちこちを見渡して、ふと何かに気がついた。

    「あれ、引き出しが開いてる………、あ、メッセージカードです…!」
    「よかった!なんて書いてありますか…?」
    「そう…、えっと…これは………」

    オルゴールにつけられていたメッセージカードをじっと見て、時間が止まったようにヒースクリフの動きが止まった。
    ヒースの様子に何が書いてあったのだろうと、気が焦る。

    「ヒース、あの…」
    「…すみませ、すみませんちょっと………、『レプセヴァイヴルプ•スノス』」
    「えっ!?ヒース!?」
    「すみません、ちょっと、あの、多分これで大丈夫です」

    徐に詠唱をしたと思ったらヒースの手の中のメッセージカードが燃えた。
    何が大丈夫なのかわからない。
    相当混乱しているのか遠目でもわかるくらいにヒースの頬が赤くなっている。

    「だ、大丈夫じゃないですよ!」

    慌ててベットから降りて、よく見る為にヒースの手に触れる。
    繊細な作業を得意とするヒースクリフの指に火傷でもあってとなれば一大事だ。
    何よりもあの綺麗な手に傷がつくなんて、あってはならないのに。

    「よく見せてください…!」
    「…、…あ、け、賢者様…!」
    「…、あぁ、良かった、怪我はないですね…!」
    「お、驚かせて、しまってすみません、少し、動揺して」
    「あのメッセージカードですか?」
    「はい…」
    「なんて書いてあったか、聞いてもいいですか?」
    「その、そ…、」

    言いかけてヒースクリフの潤んだ青い瞳が彷徨ったあと俺の方をじっと見る。
    ぴたりと目があって、その美しい顔に思わず身構えてしまう。
    ちっとも見慣れることがない、それどころか彼のいろんな表情を見るたびにどんどん『好き』が更新されてるような気さえする。
    暖かい金色の睫毛に縁取られた青い瞳に見惚れて、そこに自分だけがうつっているのかと思うと胸がどきどきして、鼓動がうるさくなってくる。

    「その、ですからその…、…しないと、」
    「え…?」

    ⭐︎

    賢者様の戸惑う表情にそれはそうだろうと、思う。
    まさか夫婦の営みをしないと出れない…つまり、性行為をしないと出れない部屋だなんて。

    「え…?それ…、俺と、ヒースで?」
    「お嫌、ですよね…その…」
    「いやっ!?嫌では、いやちょっと待ってください、嫌なんじゃなくて、えっ!?いやあの、………えっ?」

    賢者様のお顔はどんどん赤くなって首も耳も赤くなっている。
    きっと自分も似たようなものだろう、さっきから顔が熱くてしょうがない。
    なんなら体温も上がってきているようで汗が額に浮き上がる。
    『性行為しないと出れない』なんて、俺と賢者様どちらかがそれを願っていたか、両者が願っていたか。
    そんなの俺が願っていたに決まっている。
    あのとき、賢者様が箱に手を触れようとした時、咄嗟にお手に触れてしまったけれど…、ずっとその肌に触れていたいと思ってしまった。
    それよりも前から、何度も、ずっと、賢者様に触れたいと思っていた。
    はじめは小さな気持ちだった。
    魔法使いたちを守ろうとする姿勢や言葉に何度も心が動かされた。
    いつかは離れてしまう人だからこれ以上好きになってはいけないと思うのに、好きだと気がついたときにはもう抑えられないくらい気持ちが膨らんでいた。

    「賢者様…、その…」

    言いかけた時だった。
    目の前を何かがよぎって足元にぽとりと何かが落ちる。
    メッセージカードだ。
    拾おうと屈むと、ぱらぱらとあちこちからカードが落ちてきて、思わず顔を見上げて見つめあった俺たちは沈黙する。
    俺の表情から察したのであろう賢者様は眉を下げて、真っ赤な顔に、どうしよう、と困惑の表情を浮かべている。

    「………ちなみに、なんて?」
    「さっきと、同じです」



    自分の手よりもいくらか頼りないその手が胸を押すように抵抗を見せるけど、拒否するほどの力は込められていない。
    時間をかけて何度も唇を重ね合わせて、息を吸った拍子に舌を差し込む。
    あぁ、これが晶様の体温か、と歓喜にふるえるように胸が高鳴った。
    逃げるように引っ込もうとする舌を絡めれば互いの唾液が混じり合って、上顎を舌先でなぞれば鼻にかかったくぐもったような声が漏れるのがかわいい。
    昼間のように明るい部屋のおかげでお顔が良く見える。
    彼の表情は欲に煽られ甘い息を溢していて、その息さえも飲み込んでしまいたくなるほどに愛しくて、目の前の美味しそうな身体に思わずじわりと滲んだ唾液を飲み込んで喉を鳴らした。

    「あっ、待って、ひーすっ」
    「待ちません」

    『記録をいっぱいにすれば、出れます、よね…?』
    戸惑って、つっかえながらの賢者の言葉に、ヒースは当たり前のように賛同した。
    だって、これなら目の前の恋しい人に触れられる。
    ヒースにとって最善の言葉をくれた晶をベットに押し倒せば、もう自制が効くとはとてもじゃないけど思えない。
    それに賢者の格好はなにかあったときすぐ動けるようにしていたのか、魔法舎で着ているような寝巻きではなく、白いシャツ一枚とスラックスだけだ。

    「シャツ、脱ぎましょうね」
    「えっ、ひ、ひぃす、ちょっと待って」

    制するように手を握られるがそのままボタンを外していく。
    曝け出されていく肌が薄っすら汗ばんでいて思わず舌を這わせた。

    「あっ、あぁ、いや、俺、汚いから…!」
    「あなたに汚いところなんてありません…きれい…、ここも反応してます…」
    「う、そんなぁっ、ひ、す、うぁ…、んっ」

    ふく、とした乳首がかわいい。
    色の薄い乳輪を指の腹で優しく擦ると敏感なのか、あっという間に先っぽがツンとかたくなる。
    まるでしゃぶって欲しいような反応に乳首を口に含んで転がすように舌で舐めれば甘えるようにくぐもったかわいい声が聞こえる。
    なんだか美味しそうな気さえして、ちゅうと何度も熱心に吸っていれば、彼の黒いスラックスの股座部分が持ち上がっていた。

    「あん、ん、あ、あっ、や…」
    「感じて、くれてるんですね…」
    「あ、ひーす…だ、だめ…」

    恥ずかしそうに身を捩って、閉じようとする膝を掴んで足の間に割って入る。

    「こちらも舐めていいですか…?」
    「いいわけないですっ!ヒース…、せめて魔法できれいにでき、ま、せんか…っ」
    「もったいないので…、いやです…」
    「もったい、ないってなんですかぁ…!」

    制される前にと早急にベルトを抜いてスラックスを足から引き抜き、自分も魔法で着ていた練習着を上半身だけ取り払う。
    晒された身体に晶が目を見張るのがわかる。
    普段からあまり露出はしないから、気に入ってもらえるなら嬉しいけれど聞く必要もないくらい、発情している身体が目の前にあった。

    「あ、ヒース…!」
    「もう待てません…」

    下着の上から立ち上がった晶様の性器を揉むように指に少しだけ力を入れると、先走りが漏れているのか下着が濡れる。
    わざとくちゅくちゅと音がするように手を動かせば恥ずかしいのか嫌々と首を振る仕草が幼くて愛らしい。
    気持ちがはやって、はやく行為を進めたくなるのを抑えて指で性器を愛撫する。
    こわがらせないように、少しずつ。
    この行為は気持ちいいことだと身体に教え込むようにゆっくりと指を動かす。

    「あっ、あ、ふ、ぅ、ん!」
    「声を聞かせて…」

    わざと耳元で囁くと晶様の表情が甘美に溶ける。
    両手で口を押さえて声を出さないように徹しているせいで、もうなんの抵抗もできなくなっている晶様がかわいくてたまらない。
    火照った汗ばんだ肌が薄っすら赤く染まり、晶の匂いを濃くしている。

    「んぅ、ン、ん…ふっ…ぅ、ぁ、ん…っく、あ」
    「晶様、お声を出しても…」
    「んう、うう、ん、ん、ふ、っあ!ヒース!だめっ、あっ」

    意地でも声を出さないようにと口を押さえる手を掴んでシーツに押しつける。
    耳の外側を舐めて、耳たぶをしゃぶる。
    薄くて柔らかな肉が気持ちよくて思わず甘噛みすると、耳が弱いのだろうか、息を吹きかけるとびくびくと身体が反応して揉んでいた性器がびくん、と手の中でふるえて精液を吐き出したのがわかった。
    背がのけぞって白い首筋が目に眩しくて、いやらしい。
    吸い寄せられるように喉に噛みついて、汗を舐めとるように舌を這わせながら甘噛みする。

    「ん〜〜〜!ん、ん♡あっ、あぁっ、イッた、イッちゃったぁっ、ヒースの手で、あっ♡あぁ、もうぐちゅぐちゅやめてぇ、ヒース、あっ、あぁん♡ん、んぁっ、あ♡」
    「…下着濡れてしてしまいましたね」

    顔を真っ赤にして額の粒をつけ、いまだ下着の中に手を差し込んでくちゃくちゃと鳴らしながら直接性器を擦るヒースの手を緩く握ろうとする晶の手のひらは熱い。
    とろけたような目から涙が滲んで黒いまつ毛がつやつやと濡れている。
    口から浅く息が漏れ、赤い唇はいやらしく唾液で濡れていた。
    吐き出した精液を舐めてみたいけれど、汗を舐め取られるのも抵抗があるようで身を捩ってしまうので、それは今度の楽しみにとっておこうとぐちゃぐちゃに濡れた下着を足からするり抜く。

    「〜〜〜!!!ヒース、どっ、どこ触って」
    「大丈夫です、痛くないようにしますから…、………はじめてですよね…?」
    「ん!?」
    「晶様のここには、まだ誰も触れてませんよね?」
    「あた、あたりまえです…!俺誰ともこんなこと…、キスだってはじめてなのに…!」
    「あぁ、良かった…」

    自分の顔がわからないが、怯えたように首を振る晶様の様子で怖がらせてしまったのかもと思った。
    けれど、晶様の身体を犯すのが自分がはじめてで良かった。

    「はじめてならきついかな…、今日だけ魔法を使いますね、指が入りやすいようにします」
    「ん!ん〜!んっ、ひっ、うぅ〜!」

    ゆっくりと指を進めて、生温粘膜をぬちゃぬちゃと弄っていれば、潤んだ宵の瞳から星が溢れるみたいにとうとう涙が落ちた。

    「ぐすっ、うう、そんなところ、汚い…!ヒースの指が汚れちゃいます…!」
    「汚くなんてありません、大丈夫、魔法で洗浄しましたから」
    「そっ、そういうことじゃなくて…!」
    「ほら、ここ、気持ちいいでしょう」
    「あっ?え、あぁぁぁぁぁぁ!あ!えっ、あっ♡あ♡あん♡」
    「気持ちいいだけですから…」
    「あっ、ひす、あん♡待って、あっ、あ、あぁっ♡そこっ、なん、なんでっ、きもち♡あっ♡あっ♡あ♡あ♡しゅごい♡ヒースのゆびっ、きもち♡ん、あぁ♡あうっ♡」
    「大丈夫、大丈夫、気持ちいいですね…」
    「あうっ♡うん♡きもちいいっ、そこ、すりすりされるのぉっ、すごい、いい♡お♡あ♡あっ、あん♡まっ、イッ、イクっ♡イッちゃうっ♡ぁぁああああっ♡♡♡」

    淫らに喘ぐ晶を何度も想像してきたのに、こんなに可愛く喘いでくれるなんて。
    指を抜いてやればびゅっ、とだめ押しみたいな精液を吐き出して小刻み絶頂している。
    垂れてきた汗を拭うように落ちてきた前髪を掻き上げて、深く絶頂し息を切らせた晶を見遣れば熱に浮かされたようにこちらを見ていた。
    見惚れているような視線はきっと自惚れではないと思うけど、愛しい人からの熱視線はむずかゆくて気恥ずかしい。

    「あっ…♡あ…♡ぁ、あ…♡」
    「晶様…」
    「あ、ひーす、ぅ、ん、あ♡あう♡はぁ、あっ♡あ…♡」

    熱く溶けた中にふたたび指を入れれば、粘膜がしゃぶるようにきゅうきゅうと締めてくる。中で指を引っ掻くように折り曲げたり、ぐるりと回すように動かしたりしながら、本数を増やす。
    二本目の指をすんなり飲み込んだので前髪の生え際あたりや額の真ん中、こめかみあたりと顔にキスを落として、指を同士を絡めて前屈みになって口付けた。
    舌を差し込んでちゅうと舌を吸って、左手で中のしこりを緩やかに弄って、右手で絡めた指を擦り合わせるように動かす。
    中のいいところを強めに押し上げると晶様の身体は絶頂したけれど、精液はもう出ない。
    あふ、と何度も浅い息を繰り返し、小さな絶頂に耐える姿は、負担の姿からは考えられないくらいに淫猥だ。
    清潔なシーツの上で、汗まみれになって肌をほんのり赤く染めて。
    薄いピンク色の乳首が舐めて欲しいと言わんばかりにぷっくりと腫れ、唇の隙間か漏れる吐息は甘く湿っている。
    ブランシェットの使用人や、両親やシノでさえやってくるこの部屋で脚を広げて乱れる晶様の姿が背徳的でいやらしい。
    想像していた何倍も鮮明で淫猥で、可愛らしくて、めちゃくちゃにしたいようなお腹の底から湧き上がってくるような衝動を必死に抑え込む。
    犯したい。
    はやく抱いてしまいたい。
    優しくて淫乱な行為から程遠い、みんなの賢者様。
    その清廉な身体をヒースのものでいっぱいにして、どこにも行けないように縛り付けて閉じ込めて愛したい。
    この箱はきっと、ヒースクリフの欲の塊なのだ。
    誰の目にも触れない場所。
    それでいて自分のものだと見せつけるように閉じ込めて置ける場所。
    戸惑うような晶の視線に、安心させるように微笑みかけて、挿れたままの指の動きを再開させる。
    指を三本飲み込めるようになった孔はもう性器のようにひくついて、ひたすらにいやらしく雄を誘う場所になっている。
    着ていたスラックスを下着と同時に下げると張り詰めていた性器がようやく解放されて楽になる。

    「………!?そん、はい、はいらない…!無理です…!」

    何度も絶頂したのでもう動けないかと思ったのに、ずりずりと身体をクッションの方へずらす元気は残っていたらしい。
    自分よりも華奢な腰を掴んで引きずって元の位置へ戻せば、晶様の表情が強張る。
    大丈夫、入りますと慰めて首筋の汗を舐めとって、鎖骨を甘噛みして愛撫しながらぐちゃぐちゃに濡れた穴の縁を先走りで濡れた性器の先端でくちくちと弄ってやれば、黒い睫毛がふるりとふるえて蕩けるように瞳が快楽に染まる。
    眉を下げてぎゅっと目を瞑る仕草も、縋るように腰に添えられた足もどうしていいかわからないようにシーツを掴んだ指先も全部が愛しい。
    濡れたまつ毛の一本だって他の誰にも見せたくない。
    机の引き出しに仕舞い込んだオルゴールみたいに閉じ込めて愛してしまいたい。
    腕を首に回させて身体を折り曲げる。

    「ひ、ヒース…」
    「晶様…」
    「ヒース、ほん、とに挿れるんですか…?」
    「そんな顔しないでください…、優しくできなくなる…」
    「ん…♡あっ、あっ、あぅっ♡ん♡ゆっ、ゆっくりぃ、はぅ♡ん♡あぁ♡」

    少し怯えたような、それでいて期待しているような表情は雄を煽るのに、この人はわかっているのだろうか。
    誰にも見せたくないという執着心がむくむくと起き上がって、腹の底がまた熱くなった。
    猛ったものをくぷり、と中にいれると、腕の中のその人は歓喜にふるえているのかのように喘ぐ。

    「晶様…見て、あなたの中に…誘い込まれてるみたいに…挿入って…」
    「ヒースクリフ…、う、お、あっ♡あぁ、あっ♡ん、ふ、やぁ…♡」
    「あぁ…、すごい…晶様の中…、とろとろで、あったかくて…、っく…」
    「あ♡あつい♡ヒースの、おっきぃ…♡あ♡あん♡ん♡ん♡ヒースっ♡あっ、あっ、あっ♡」

    ゆっくりちょっとずつ、晶様の中を自分の形にするように腰を押しすすめていく。
    きゅうきゅうととろとろの粘膜が締まるたびに射精してしまいそうになるが、奥歯を噛んで耐える。
    せめて全部入り切るまでは堪えて欲しい。

    「あ…、あ♡ん♡あ…、あ…♡あっ♡」
    「すごい…、きもちいい…」
    「ひ、す…」
    「あきらさま…」
    「んっ、う、う…ひぃす…♡」

    惚けたように、あるいは少し苦しそうに喘いでいた晶が手を解いたかと思うと熱い手のひらで頬を包まれた。
    引き寄せられるがままに唇を合わせれば、晶様の薄い舌がくちゃりと唾液を纏って隙間に差し込まれる。
    ひぃす、と口の隙間から漏れる自分の名前が甘美な声色に包まれ、ぞくりと背筋がふるえた。
    愛しい人から贈られるはじめての口付けに腹の奥がカッと熱くなって、堪えが効かなくなる。

    「あぁぁぁぁぁぁぁぁん♡うっ、あっ、やぁあああ♡はうっ、うぐ、あっ、ひ、す、ヒース♡」
    「あなたが、煽るから…!」

    どちゅ、っと音がするくらい奥を突く。
    激しく腰を振って、腰が持ち上がるように足の裏に手を添える。
    何度も抜き差しを繰り返し腰を引くたびに、中に入っている性器を逃さないように締めつけて、中のいいところをわざと擦りながら奥をつけば、喘ぎ声がますます大きくなる。

    「あ♡あぁっ♡やぁっ♡きもちぃ、きもち、い♡しんじゃうっ、きもちくてっ、しんじゃう♡ゃぁん♡」
    「すご…あぁ、こんなに…」
    「んっ♡あっ♡あっ♡あ♡あぅっ、あっ♡ぁぁぁあああああああ♡」

    気持ちいいなんて、という言葉が出ようとした時、ちょうどいいところを擦ったせいで、限界まで昂った晶様の身体が今までよりずっと激しく絶頂した。
    きゅうと締め付けが一層強くなって、どちゅん、と奥を激しく突けばびゅくびゅくと今まで溜まりに溜まっていた精液が吐き出される。
    何回にも分けて出る精液が奥にあたる感覚にすらにすら感じているのか、仰け反ったままはくはくと浅く息を繰り返し絶頂した晶様が恍惚とした表情でぼんやりとしたまま喘いでいる。
    中に出したことで溢れそうなくらいの多幸感が過ると同時に、この人を繋ぎ止めなくてはと、浅ましい衝動に駆られた。
    奥に擦り付けるように腰を押し付けて、汗みずくの身体を抱きしめて円を描くようにぐりぐりと中を犯す。

    「あー…、あ、お、おっ♡あ、ぁ、ぁ、あ…♡」
    「晶…様…」

    身体をぴたりと重ね合わせるように抱きしめる。
    互いの荒くなった息に合わせて上下する胸はどきどきといつもより激しく鼓動して、熱くて汗まみれになって溶け合って、呼吸が混じり合う。
    肌を合わせたままに、欲を吐き出しいくらか動きやすくなった性器で中を味わうように身体を揺すれば、出した精液とか腸液とかでちゅぷと音がするのがいやらしい。
    口の端から垂れている唾液を舐め取って舌を絡めて口を吸えば、目の前のその人はもう、なされるがまま奥を突かれて喘ぐだけになっていた。
    ここぞとばかりに手のひらで身体の隅々までその感触を確かめる。
    指の腹で撫で、ときどき爪を立てて優しく引っ掻いて。
    それにすら感じてしまっている身体の、事更に敏感な乳首を摘んでやれば、もう声にならないような甘い息を吐いてイった。
    …かわいい、堪らない。
    シーツに散らばる夜色の髪は星が流れるようにきらきらとしている。
    髪も肌も爪も、この人の身体の全部、ヒースクリフ・ブランシェットのものなのだと刻みつけたい。
    俺が石になるまで一緒にいられるように。
    噛み痕でも、口で吸った痕でもなんでもいい。

    「晶様…好きです…愛してる、あなたを閉じ込めたい…」
    「あっ♡あ♡ぁ♡ひぃす…好き…いっぱい中にください…♡あっ♡あっ♡あん♡」

    またしっかりと勃った性器で激しく中を犯す。
    そうして欲でいっぱいになったこの箱が彼らを解放したのは、ヒースクリフがそれから三度も愛しい人の中で精液を吐き出した後だった。

    ⭐︎

    「ヒースと賢者がいない!」

    シノが飛び起きたのは、彼らがテントに入ってまだ然程時間が経っていない時だった。
    ワインボトルの中身もさほど減っておらず、アルコールも回ってなかったが「呑んでたのか…」と咎めるような赤い視線を誤魔化すように「箱だな…!」と深刻そうな声で先に言ったのはファウストだった。
    箱へと向かったが中からはなんの声も聞こえない。
    耳を澄ませたが聞こえない。どうやら中から魔法をかけているのかヒースの気配がした。
    「なぁ、何が起きてる…!ヒースと賢者は無事なのか!」
    「………。あー…中、のことは…わかんねぇけど…」
    「………。ヒースの魔力で中のものを防いでいるようだな」
    「どうにかして見る方法はないのか…!」
    「いやぁ、これ見ない方がいいんじゃね。どう思う先生」
    「僕もそう思う。この魔法をかけているのはヒース自身だ。………中で何が起こっているかわからないが、無理に破って、その、彼らが傷つくようなことがあっては…」
    「傷つく?なんでだ」
    「あー、うーん、とりあえず…ここで待つ?」
    「そうだな。箱の魔力が弱まったとこで一気に叩けば箱の術は解ける」
    「くそっ」
    「まぁ、心配しなくても大丈夫じゃねぇか、ヒースの魔力が弱まることがあったらもしかしたらなにか危険があるかもしんないけど、そういう気配はないし」
    『サティルクナート・ムルクリード』
    「お、さっきの続きか」
    「まぁ、何もしないでぼんやりしていても不安になるだけだからな」
    「それでどうして酒になる」
    「おこちゃまはジュースだ、これ酸味があってなかなか美味いんだ」
    「………わかった、ヒースの魔力が弱まるようなことがあればすぐに箱を叩く」
    「うん、まぁ、時と場合による」
    「そうだな」

    実のところネロもファウストも箱の中の音をちょっと聞いてしまったのだ。
    会話の途中で目で合図して『聞いた?』『聞いた』と確認したのだ。
    賢者のあられもない声は結局筒抜けだった。
    だから安心してワインボトルを傾ける。
    シノに柑橘系のジュースを出してやり、宿に作り置きしていたつまみを魔法で呼び寄せて机の上に並べる。

    「明日は赤飯だな」
    「赤飯?なんだ、それ」
    「賢者さんの世界でめでたいときに食べる炊いた米?だって」
    「めでたい?」
    「まぁ、いいんじゃないか、魔法者に戻ってからじゃあからさま過ぎるし」
    「なんだ、何の話だ」
    「いやぁまぁ…、あ、これソース変えてみたんだけどどう?」
    「おい、話を逸らす気だな」
    「あぁ、美味いな…スパイスが効いててちょっと辛い、酒に合うよ」
    「だろ。シノは?どう?」
    「はぁ………もぐ…ん、美味い!ちょっと辛くていい!これ好きだ」
    「良かった、もっと食えよ。育ち盛りだからな」
    「そうだな。10代か…若いな」
    「若いねぇ………いやぁ、いいなぁ、なんか、こう…甘酸っぱくて激しくて…なんかいいよなぁ」
    「ネロ…」
    「酒の話か?」
    「まぁ、そんな感じだ…」



    シャイロックから返信が来たのはワインボトルが二本空いた頃だった。
    ひらひらと白い輝きを持って飛んできた蝶が、ワインボトルの口にぴたりと留まり、メッセージカードに変化する。
    魔法で浮かせたそれを、手袋で覆われた指先がキャッチした。

    『欲のない方であれば箱を壊すのも簡単にできます。あれは人の欲に反応するのですから、全く下品なものを作った人がいたものですね』

    便りを読んだファウストは難しい顔をしてきれいに折りたたんで懐にしまった。
    欲のない人間。
    そんな者がいるだろうか。

    「ファウスト〜、これ開けていい?」
    「いいが、先にそこで寝ているシノをテントに入れてやろう、風邪を引く」
    「俺が運ぶよ」

    いくつか用意していたワインボトルを吟味していたネロが、軽々シノを抱いてテントへと入っていった。

    「欲か…、僕は一体どんな幻覚を見せられるかな」
    「ん、なんか言ったか?」
    「いや、ワイン、これにするのか?」
    「うん、それすっきりしてて果実っぽい香りがしてさ、甘いつまみに合うかなって」
    「いいな、最高の夜だ」

    ⭐︎

    「賢者様、魔法使い様、本当にありがとうございました!」
    「いえ…、その、お役に立てて…良かったです」
    「箱を壊していただいて、とても助かりました。良かったらこちらをどうぞ」
    「お!群青レモンか!ありがたいよ、東で採れるなんて珍しいな」
    「ここは南の気候寄りでして、たくさん採れるんです」
    「やった、帰ったらすぐレモンパイにしてくれ!」
    「わかった、わかった」

    和やかな会話を聞きながら、晶はひどく気まずかったし、ヒースも朝から目が合わない。
    昨晩あれだけのことをしたのに、起きてみれば身体はテントの中に横たわって、件の箱は壊れていた。
    もしかしたらヒースクリフの存在自体が箱にかかっている魔法でできた幻覚ではないか…、そうだとしたら自分はヒースクリフにひどく抱かれたいと相当熱心に願っていたことになるが…、そうだとしても幻覚であって欲しかった。
    起きてから、顔を逸らしたヒースクリフの耳まで真っ赤になっているところをみれば残念ながら幻覚ではなかったらしい。
    うっかり手でも触れてしまった時には、真っ赤な顔で泣いてしまうんじゃないかというくらい青い瞳に涙を溜めておでこを木にぶつけてしまうのでシノが必死に止めていた。
    俺たちはとんでもないことをしてしまったんじゃ…、と思っていたのにネロやファウストはどことなくよそよそしくて、なんだか口をもにゃもにゃさせて必死で笑顔を抑えている。

    余談ではあるが、この件の報告書では肝心な箱が壊れた経緯については完全に嘘を書いた。
    村人たちの欲望を溜め箱が勝手に壊れたということにして、箱に残っていた記録は本来の持ち主、ムルに返さなくてはならなかったのだが、申し訳ないけれどヒースクリフの手元に収まった。
    燃やしましたよね、と何度も確認をしたけれどいまだに答えはもらえていない。
    いまだにというのは、左手の薬指に彼から送られた青い宝石を嵌め込まれた指輪をはめてから随分時が経っている、この時のことだけど。

    「晶、ちょっといい?」
    「うん、どうしたの?」
    「あ…それ、賢者の書、懐かしいね」
    「片付けしてて見つけて…思わず読んじゃった」
    「そういえばネロとファウスト先生から便りが来てたよ、シノが来たら一緒に読もう」
    「なんだろ、新作のケーキとか…、来週嵐の谷に集まるからそのことかな…、ふふ」
    「…どうしたの?」
    「ううん、ヒース」
    「ん?」
    「今度、改めてムルにお礼を言いに行きませんか?」
    「ムルに?」
    「はい、ヒースクリフ」
    「晶?」
    「…好きですよ、ずっと、愛してます」
    「…俺も、愛してます、晶」

    こうして手を繋いで、キスをする相手は、この先もずっとあなただけ。
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