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    なんばん

    二次創作のみ。成人済。色々垂れ流します。マイナーCP、オリキャラ関係以外はまとめてpixivに挙げるつもりです。
    ※妄想・捏造注意
    ※マイナー・リバ腐向け注意
    【pixiv】
    https://www.pixiv.net/users/56568538

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    なんばん

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    キルバーンが主人公のホラー・サスペンス調のお話のボツ部分。導入が長かったので切りました。なお、モブが出てきます。

    予定では『名前ありのオリキャラ』が登場するので完成すれば、こちらに全て載せるつもりです。(いつ完成するのか)

    【追記】2023年11月に完成した小説『失われた墓標』をpixivに投稿しました。7万字ほどありデータが重そうだったのでpixivへの投稿に変更いたしました。

    【ボツ部分】名前の無い墓標始まり

     ステンドグラスの天窓から発せられた豊かな色彩の光は、大魔王に報告に来ていた男を緩やかに照らす。訝しげな表情をしながら報告をする男の正面には、カーテン越しの主人と物騒な大鎌を持つ道化師風の男が一人。
    見慣れない長身の不気味な男に、魔界から報告にやって来た大柄の魔族は戸惑う。それを察した大魔王は軽く笑いながら部下に説明をした。
    「案ずるな こ奴は余の直属の殺し屋……一応味方だ」
    どこを安心すれば良いのかと、男は更に不安げな表情を見せた。優秀な軍人の恐がる表情が面白いのか、死神は低く嗤ってみせる。背後から小さな三角帽子が現れ、死神の使い魔が一つ目を覗かせた。
    「きゃはははっ 偉くて強い軍人さんなのに こんなに恐がっちゃってるよぉ~ やっぱりキルバーンが恐いの 良く分かるんだねぇ!」
    重く沈んだ空間に似合わない、軽い声色が響く。笑う仮面を身につけた死神は口を開いた。
    「ピロロ バーン様の会話を邪魔しちゃいけないよ 震えてる彼はわざわざ魔界から来てくれてるんだからさ」
    殺し屋の肩書きを持つ二人は肩を揺らして嗤った。大魔王と同格の扱いをされる、冥竜王の遣いだからこそ許される態度である。
    「第六宮殿での詳細を話せ 遺体の状態もな」
    大魔王は咳払いし、冷や汗をかく部下に報告の催促をする。意識を主人に戻した魔族は話を続けた。
    「はっ……ご報告致します 第三宮殿所属の幹部一名が一昨日 第六宮殿にて……」
    大柄の魔族は一息ついてから、やっとの思いで詳細を吐き出してゆく。
    「突然 何の前触れも無しに……惨殺されました 即死です」
    惨殺された、そのやんわりとしか話さない様子をキルバーンは聞き逃さなかった。間髪を入れずに死神は、報告をする男に質問する。
    「その男が殺されたとき 君も現場にいたんだろ? 彼の殺され方を話したまえ」
    ゾクリとする質問に、バーンの部下は固唾を飲む。魔族の男は潤んだ瞳を地面に伏せ、歯をガチガチと鳴らし口を開く。
    「いきなり かっ 体が……宙に浮いて……雑巾みたいにっ……捻れてっ……」
    死神の赤い瞳が微かに細くなる。ピロロの口をへの字に曲げた。大魔王はキルバーンの方を向き、見解を求める。
    「んー……やはりそうですねぇ……事前の報告を受けたときにボクも考えていましたが バーン様の推理通りでお間違い無いかと」
    キルバーンは大魔王に視線を移し、自身の考えを述べ始めた。
    「これは呪法です 恐らく殺された男を見立てた人形を作成し 術者はそれを」
    死神は宙で雑巾を絞る動作をし、その瞳は三日月に歪んだ。説明を受けたバーンの部下から血の気が引いてゆく。
    「術者は相当残酷ですよ 話が通じる相手では無いかもしれませんね」
    キッパリと言いきる死神の様子に、大魔王は髭をさする。彼は少しの間を置くと死神に疑問を投げ掛けた。
    「……何故 そう断言する」
    キルバーンの見解を詳しく知る為、大魔王は鋭い眼光を死神に向ける。キルバーンは尻込みせず、堂々と再び意見し始めた。
    「普通 敵勢力が見せしめの為に殺害したのであれば 生首くらい無傷で残すでしょう」
    一理あると、大魔王の部下も頭を上げて話を聞き始める。死神は続けて説明した。
    「確かに敵への威嚇として 残酷に始末したことも考えられます……が」
    仮面から覗く赤が潜まる。使い魔は少し不安げに口をすぼめた。
    「必要以上に嗜虐的なやり方かと 生半可な使い手ではないことは確かです」
    大魔王は死神の発言を聞き、カーテンの奥で低く笑う。跪くバーンの部下は絶望した様子で目を閉じ、死神本人に質問を投げ掛ける。
    「私も……殺されるのでしょうか……その……キルバーン様……」
    大の軍人がおずおずと問う様子に、死神は呆れてそっぽを向いた。
    「さぁ? ボクの仕事は君の警護じゃないから 君が殺されようと関係ないね」
    死神は両手を軽く上げ、お手上げだとジェスチャーする。彼の血も涙もない態度を見て、バーンの部下はゆっくりと死神から目を背けた。そんな部下を余所目に、大魔王は死神に呼び掛ける。
    「キルバーン お主に新たな任務を言い渡す」
    二人の死神の瞳が引き締まる。大鎌の柄の先端を床に立て、キルバーンは胸を手を当てた。
    「魔界本国にある『第六宮殿』で発生した事件の調査をせよ 邪魔をする障害の生死は問わん」
    扇の飾りに付いた月と星が揺れる。キルバーンとピロロは頭を深く下げた。
    「かしこまりました お任せ下さい」
    来て日が浅い自分達を試す気なのだろうと、死神は仮面の向こうで苦笑する。
    一連の動作を終えると、キルバーンはピロロと共に王室を後にした。

             ~*~

     乾燥した冷風が仮面の奥をすり抜ける。乾いた大地に光る火の脈が、宙を飛ぶ一つの影を赤く照らし出す。死神は地図を片手に『第六宮殿』を目指していた。
    「ねぇ~キルバーン」
    地図に目をやる主人の右肩から、使い魔は顔を出す。死神が確信したその表情はどこか不機嫌だった。
    「せっかく地上で美味しい食べ物とか 綺麗な景色が見れると思ったのにさぁ……またここに戻って来なきゃいけないなんて」
    小さな口は不満げにへの時に曲げられている。主人であるキルバーンは地図に視線を戻した。
    「ウフフ ま……今はまだ ボクらはワガママを言える立場じゃないからね」
    地図を左手に持ち直し、金属の右手は使い魔のとんがり帽子を軽く撫でた。主人になだめて貰った使い魔は照れた表情をこっそりと見せる。
    「ところでこっちの方角なの? 他の宮殿より離れてるんだね その第六宮殿って」
    キルバーンは持っていた地図を使い魔を預け、懐から円形のコンパスを取り出した。菱形の針はキルバーン達の進行方向に向き、方角を北に示した。
    「間違っていない 北の方角だ」
    死神達はそびえ立つ岩山を抜け、溶岩の煙を突き抜ける。背の低い岩が点在する焼け野原にたどり着いた。キルバーンは地面に降り立ち、神殿があるであろう場所を見渡す。
    見渡す限りの殺風景だった。竜の牙にも見える尖った山々に囲われ、溶岩の禍々しい赤い光が見えるばかりである。死神は地面にかがみ、おもむろに地面を触り始めた。
    「へぇ ここの地面は比較的柔らかいね 昔の戦地だったのかも」
    藍色の砂をはたき、キルバーンは興味深そうに観察する。ピロロは地図を主人に返すと、主人の真似をし始めた。しかし、何故主人が地面を気にしたのか分からず、使い魔は腑に落ちない表情で土を払った。
    「ねぇねぇ 何で宮殿の辺りを気にするの?」
    死神は持ち物の一式をなおし、使い魔と共に歩き始めた。
    「君が言ったようにここは他の宮殿から離れている それが何故なのか理由分からないけど 細かな事から警戒した方が良いかと思ってね」
    右手を宙に上げると、死神は亜空間に収納していた大鎌を引きずり出した。笛が風に呼応し、不気味に砂利を震わせる。気を引き締める死神の視界に、白い三角の物体が映った。
    それは宮殿の屋根だった。キルバーン達は自分達がやって来た丘から、そびえ立つ宮殿を見下ろす。
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