⬜とにょた🐱(前半)昨日猫を助けたんだ。白くて垂れ耳兎のように毛が跳ねてた不思議な金目の白猫。トラックに跳ねられそうになったところを助けると人懐っこいようで鳴きながら擦り寄ってきた。
その日の夜、夢の中で助けた白猫と似た特徴を持った白い着物の女の人がでてきた。
「轢かれそうになったところを助けてくれてありがとう。君はどうやら好きな人がいるみたいだね。あたしは男同士の恋仲…ってのはよく分かってなくて…でもあたしなりの恩返しをさせて?これがもっと仲良くなれる手助けになるといいなぁ」
「そして目を覚ましたら女子になってたと…」
「はい…心夢先輩、驚きましたよね…?………先輩、俺の顔はそんな下じゃないですが?」
「わ、悪い…なんせ…な?」
今の俺の姿。少し小柄で長い黒髪、そして…小柄にしてはやや大きい…あと重い胸が…まぁ、男だから仕方ないし俺も同情する…。
「その夢の中ではどうやったら戻るとか言ってたか?」
「それが思い出せなくて…とりあえず1日経てば元に戻るだろうと思います」
最初は家の中でじっとしようと思ったが…1人では不安なので心夢先輩を呼んできた。
「俺は…どうすればいいんだ?」
「今日って休みでしたよね。ただ過ごすってものどうかと思って…………だから俺の顔はもう少し上ですって」
無理やり顔を上にあげると「ぐえっ」と声を上げる先輩にため息が出る
「次胸ガン見したら引っ掻きますよ?」
「悪いって…今日はどうするんだっけ?」
「先輩実は……」
「…で、連れて来たのがここ、と…」
「はい。ここのタルト人気なんですよね」
母さんが着ていた服を借りて(同年代が着てそうだったから)ずっと気になっていた喫茶店。チョコタルトが人気だが来る客は女の人が多い。ずっと気になっていたチョコタルトは甘過ぎず濃厚で滑らかだ。
「…美味そうに食べるなぁ」
「あっ…すみません…」
「何謝ってんだよ。表情変えないお前の目がキラキラしてて可愛か……面白くて見てたんだよ」
「…何を照れてるんですか」
「…そういうお前も赤くなってるぞ…にしても美味いのか?」
「美味しいです。ひと口食べますか?」
「いいのか?」
「はい…ほら…」
「え?くろ、え?」
「………ァ」
ただえさえ人がいる店内で彼氏に1口分けて食べさせる…そんな光景を見てざわつかない訳がない。
…恥ずかしい…浮かれてやってしまった。これじゃあカップル定番の食べさせるやつじゃんか…!…いや、カップル………あぁ!はっずかしいっ!!
「すみません…もう1つ注文しまs」
引こうとした手。だがそれを先輩は止めるように手を取ってそのまま渡そうとしたその1口を食べた。
「ん…美味いな」
小さく黄色い悲鳴が聞こえる…でもそれを気にする余裕なんてない…顔が熱い、熱すぎる…!
この後食べ終わって会計、外に出た後もその熱は引かなかった。
「スミマセン、オゴッテクレテ…」
「声ちっさ」
「だっ、だって…!」
「いやだったのか?」
「……嫌じゃ…ないです…」
「良かった。ツンデレな黒江があんなに目を輝かせてたりあーんしてくれたり、可愛いなぁ」
ニッ、と笑う先輩。…その笑顔は…反則ですよ…
この後折角なのでデートになった。映画を見たりゲームセンターでぬいぐるみを取ったり…こういう所は行った経験あまりなかったが…楽しい…そんな俺を見るなり、先輩も嬉しそうに笑っていた。
だが、そんな楽しい時間も終わりがくる。
「先輩、今日はありがとうございました」
「こっちこそありがとうな。楽しかった。けど、問題のその姿はそのままだな」
「………あ」
しまった。楽しくて根本な問題を忘れてた。元の体に戻ることなく、ゲームセンターでくれた兎のぬいぐるみに顔を埋める。
「楽しそうだったもんなぁ」
「先輩…」
「…そんな顔するなって」
「…先輩。今日、泊まっていきませんか?」
「え、いや…それは…」
「俺、この姿の問題を忘れるくらい楽しかったです。先輩ともっといたい…」
「…俺もいたい。が、これは黒江のことを思って言ってるんだ」
「え?それってどういう」
「分からないか?今のお前は女子で俺は男だ。そんな2人が親不在の家にいたら…な?」
そう言って先輩は頭を撫でてきた。若い男女が夜一緒にいるということは……そういうことも有り得るということ。でも俺は…
「…俺はそれでもいいです」
「…本当に?」
「はい。俺、先輩のこと…好き、なので…心夢先輩とそうなっても俺は嬉しいです」
最近先輩と二人の時は素直になってきたなと自分でも理解してる…それくらい、好きなんだ…
その時、突然先輩が手を引っ張ってひたけ人気のない場所へと連れていった。何が起きてるのか分からないけど、そのまま腕の中に閉じ込められた。
「俺、頑張ったからさ、褒めてくんない?」
「せん、ぱい?」
「黒江の可愛いところたくさん見て危ないところに泊まりの誘いされたら…我慢できそうになくって…ちょっとだけ、な?」
そう言ってマスク越しに軽くキスされた。
「せんぱ、ん…」
「黒江…可愛い…」
「もうすぐ、家です…から」
「駄目、もう少し…」
マスク越しだが何度もキスされて熱を感じてきた。
「…ん、っ、」
「…顔真っ赤…」
「…誰のせいだと…」
「そうだな、本当に我慢できなくなるまでに帰ろうか」
少し満足して額に小さくキスされた。そして手を差し伸べられてそのいつもより大きく見える手を握った。