【ファンボサンプル】左千夫誕生日③僕の誕生日パーティが終わってから昼間の二人の情報を掻き集めた。
一人目はムーニス、龍鬼頭〈ロングゥイトウ〉の総統である九鬼の父、漆鬼〈チーグゥイ〉の側近である。
褐色な肌の色とチャコールグレーの色の髪が特徴の派手な見た目の人物だが、僕の誕生日パーティでは全く異なる姿だったので気付くことができなかった。
もう一人の人物は端木宇皓〈もとき たかあき〉。
来賓リストにはスーツが代表的な外資系ブランドの役員の息子と記されていたが調べてみると九鬼の腹違いの弟で端木 皓宇〈ドゥァンムゥー ハオユー〉が本名のようだ。
この人物に関して僕は情報を持ち合わせていない。
九鬼のお世話役である、井上竜司〈いのうえ りゅうじ〉 から情報を得ようかとも考えたが九鬼に対して行われようとしている計画も気になった。
九鬼はマフィアの後継なので命を狙われることは多い。
ただ、それは身内では無く、敵対している組織からが殆どである。
それは、龍鬼頭〈ロングゥイトウ〉の総統継承権が九鬼にしかないからだ。
身内が九鬼を殺しても今生存している龍鬼頭〈ロングゥイトウ〉のメンバーから後継は選ばれない。
総統が後継の為に新しく子供をつくるか、全く無関係の場所から誰かを連れてくるかになる。
一子相伝と言う極めてレアな形式を採用しているので無意味な後継争いが行われることは無い筈なのだが。
しかし、今回は身内の計画だと言っていた。
そうなると井上竜司〈いのうえ りゅうじ〉 から情報を得ようとするのは得策では無い。
どこまで敵が紛れ込んでいるか分からないからだ。
「行くしか無い……か」
独り言が小さく溢れる。
そもそも全てがブラフかもしれない、だとしても見逃す事は出来ない。
スマートウォッチのスケジュール表に視線を向けると喫茶【シロフクロウ】のスケジュールにデカデカと激しく自己主張した九鬼が帰ってくる日が目に入った。
因みに今日は僕のパーティが催されただけで誕生日ではない。
それが少し救いかと思いながら幻術効果を上げるための支度をしてから本邸を後にした。
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▲▲ sachio side ▲▲
不意に意識が戻る。
どうやら、喫茶【シロフクロウ】のカウンターで眠っていたようだ。
今日は僕の誕生日当日だったのでお客様から色々なプレゼントを頂いた。
財界での欲にまみれた貢物〈プレゼント〉とは違い、純粋に僕に向けて渡される好意は擽ったい。
治りが速いので声はなんとか普通に出たし、血も止まったが、全身が傷だらけで正直立っているのも辛かった。
しかし、何というか喫茶【シロフクロウ】で働く時間は僕にとって幸せだったりする。
怪我をしていた事は巽くんや剣成くんにはバレていたと思うが、二人とも追求はして来ないので助かった。
晴生くんが共同スペースに上がる前に「誕生日会は九鬼が戻ってきてからやっからな、決して千星さんがテメェの誕生日を忘れてる訳じゃねぇからな!」と、言っていたのがいつも通りで少し笑ってしまった。
後、数十分もすれば僕の誕生日は終わってしまう。
九鬼の義理の弟である端木 皓宇〈ドゥァンムゥー ハオユー〉は、今日用事があるようで日付が回ってから来いと言われたので幸か不幸か平和な誕生日を過ごせた事に時計の針を見ながら静かに微笑んだ。
そろそろ支度をして皓宇〈ハオユー〉の元へ向かおうと立ち上がると馴染みのある気配を感じた。
そして、次の瞬間閉店後の喫茶【シロフクロウ】の扉が開く。
「ただいま〜、珍しいね、─────左千夫くん?どうしたの?」
九鬼だ。
おかしい、いくらなんでも帰ってくるのが早過ぎる。
いつも一日、二日早くなる事はあったがこんなにも早くなる事はあり得ない。
しかも気配をギリギリまで消していたのだろう気付けなかった。
瞬時に逃げ腰になるが、彼は逃してなんてくれない。
幻術も効かない。
体は面倒なので穴開きではなく普通のハイネックにしていて、包帯も巻いたので傷が見えたりはしないが、彼は臭いでわかってしまう。
手の中で何か転がしながらご機嫌に帰ってきた九鬼の表情が一変する。
直ぐ近くまで一気に詰め寄られると顎をすくい上げられそうになったのでその手を反射的にパチンッ…!と、叩いた。
「………………ッ!触るな…」
傷を治されるのは困る。
契約の内容の助けを求めることに抵触してしまう。
嗚呼、でも彼はきっと僕の誕生日に間に合うように帰ってきてくれたんだ。
僕にそんな価値なんて無いのに。
いつも、本当に彼には驚かされる。
好きだ、愛してる………でも、今は、───邪魔だ。
「左千夫…くん?」
「予定より、お早いお帰りで」
「あ、……うん、ギリギリ間に合いそうだったカラ」
「そうですね、わざわざありがとうございます」
「左千夫くん、どうしたの?言いたくないなら言わなくてもいいカラ、手当くらい──」
「結構です」
ピシャリ、と短い言葉で否定する。
すると再び伸ばそうとした手を九鬼は留めた。
後はもう適当な嘘を吐くしかない。
どうにもならなかったら全力で戦って彼を地下にでも閉じ込めるしかない。
「新しい《霊ヤラレ》 解消パートナーが血を好む方なので傷を消されると困ります」
「……え、左千夫くんは…《霊ヤラレ》 には……」
「僕も、なりますよ。貴方と同じ人間なんですから」
「そっか、……そうだよネ〜。ボクが居ない間に楽しんでソイツにハマっちゃったトカ?」
「……そうですね、そんな感じです」
かなり苦しい言い訳だが幸いにも九鬼はそれ以上踏み込んで来なかった。
少し考えるように僕から視線を外し、僕の胸元を見つめていた。そして、再度真っ直ぐに僕の瞳を見詰められる。
透き通ったシルバーの瞳に心の奥底まで見抜かれそうで怖かったが、僕が彼の心理を読めないように、彼も僕の心理は読めない。
「…………左千夫くん、もしかして本当に好きな人……できた?」
その言葉に僕は一度大きく目を見開いた。
僕の本当に好きな人は今目の前に居る。
全く何を考えているかわからなくて、何をしたいのかもわからないし、僕の言うことを全く聞かないし、挙げ句の果てにこんな質問を僕にしてくる奴だ。
愛なんて要らないと何度も言っているのに僕を愛してくれる白翼〈バイイー〉 を僕は愛している。
「─────そうですね」
目の前に居る本当に好きな人を見詰めながら僕は困ったように微笑んだ。
その表情を九鬼はどう受け取ったのか分からなかったが少し驚いたように固まってしまったので、逃げるなら今しかない。
「すいません、今日も約束をしているので行きますね。……これは」
彼の横をすり抜けるように歩くと不意に床に転がっている指輪を見付けた。
さっき彼が手の中で転がしていたものが落ちたのだろう。
指輪は指輪でも揺れるチャームが付いたリングだった。
「ソレは、安物ダヨ……露店でたまたま見つけ──」
「なら、捨てておきますね」
「──!?左千夫…く、ん……」
「九鬼……、僕の誕生日に帰ってきてくれてありがとうございました。貴方のピンキーリングは後日お返しします。あ、あと部屋の荷物は捨てていただいて構いませんので…………さようなら」
僕に愛想を尽かした彼を見るのが今は少し辛かったので、振り返る事なく言葉を並べると、僕は喫茶【シロフクロウ】を後にした。
この指輪はきっと僕の為に買ってくれたのだろうと思い込むことで自分を奮い立たせる。
彼の傍を離れても彼から貰ったものを一つくらいなら身につけても罰は当たらないだろうか。
いつもの癖で大切なものとなった指輪を口の中に入れると頬肉に空いている窪みへと舌で押し込んだ。
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▲▽✁にエロや物語がはいります。
続き、後日談、エロ部分はファンボックスの支援者向けになります。
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