Case.05 Kissing陶器のように白く綺麗な顔が、高い鼻梁が長い睫毛が、触れるくらいまで近づいてきて。見つめるのに耐えかねて、瞼を伏せれば、意外と柔らかな唇が触れてくる。
最初は触れるだけの軽い口付け。触れては離し、離しては触れてを繰り返す。ただそれだけのことなのに、くらりと酔ってしまうほど気持ちいい。
離れたタイミングで目を開けてみれば、此方を見つめる翡翠の瞳と目が合う。
「どうかしたかい、【君】?」
「なんでもないよ、零夜くん」
もう何度もしたことだというのに、未だになれない。恥ずかしく感じて、彼から視線を逸らせば不思議そうに問いかけられた。
「なんでもないというなら、【僕】のほう見れるはずだろう?」
そう告げつつ、優しく頬へと手を添えられる。
「…もちろん、見れるよ」
視線を戻せば、再び彼のエメラルドグリーンと目が合う。綺麗、なんて思っていたら、いつの間にかまた唇が重なる。軽く響くリップ音、矢張これだけのことなのに酔ってしまいそうである。暫くしては、形のよい薄い唇を舐められる。ピクりと少し反応してしまいつつも、その深い口付けへの合図に応えるべく、小さく口を開ければ、彼の舌が差し込まれた。
「ん…っ」
自分の口内を探られるような感覚。くちゅり、と濡れた音をたてながら、深い口付けが繰り返される。
「…んん」
なんだか、わけがわからなくなってきたところに、急にバチっと電撃が走ったような感覚がして思わず、離れれば口許を余った袖で覆った。
口の中が、まだ少しバチバチする。どういうことか説明を求めるように彼へと視線を向ければ、無意識に起こしてしまったことらしく、おろおろと狼狽えているのが目に入った。
「大丈夫かい、…マルコス?」
「ん、なんか変な感じ…少し口の中がしびれてるみたい」
彼がプラズマを纏う姿を知っているため、考えてみれば不思議なことではないが、突然だと吃驚してしまう。心配そうに問いかけられては、自分の舌をまるで猫のようにちろりと出し、彼にみせた。それを確認すると、安心したように口許に弧が描かれる。
暫くして、舌の感覚戻れば、もっと、と強請だるよう、自分から甘く口付けた。