挽歌禍々しいまでの赤い空が、葦名の大地を染め行く。淀んだ赤。それはまるでこの戦で流された血と叫びが色を持ち、みるみるうちに暮れ行く空を覆いつくしてゆくように見えた。
絶え間なく鳴り響いていた火薬の轟き、剣戟(けんげき)の音は絶え、静寂のみがかの地を包み込む。一息の呼吸音さえ躊躇われるような静けさが横たわっていた。地に晒される無数の屍と、時折生温かい風になびく、折れた軍旗のみがかの地で激しい戦があったことを物語っていた。
この戦で、かの地葦名は大敗を喫した。如何に葦名が堅牢な守りを誇る大木であったとて次々と送り込まれる密偵どもには内側を、外側から攻め寄せる兵士どもには外側を食い荒らされてしまってはひとたまりもない。朽ち行く大木は今まさに崩れ、消え去ろうとしていた。
7783