毛先にくちづけて、やさしく撫でて「いつから君は髪を伸ばしているんだい」
ふいに問いかけられて、俺はイライ・クラークのほうを向く。イライはそんなに重要な意味もなく、普通に雑談として話しかけていたようで、振り向いた俺の顔を見て、驚いたように首を傾げた。
「失礼な質問だったかな? すまない」
「いや、そういうわけではない。そんな大それた意味もなくて、髪は伸びると邪魔だろう? 下手に短くするより、くくっていたほうが楽なんだ。肩に当たって邪魔だと思うようになったら、こう掴んでナイフで切ればいいしな」
後ろにまとめた髪を左手で掴んで、右手で切り落とす真似をする。
「君が自分で切っているのかい?」
「ああ、楽だからな」
「はあ、すごい器用だね」
「褒めるほど器用なものでもないさ。女性陣と違って、身目に気をつかう必要はないからな」
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