この学校に来て3度目の春「谷地さん、」
-仁花ちゃん、どうしたのー
「」
「どうかした」
「いえ、はい。」
一度だけ、清水先輩の声が聞こえた。その声を求めて振り返ったってきっとそこには清水先輩はいないのに。
不思議そうに首を傾げている目の前の山口君だって今では立派な主将になっている。
「…3年生になったんだなって。」
清水先輩の声が聞こえた、とは言わなかった。
言っちゃいけないと思ったから。
泣いても笑っても、私たちに残された時間はもうすぐそこまで終わりが近づいている。
「確かに、あっという間だったよね。」
山口くんはそう言って笑みを浮かべる。
「今までは先輩方がすぐ傍にいてくれたので、いざ自分が最高学年だという自覚が…」
「うん、少しわかる。心許ないよね」
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