1日いちにゃんじ EPISODE ZERO「みい。……みい」
つめたいかぜがふいて、めがさめた。
まわりから、「みい、みい」とこえがする。
ぼくのこえなのか、まわりのこえなのか、どっちもなのか、わからない。
でも、とってもさむくて、ぼくはぎゅっとからだをちぢこめた。
なにか、おおきなこえがきこえる。
がんばってめをひらいたさきには、おおきなくろい「なにか」がみえた。
ばさばさ。みいみい。があがあ。
ぼくはそこで、めをとじた。
めがさめた。
ぼくのまわりからは、もう、こえはきこえなかった。
かたかた、ふるえる。
さむい。さむい、のかな。
きゅう、とちぢこまらないと、だめだ。
そうわかっていても、もうからだがうごかなかった。
このまま、またねよう。
そしたら、おなかのきゅるきゅるも、さむさも、きっと。
ふわ。と、あたたかいものにつつまれた。
なんだかわからない。さっきのくろいなにかみたいな、こわいやつかも。
でも、それでも、ぼくはこころのなかまでぽかぽかしてしまって。
はなさきにちょんとさわったなにかを、ぺよ、となめた。
ぺよ、ぺよ。
ふたなめ、さんなめまでして、ぼくはまた、めをとじた。
おはよう。ぼくは、“___”。ねこだ。
ひろってくれた人が言うには、ぼくはすてられていたみたい。
そこから、ぼくをたすけてくれた。ごはんも、おやつも、おもちゃも、あたたかなねどこも、ぜんぶくれたんだ。
その人のまわりは、いつも、あたたかくてぽかぽかしている。
ぼくは、あの人が、だいすき。
「そうかい、そりゃいいな」
「!」
おとなりの、おおきなねこさん。
かわれているのに、お外を歩いている、かわったねこだ。
「でも、お前はずっと一緒にはいられないぞ?」
「ど、どうして?」
びっくりして、ぼくがつっかえつっかえきくと、おとなりのねこさんはぺろりと前足をなめて、話してくれた。
「ねこは、人間より早くしぬからな。
お前もきっと、人間より早くしぬ。そんで、人間はかなしむけど、何年かたつとわすれちまうんだ」
ぼくは、ぴゃあ、とないて、それっきり話せなくなってしまった。
「どうすれば、ずっと一緒にいられるんだろう」
よるになって、ぼくがかんがえていると、きらきらのなにかがおそらを走った。
「きれい」
ぼくはみゃあみゃあなきながら、そのきらきらに、おねがいした。
「あの人と、ずっと一緒にいたいです。たとえ、ぼくがぼくじゃなくなったとしても。ぼくのことを、あの人が、きらいになったとしても」
きらきらは、もっときらきらしながら、くらいおそらの向こう側へ消えていった。
目がさめた。朝だ。
あの人が泣いている。
ぼくを……ううん、ぼくだったものを見ながら。
きらきらは、僕の願いを叶えてくれた。
だから、僕は“___”では無いふりをしないといけない。
だって、今の僕は“にゃんじ”なんだから。
僕はニセモノだけど、このぬいぐるみの体は、僕ににゃんじとしての知識をさずけてくれた。
だから、僕は……いや、にゃんじは、そのとおりに。
「かいぬち、おはにゃまつ。にゃんじでつ」
「ずうっと……いっちょでつよ😸」