秘密めいた指示にはわけがあった。売春だ。
マッチングアプリで捕まえた手頃な男は、『明日の午後二時に○○駅前で、ジャンヌ新聞を読んでいる男に声をかけて』とふみやにメッセージを寄越した。今日の明日で予定を作れる首尾の良さだが、こういった行為に慣れているわけではない。むしろ初めてだ。このアプリだって、さっきインストールしたばかり。売春はふみやにとって全く知らない領域なのだが、スルスルと馴染んで自然と約束を取り付けられたのはハウスでも発揮されている器用さがものを言ったのだろう。
そんな未知の領域にふみやが手を出した理由はただひとつ、天彦が抱いてくれないからだ。
ワールドセクシーアンバサダーを自称し、世界中の変態が恋人とまで宣った男のくせに妙なケジメを持っているらしく「セックスは二十歳になってから」と頑なに抱こうとしない。
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