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    コルテナ

    @kortena_ja

    20↑。文字書きです。最近金カム関連(勇尾)など書いてます。(元はDQ11ホメグレ等用。他シリーズはククマル/モブマル関連など)。

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    コルテナ

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    現パロ勇尾のSSSです。とても短くてとても糖度がたかい。

    #勇尾
    Yusaku/Ogata

    なんでも可愛い勇作さん「兄様の瞳に似て、とても可愛いですね」
    「……はぁ」
    勇作の小さな囁きに、百之助は気の抜けた返事を返す。弟の視線の先には、黄色っぽい頭をした小魚が、小石を掘った穴からひょこりと顔を出していた。魚特有の、どこを見ているか分からない、真っ黒な目。
    円柱の水槽は、近づいて見ると案外分厚い。じっと見ていると屈折がきつく、目が疲れる気がして、百之助は少し遠巻きに見ていたのだが、弟がにこにこ笑いながら指さすので、少し覗き込むように近づく。
    「…………」
    とりたてて人気のある水槽ではない。そもそも、百之助はあまり何かを「可愛い」と思うことがなかったので、それが世間一般的に言って可愛いかどうかは判断がつかなかった。だが、そんな百之助でもなんとなくわかる。たぶん、こういうのは可愛いと言っても、「逆に」とか、「一周まわって」とか、そういう枕詞がつくたぐいの可愛さのような。勇作のほうを振り返る。にこにこと笑っている。可愛いというのは、勇作のようなもののことを言うのでは、と真顔で考え、もう一度魚を見やる。勇作のきらきら輝く瞳、かたや魚の真っ黒な目。
    「……………」
    言葉が出てこない。面白くない。可愛くないものに例えられたことに、それとも勇作のほうがもっと可愛いのにそれをわかっていないことに? 面倒になって、百之助は黙り込む。踵をかえして、隣の水槽へ向かう。勇作は、ゆっくりあとをついてきた。
    ゾウガメ、スナメリ、シリケンイモリ、どれをとっても、勇作のほうが可愛いのに、とうの勇作は「兄様みたいで可愛い」と笑う。だんだん苛立ってきて、チンアナゴの水槽の前で、「……このチンアナゴ、勇作さんのチ」まで口にしたら、勇作が優雅に微笑みながら指を口の前でクロスしてバッテンをつくった。
    「兄様」
    目を伏せながら、駄目ですよ。と目顔で釘をさしてくる。視線の先には、小さいこどもたち。こどもの前で、下ネタはいけません。雄弁な無言の微笑みに、百之助は自分の頭を二、三度なであげた。面白くない。面白くないが、そうやって自分をたしなめる勇作のしぐさは、目の前のどんな生き物よりも可愛いのだから、始末に負えないのだ。
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    コルテナ

    DONE生産工場は勇尾ですが、これは勇尾として成立しないふたりのお話です。おがたがゆうさくさんから確かに受け取ったものがあるし、それを受け取ったことを認められたのが310という解釈で、二度目は受け取ったそれをゆうさくさんにもかえしたいと思ったりしてほしいな、というきもちで書きました。
    ただ受け取ったものをかえすだけ腕時計に目を落とす。夏季休暇の空港を少々甘く見ていた。あとは搭乗するだけとはいえ、待つ身には気が気ではないだろう。足を早めて、人混みを少々強引に進む。ふと、後ろから自分を呼ぶ声がした。
    「勇作殿」
    決して大きな声ではないのに、よく通る低い声。足が止まる。振り返ると、歳のあまり変わらない男がこちらをまっすぐに見ていた。光を通さないような、真っ黒の瞳が、ひどく印象に残る。
    「あの、すみません……どこかでお会いしたでしょうか」
    人の顔と名前を覚えることは、不得手なほうではないというのに、彼の顔も名前も、全く出てこない。ならば初対面と断じていいはずなのに、なぜかためらってしまう。彼は小さく首を振った。
    「今から俺が言うことは、聞き流して頂いて結構です。なに、時間はかかりません。再びこうして姿を見ることになるとは思っていなかった。ただ、こうして向かい合った以上、俺はあなたに、伝えなければならないことがある。ははあ、戸惑ってますね。いいんですよ。狂人の戯言と思って頂いてかまいません。……俺は、かつて、あなたに多くのものを貰いました。その時は欲しくもないと思っていたんです。捨ててしまいたいとすら、いや、捨てたのだと思っていました。でも、本当は違っていた。あなたに貰ったものは、確かに俺の、“よすが”になった。本当です。それを直視したら、生きていけないと思っていたのに。……今でも俺は、あなたに貰ったものを抱えて生きています」
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