吐き気がするほど甘い夢 その人を夢に見るようになったのは、いつの頃からだろう。
「リー」
幾度目かの夢だ。療養庭園に佇むその人が、こちらを見て頬を緩める。白衣も上着も着ておらず、表情を見られることを頑なに拒むようなフェイスシールドもなかった。そのかんばせに木漏れ日がやわらかな陰影を作っている。その人がこんな風に笑顔を浮かべるところを、自分は今までに何度見たことがあるだろうか。きっと数えるほどしかなく、自分に向けられたことは一度もない。
行こうか、と差し出されるその手を取る。想像していた通りに細く、薄く、力を込めれば立ち所に折れてしまいそうだった。何度か力を入れて、緩めてということを繰り返せば、その人はくすぐったそうな笑い声を零す。それでも繋いだ手は解けない。
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