Moebius strip「これと、肉まんひとつください。……あ、」
夜18時過ぎ。チームでの練習を終えた後ジムで汗を流した後の葦人が立ち寄った、都内某所のコンビニエンスストア。レジカウンターの奥の番号札がついた陳列棚に見覚えのある瑠璃色のグラデーションを見つけた。
「あそこの……、20番。……ひとつ……お願いします」
気付けば葦人の人差し指はそれを差していた。喫煙者でもないのに、半ば衝動的に出た商品を指示する声に自分でも驚く。完全に無意識だった。
白いカウンターに置いたサッカー情報誌。表紙には『期待の新星、北野蓮』という見出しと共に国内プロチームのユニフォームに身を包みボールを蹴り出す彼の写真が載っていた。涼しげな雰囲気はそのままに、時が経ちより引き締まって精悍な印象が強まった顔。それが透明なフィルムで包まれた手のひらサイズの箱に隠される。
2146