ジファ「ドンシク、ハン警部補の前ではちゃんと泣けるんだ」
ジファはそう、拗ねたように呟いた。二人で飲むのは久し振りだ。
裁判がやっと終わって、ドンシクは晴れて拘束を解かれた。ソウルの馴染みの店で、腹を満たし、酒を注ぎ合う。
「え?」
「所長は別として――なんでドンシクは、あたしの前では泣かないんだろうって思ってた」
ジュウォンがマニャン精肉店に集うあの輪に加わった頃は、ほぼ全員、人生最悪の時期だった。それからならどう変化しても、良くなるしかないのは幸いだ。
いつ会っても空気は変わらないが、不定期に集まっては、皆、少しずつはある変化を報告し合っている。
ドンシクの今の心配事は、母親の体調くらいだ。加齢に伴う不調は仕方ない。事件の解決が絶望的だった頃よりは、前向きでいられる。
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