見ぬが秘事頂点まで上り詰め、築き上げた地盤は呆気なく崩壊した
今までの努力は一体何だったのだろうと思うほど呆気なく、残酷に叩き落とされた
身体の至る所から溢れてくる黒と赤が斑に混ざり広がる
視界の端に通知が大量に出ていたが確認する気力も体力も無かった
「あ、いたいた生きてる?」
場違いすぎる軽い声掛けに視線を向ければ、岩陰から見慣れた顔がこちらを伺っていた
「その状態で生きてるんだ、すごい生命力」
ニタニタと笑い近付いてくる昔の影を壁に身体を預けたまま無気力に見つめる、全てが億劫だった
「ねぇ、返事しなよ」
「はっァ゙…」
青と白のスニーカーが腹を踏みつけてくる
呼吸するだけで悲鳴を上げていた身体にさらなる負荷がかかり苦しさに顔が歪む
「あいつ加減しらないの?コレじゃ面白くないじゃん」
抵抗すらしない旬に興味を失ったのかすぐに足をどかし唸り、うろうろと歩き回り始めた
逃げなければならないのだろうが、影を喚ぶ為のマナも、権能を使うにしても握り、踏みつぶされあらぬ方向に曲がった指では何も出来なかった
暫くしてピタリと歩くのを辞めたと思えば、投げだされた足をまたぎ旬に近付く
「ねぇ、痛い?」
さらりと両の手で顔を上げられ、目が合う
「あんなに頑張ってきたのにこんな結果で悔しい?それとも悲しい?」
慈愛に満ちた顔をしながら頬や目尻を優しく撫でられる
その優しさに嗚咽がまじり滲んでくる涙を拭われる
「大丈夫、お前は頑張ってたよ…俺が1番知ってるからね」
ポスリと腹に顔を押し付けられ頭を撫でられる
その優しすぎる言動に我慢出来ず薄い腹にもっとと強請り頭を押し付ける
「弱い時は見向きもしないのに、強くなったら全部押し付けられて、頑張り過ぎて疲れたんだよね?」
大丈夫、誰にも文句言わせないから…だから休もうか?
その優しすぎる言葉に我慢出来ずボロボロと涙が止まらなくなる
縋りたくても潰された腕は動かず、それがとても悔しく
てまた涙をこぼした