泡沫の祈祷「ごほっ、ごほっ……え、ふ、っ、ぅ……ぐ、お、っぇ」
「……っ」
激しく咳き込む音にハッと意識が浮上する。友の怪我の具合を見るついでに雑談をしていたはずが、いつの間にか寝入ってしまったようだ。目に飛び込んできたのは背を丸めて蹲る友の痛々しい姿。反射的に体を跳ね起こし、慌ててその背に手を乗せる。座っていた簡易椅子が音を立てて石畳に転んだが、気に留める余裕はなかった。
「ユリウス……?」
「っ……、すまない、平気だよ……。……っ」
こちらを振り向いたユリウスは、緩やかに微笑んだのち数秒とたたずに再び表情を歪ませる。口元を押さえつけた手のひらの隙間から、鮮やかな鮮血が漏れていくのを見てひゅうと嫌に喉が鳴った。血を、吐いている。
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