本丸内は異空間とは言え四季はあるし、現世と同じようにめぐる。
宗三左文字はペットボトルのミネラルウォーターの封を開けて飲んだ。
「暑いですね」
日が強すぎる。
日差し除けの帽子は欠かせないし何なら外に出ないほうがいいぐらいだ。
其れなのに外に出ているのは畑当番だからだが。
「宗三」
「おはようございます。姫様」
姫様と宗三は少女を呼ぶ。
外見十代の少女。この本丸の主である男の近侍、歌仙兼定と審神者の力を持つ女の娘。
宗三は産まれた時から彼女を知っている。
「暑いです」
「夏休みの宿題は」
「今日の分は終わらせました。宗三を手伝おうと想って」
「偉いですよ」
彼女の母親は、身内のごたごたで心を壊して今は歌仙兼定の神界にいる。
気丈に振る舞っているところがあった。宗三は彼女を褒める。
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