「ごめん、ちょっと離れてくれる?」
俺の左半身を独占する彼にそう言うと、
「どうして」
「どうしてって……」
胸元に寄せた顔を気だるそうに動かして俺を見上げてくる。上目遣いになったその顔は年上の男というにはひどく幼くて、心臓がふるえるのを感じた。
ソファでぴったりと体を近づけて甘い時間を過ごそうという彼に対して、先ほどの一言は少々冷たいものだったかもしれない。どうして、なんて言葉が返ってくるとは想定していなかった。
ふーふーちゃんが、こんなに甘えてくるなんて聞いてない。好きな人にそうされるのはもちろんうれしいけどね。
「昨日は浮奇の方がくっついていたのに」
「……」
お互い様か、と昨夜の自分の行いを思い返した。
おそらく、久しぶりに会えた喜びを声に乗せ、全身で伝えたに違いない。おそらく、というのは自分の行動よりも彼の姿を記憶しているものだから、実際どうだったか自信がないのだ。
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