クリスマスイブの図書館クリスマスイブの図書館
朝七時
「司書さん、おはよう! これ被って!」
朝起きて談話室の前を通ると、賢治先生からサンタ帽子を渡される。談話室の机の上には段ボールに入ったサンタ帽子が。そうだ、クリスマスイブからサンタ帽子をかぶって対応しろと通達が来ていた……
目の前の賢治先生はやはり似合っている。その笑顔が眩しい。童話組の皆さんのサンタ帽子姿は可愛らしい。姿から言えば、プレゼントされる側なのではと思う。
朝九時
「転生してから初めての時は驚いたけど、この慣習にも随分慣れたよ。今日も頑張ろう」
図書館の業務に行く途中に徳田先生と会う。普段のお着物の色と相まってクリスマス感が他の専制型より強くなっている。昔からいることもあって、時折利用者の皆さんに話しかけられていることがある。クリスマスの時のイベントでは一番話しかけられている。今年も徳田先生が一番かな?
昼十二時
「お、いいところに来たな。味見するか?」
厨房には志賀先生を始め、多くの人で賑わっていた。いい匂いが漂っていた。なんとローストビーフの味見をさせてもらった。この日のために仕込んでいたらしい。時折、先生方が見せるこの類の情熱は見習うべきなのだろうかと考えることがある。
昼十三時
「だいぶ慣れてきたとはいえ、慣れへんなあ……取ってええ?」
本日の助手であるおださく先生と司書室で作業。流石に恥ずかしいのか、おださく先生は帽子を取りたいみたいだ。似合っているからいいじゃないですか、と言えば「そういうことちゃうねん」と呆れたような顔をして言われた。それでも、似合っているというとおださく先生は「そうか……? おっしょはんが言うなら……」と妙に納得していたようだった。
昼十五時
「ちょっと早いけど、おやつの時間にしないか? 俺達で作ったんだ」
「上手くできたから、司書さんにも食べてほしくて」
「このクッキーは俺が飾り付けたんだぜ!」
「焼いたのは俺様だぞ!」
「司書室で騒ぎすぎだよ、ごめん、司書さん」
自然主義の皆さんが司書室にやって来た。どうやら
皆さんでケーキを作っていたらしい。お店で販売されているカットされたケーキを想像していたら、ホールケーキだった。これにはおださく先生もびっくり。クッキーで飾り付けられていて、クリームもきれいに塗られていた。とっても美味しかった。ただ、ホールケーキは流石に多かったので、他の先生方にもおすそ分けした。勿論、許可も取った。ちなみにケーキは談話室にいた賢治先生をはじめとする童話組の皆さんにおすそ分けした。
夕方十八時半
「いつもよくしてもらっている方に分けてもらったんだ。飾り付けやすいものにしてもらったよ」
立派なクリスマスツリーがメイン会場に鎮座していた。高村先生の彫刻の木材の出所がよく分かった気がする。
会場は幾つかに分けた。談話室の他に、司書室の隣の部屋も解放した。こちらは本当にゆっくり会話するだけのスペースにしてある。賑やかな場所が苦手な先生もいるので、そうした先生たちが少しでも気安いようにしたかったから提案した。まあ、乱闘騒ぎが起こらなければいいけど。
夜二十時
「ワインはこちらに用意してある、それぞれのワインにあう料理も用意してもらった」
「よぅし、日本酒飲みたい奴はこっちだ。どんどん飲め!」
この時間からお酒を許可した。流石に途中までは秩序を保っていてほしかったので。勿論、私もワインをいただいた。永井先生とボードレール先生が選んだものらしい。本日出される料理もリサーチしていたとのことだし、流石だ。その近くに日本酒コーナーが作られていたし、いつの間にかクリスマスに合わないつまみがその一角に並んでいた。いつの間に…… これじゃいつもの談話室と変わらない気しかしない。
夜二十三時
残っている先生方に挨拶を済ませ、部屋へ戻る。その途中、また声を掛けられる。一人になるのを狙っていたなんてうまいことを言ったものだと感心してしまう。彼にとってその言葉を発するのは容易なことなのか、それとも表情に出さないだけで精いっぱいなのかは私には分からない。