夏の気配 ふと目が覚める。
二宮は一瞬の疑問を覚え、すぐに海辺の小さなリゾートホテルに泊まったことを思い出した。
横になった視界の奥にほの暗い窓があって、手前には使われていないままのベッドがある。
雨はまだ降り続いているようだ。
***
――旅行に行きたいと言い出したのは、太刀川だった。
海辺の観光地へ向かう特急電車も、平日の昼下がりには空席が目立つ。
網棚に旅行鞄をのせた二宮は窓際の席に腰を下ろし、背もたれを少し倒した。
今日から一泊二日の小旅行の予定だった。太刀川と。
大学の課題もボーダーの書類も全て提出済みだと、ドヤ顔で言った太刀川を蹴り飛ばしたのが数日前。
そして昨夜遅く、太刀川からメッセージが届いた。
2014