私の刀 かの刀を譲り受けたのは夏の始まりの頃だった。
日中の焼けるような暑さに、例年の事を思っては先をうんざりするような時分である。本丸中央にある広場の硬い土はフライパンのように熱されて、底の薄い靴で歩き回っていた刀剣たちが余りの暑さに軽快なステップを踏んで、それを見た畑当番のものがホースの先を潰して頭から水をかけてやるのを、私はなんとなく物珍しい気持ちで眺めていた。あの刀が現れた夏は、私がこの本丸に来てから初めての夏でもあった。
手で銃の形を作りながら、もう少しすると戦場で水鉄砲を撃てるんだぜと楽しそうに教えてくれたのは愛染で、ラムネの中身を空にかざしながら、楽しみだなぁとぼやいたのは蛍丸だった。そう言えば最近届いた通達にはそのように書かれていた。夏合宿、海の戦場。どことなく浮かれた文字列に酷く困惑したのを覚えている。だって最近まではずっと、時の政府から送られてくる文書はどこかピリピリとしたものを纏っていたから。
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