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    nanayuraha

    @nanayuraha

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    nanayuraha

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    リベンジしても良いと言ってくださったから。クリテメだと言い切ってみる。

    幸せの欠片1:結婚式の一時間前

    祝われる事は、そもそも最初から諦めていた。それでも一緒に居たかった、一緒に居て欲しかった。自分の気持ちを受け止めて貰えて、更に同じ気持ちだと言って貰えただけでも充分幸せだった。
    だから、こんな日が来るなんて思っていなかった。

    「おやおや、今日の君は泣き虫なんですね。子羊くん。」
    「僕は、子羊じゃ、ありません…!!」

    おやおや困った子羊くんだと言いながら、僕の止まらなくなってしまった涙をハンカチで拭ってくれるテメノスさん。
    一生をかけて守りたいと誓った人、ずっとずっと一緒に居て欲しいと思った人、僕の愛しい人。

    「今日は、皆が用意してくれた私達の晴れ舞台ですよ?主役の片割れである君が、今からそんな状態でどうするのです?」

    今日、僕らは結婚式をあげる。
    親しい人達が用意してくれた、僕達の祝いの場。まだ世間的には認めない人が多くても、祝う者もまたいるのだと声をあげてくれた。…あ、考えるとまた涙が出てきた。

    「だって、嬉しくて嬉しくて…。どうしましょう、涙が止められません!!」
    「ふふ、そんな所も君らしいと言えば君らしいかも知れませんが。…ほら、そろそろ泣き止みなさい。目が溶けてしまいますよ?」

    涙が止まらなくなってしまっている僕に対して、テメノスさんは普段とあまり変わらない。そんな彼の様子に、少し不安なった。また、何か一人で抱え込んでしまっているのではないかと。
    今まで苦難の道程だった。まず想いを告げても、勘違いで片付けられそうになった。この想いを否定をしないで欲しいと願えば、その先に待つであろう困難を突き付けられた。時間をかけてやっとの事で両想いとなってハッピーエンド、という訳でもなく。一人で抱え込んで身を引こうとするテメノスさんを必死に引き留めて…。

    「おや、今度は不満そうな顔をしている。君はクルクルと感情が変わるから、ずっと見ていたとしても飽きなさそうだ。」
    「…テメノスさん、また何か隠してます?隠しているなら、今すぐ吐いてください。小さな事でも構いません、今すぐに!」
    「もしかしなくても私は、君に疑われてしまっています?こんなに心の底から喜んでいるというのに…。」

    全然そんな風に見えませんよと言うと、困った様にテメノスさんは笑った。それに更に不安が募っていく。
    テメノスさんがとる行動の一つ一つが、僕の事を想ってというのは理解しているつもりだ。理解しているからこそ、疑惑の芽は早く摘んでしまいたい。
    隠すのがとても得意なこの人は、気が付いたらあっという間にソレを大樹に育て上げてしまっていたりするのだから。僕はもう、世界中を舞台にテメノスさんと鬼ごっこを繰り広げたくはない。
    やっとの事で捕まえたと思っても、次の瞬間にはスルリと抜け出して、何処までも逃げていってしまうのだから。この人は。

    「目の前で自分以上に感情を露にしている人間がいると、涙やら何やらもスッと奥に引っ込むというか…。」
    「ぼ、僕のせいですか!?」
    「冗談ですよ、冗談。…そうですね、これはもう癖の様な物なので気にしないでください。」

    癖?というと、感情の揺らぎは隙に成りかねないのでと返ってきた。

    「感情が揺らぐということは、相手に隙を与えかねない。良い感情であれ、悪い感情であれ、それが大きければ大きいほど、危険度が増す事になる。真意を悟らせない為に、表面上取り繕って…。ああ、でも困ったな。」
    「テメノスさん?」
    「つまり無意識でそうしてしまうぐらい、私は…。」

    フム…と何かを考えていたと思ったら、テメノスさんは急に怖い位の真顔で僕をじっと見つめてこう言った。

    「聞いてください、クリック君。私はどうやら、思っていた以上に君の事が好きみたいです。」
    「そんな怖い顔で深刻そうに言う事じゃないですよね、テメノスさん!?」

    きっと僕の緊張を和らげてくれるためにわざとそう振る舞ってくれたのだろう、その時は本気でそう思った。


    2:毎日がきっと記念日

    僕にとっては、テメノスさんに会ってからの全ての日々が記念日であると胸をはって言い切れると思う。全てが大事で、大切な日々だと。
    何を恥ずかしい事を…と、テメノスさんは毎回呆れた様に言う。けれどもそう告げた後、彼が何処か嬉しそうにしている事を僕は知っている。

    「特別な日だから、記念日なのでしょう?君の主張でいくならば、全て等しくなって記念日ではなくなるのでは?」
    「全て特別だと思えば、全て記念日ですよ。…それよりもテメノスさん、僕は誤魔化されませんよ。ほら、早く食べてください。」
    「もう結構です、食べたければ君が食べてください。」

    プイッと横を向いて、拒絶を示すテメノスさんに、そんな子供の様な反応を…とつい笑ってしまった。
    テメノスさんは、只でさえ食に対しての欲が薄い気がする。若い君と同じものを要求しないでくれと以前怒られたけれども、それにしたって少ないと思う。今だってまだサラダとスープしか食べてないのだ、せめてパンも食べて貰わないと。

    「クリック君、君はより一層生意気になりました!出会った頃の、可愛い子羊くんだった君を返してください。」
    「そりゃ、遠慮する必要がなくなったからです。あと僕は子羊じゃありません!」
    「子羊と呼ぶことを嫌がるのは変わりませんね、君は…。」

    テメノスさんは呆れながら然り気無くパンがのった皿を僕の方に押し付けようとしてきたが、それを押し返して元の位置に、彼の前に戻した。
    チッて舌打ちしないでください、どうせすぐバレると思ってやった事でしょう?ね、テメノスさん。

    「あ、今日という日を、パンの記念日にします。毎月この日はパンを沢山食べましょうね、テメノスさん。」
    「じゃあ私は、今日は可愛い子羊くんが消失した日にします。毎月この日は、可愛い子羊の縫いぐるみをモフモフして過ごします。」

    二人して、同時にふふふと笑う。好き勝手に考えて増やしている記念日だけれども、幸せなのだから今後ももっともっと増やせていけたならと思う。


    3:贈り物を、貴方に

    テメノスさんに与えられた部屋は備え付けの物しかなくて、寂しいなと思ったのが最初だった気がする。
    それがまるで、彼が何時でも消えてしまえる準備でもしているような気がしたから。僕を置いて、何処かに。

    「テメノスさん、贈り物です!もう、忘れちゃったんですか?今日は、僕達二人が出会った日です!!」
    「この花瓶、ここら辺に飾っておきますね。えっと、その、初めてデートをした日だった様な…え、それは別の日!?」
    「この道具入れはっと…。あ、コレ結構便利だって有名なんですよテメノスさん!是非使ってくださいね。今日はえっと、僕が初めて無傷でテメノスさんを守り抜けた日です!」

    少しずつ、少しずつ、彼の部屋に備え付け以外の物を増やしていった。
    最初はテメノスさんも戸惑っていたけれども、今では僕が何を用意してくるのかを楽しそうにしている待っている仕草が見られる様になった。そう楽しみにしてくれると、此方も嬉しくなる。
    完全に僕の自己満足と思っていたから、まさかの事態にとても驚いた。

    「大した物ではありませんから!要らないなら捨ててくれても良いですよ。」

    そう言って、押し付けられるように渡されたシルバーのブレスレット。テメノスさんが僕の為に用意してくれた、僕の為の贈り物。
    大した物ではないとは言っているけども、凄く沢山の加護がかけられているのが一目で分かった。見た目は只のブレスレットだから、もしかしてテメノスさん自身が加護をかけてくれたのだろうか?

    「え、でも、どうして…。」
    「記念日に拘っていたのは君の方だというのに、今日が何の日か忘れたんですか?…私達が結婚した日でしょう、忘れたんですか?」

    顔をほんのり赤くしながら、そっぽを向くテメノスさんを断りもなく思わず抱きしめてしまった。
    ああ、もうきっと大丈夫な気がする。彼はきっと、フラッと何処かに行ってしまわない。僕を置きざりにして。

    「一生、大事にします!!!」

    貰ったブレスレットを身に付けると、随時テメノスさんに守られているような気がした。これは一生、外せないと思った。


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