血と倫理「俺とティルの子どもも、作ろうと思えば作れるのかな?」
――何言ってんだこいつ。
ティルは呆れた。横でとぼけたように呟く声には、今更ドン引きする気も起きない。
無視をしてがりがりと鉛筆の芯を削っていると、伸びてきた手がカッターを握っている方の手を捕まえてきて、「聞いてる?」と顔を覗かれた。
「っ、あぶねえな!」
「ごめんごめん。でも、ティルが無視するから」
ぱっと離れた指先が、悪びれもなくひらひらと翻された。咎める口調に反して口角は上がっているし、暗く塗りつぶされた瞳は細められていて、光を許す隙がない。いつも通り、何を考えているのか分からない様子は、自分にとって、とても面倒なものだった。だからさっさと躱したくて、微塵も思っていないのに「わりい」と口にする。
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