無色透明の願望器「まさかすぎた」
「おう……」
「絶対無いと思ってたのに」
「悪かった!お天道様に誓って、もう、二度としねェ。ソイツは約束するからよ、その」
「…………正直、反省してるだろうし。そんなに責めてるわけでもないんだけど。でも」
キラリと黄金色に輝く杯が立香の手の中で揺れる。現界した聖杯。莫大な魔力リソース。所持者の願いを叶える、見覚えのありすぎるそれ。
街灯なんか一つも無い、夜の闇に支配された山間だった。あたりに満ちる空気は冷たい。一部だけぽっかりと開けた木々の隙間には、遠くで煌めく街並みが見える。音の無い駐車場で、背後に停車させたゴールデンベアー号だけが月の光を反射していた。
聖杯が回収されれば当然、特異点は消える。二人っきりで隣り合って、端の方が揺らいでいる夜景を眺める。もうすぐ強制退去の時間だろう。
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