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    na72no

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    na72no

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    たちにのまんなかバースデー企画!おめでとうございます&ありがとうございまーーーす!
    東さんと二宮さんしか登場しない、高校生たちにのですヽ(*゚ー゚*)ノ 
    短いお話ですが、企画のおかげで妄想を形にできました。素敵な企画をありがとうございます。

    #たちにの

    若葉の攻防 弾かれるように肩を跳ねさせたあと、動きを止めた二宮に、東は自分のミスを悟る。
     咎めるつもりで尋ねるのではないと、先に伝えておくべきだった。
     集合時間より早く隊室へ来た二宮に、他の隊員が来る前に聞いておこうと、焦ってしまったのだ。 

    「――太刀川と交際しているのか?」 
     東の向かいに腰を下ろした途端にきいたのは、さすがに唐突だった。
    「勘違いしないでくれ。咎めるつもりはない。もちろんからかうつもりで聞いたわけでもない」
     穏やかなトーンを心がけながら、二宮の動揺には気づかないふりで言葉を続ける。
     東はテーブルに両肘をのせ、軽く上体を倒した。
     正面に座る二宮の視線をすくい上げるように捕まえると、琥珀色が戸惑いがちに揺れる。
    「忍田さんから聞かれたんだ。『太刀川が二宮と付き合うことになったと言っているが、知っているか』って」
     ボーダーは若い組織だ。
     恋愛関係のあれこれがあるのは当然で、揉めごとや風紀の乱れに繋がらない限り、問題になることもない。
     ただ、太刀川と二宮は同い年ということ以外の接点はなく、親しくしている様子もみられなかった。

    『事実ならいいが、太刀川の勘違いなら申し訳ない。悪いが二宮に確認してもらえないだろうか?』
     太刀川の話はどうにも要領を得ないと、困り顔の忍田に頼まれ、戸惑いながらうなずいたのが今朝のこと。
     経緯を話す東に、二宮は落ちつかない様子で身じろぎし、眉を寄せた。
    「嫌なら、答えなくてもいいが……」
     普段から動きの少ない表情をますます固くした二宮はしばらくの逡巡のあと、おずと口を開く。
    「……すみません。報告が遅れ、ご迷惑を」
    「いや、別に報告しなければならないことじゃない。二宮が謝る必要はないよ」
     頭をさげた二宮の薄い耳朶が朱くなっている。
    「太刀川の馬鹿が馬鹿なせいで、東さんにまで……」
    「それも、お前が謝ることじゃないだろう」
     忍田によれば、太刀川はかなり浮かれているようだ。
     誰彼かまわず言いふらすなと言い含めたが、事実関係によってはさらに指導が必要だと、頭を抱えていた忍田を思い出す。
     二宮の様子から、その必要はなさそうだと東は胸をなでおろした。

     少し冷めた珈琲を一口飲むと、二宮も多少落ち着いたのか、ジンジャーエールの入ったグラスを手に取った。
    「で、ここからは興味本位なんだが」
     立場上、大人ぶってみせるが東だってまだまだそういうお年頃だ。
    「二宮はいつから太刀川を好きだったんだ?」
    「えっ」
     乱暴に置かれたグラスが、鈍い音を立てた。
     苦虫を百匹まとめて噛み潰したような表情の二宮に、東は目を瞬かせる。
     照れ隠しにしては、嫌悪感が強過ぎている。付き合い始めというのは、もう少し華やいだ雰囲気になるのではないだろうか?
     太刀川の浮かれ様を思いうかべ、首をひねる。
    「二宮?」
    「少し前に、太刀川と十本勝負をしました。勝ち越した数だけ言うことを聞くという約束で、三本取りました」
     居住まいを正し、悔しそうな表情を浮かべる二宮に、東の疑問は深まる。
    「まさか、賭けの代償で付き合うことに?」
    「代償……というか」
     言いよどむ二宮に、慌てなくていいと促す。
    「手を握ってもいいかと聞かれました。変なことを言うやつだと思ったが、特に、嫌、ではなかったので」
     そもそも、付き合っているという認識が間違っているのだろうか?
    「ふたつめに、頭を撫でたいといわれたのですが、ダメだと言ったら、肩を、触りたいと」
     それならと二宮が許せば、つぎに太刀川は抱きしめたいと言ったらしい。
    「面倒くさくなってきて、さっさとしろと言いました」
    「……なるほど?」
     雀卓を囲む酔っ払いたちが知ったら、とても面白がりそうなやり取りだ。
    「最後に、キスがしたいといわれたので、そういうことは付き合ってる相手とするものだと答えたら……」
    「付き合ってほしいって?」
     思わず言葉を継げば、白い肌をわかりやすく染めて、二宮が小さくあごを引いた。
     ――嫌。では、なかったので……。 
     頑固な反面、流されやすい一面があるとは思っていた。
     いろいろな経験をすればいいと思う一方で、もう少し警戒心を持つべきでは? と、心配にもなる。

     思案する東の耳に、二宮の声がとびこんできた。
    「あと。戦闘にしか興味のないあの馬鹿が、俺に一生懸命になるのは」

     悪くない、と。思った。

     テーブルの上で汗をかくグラスに視線をおとしたまま、二宮が呟いた。
     その頬がかすかに柔らかくほころんでいることに気づき、東は開きかけた唇をぎゅっと閉じる。
    (――良かったな)
     今頃、上機嫌で刀を手に暴れているだろう男へ、心のなかで祝福をおくる。
     同時に。 
     不器用で真っすぐでかわいいうちの隊員を、泣かせてくれるなよと。願う。

    【若葉の攻防とその周囲/終】
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