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    きりはら

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    入間銃兎※ ARBクリスマスカードネタ

    良い子はいません|入間銃兎※ARBクリスマスカードネタ
    ※雑



    ーー渡せるときに渡しておきますね。

    そう言って銃兎からクリスマスプレゼントを渡されたのが5日前のことだ。その言葉通り銃兎とはもう5日も(!)会っていないが、それが銃兎の意図した予定なのかはわからない。知る術もない。
    でも銃兎の職業や優先順位はよくわかっている。身をもって知らされたとも言える。まず麻薬撲滅、次に碧棺左馬刻と毒島、その次にシャツをクリーニングに出すこと(以前、明日着るシャツがない!と帰宅早々シャツを買うためだけにまた出て行ったことがある)、その次の次あたりでようやくこの私、といったところだろうか。5本の指に入ればいいが、幸いにも足を含めれば指は20本あるのでなくなるまでには私も数えられるだろう。
    私の頭の中に住まう銃兎が「指や手足がすべて揃ってるうちはそうですね」と皮肉を言う。すっかり反社会的になってしまった。

    手段は選ばないほどに切実な銃兎の願いを、私は叶えてあげられない。銃兎の邪魔になりたくないと思う気持ちと、何もかも忘れてしまえばいいのにと思う気持ちと。心がふたつある。ふたつどころではないかもしれない。


    (帰宅早々ぬいぐるみと会話させられる銃兎)


    「……あれれ〜?🐿ちゃん、今日はぼくとふたりでクリスマス会じゃなかったの〜?」

    やれやれ、と顔に書いてある。

    「……これはこれは。先客がいるとは失礼しました。私も彼女とのクリスマス会にお邪魔したいのですが」
    「ふーん。🐿ちゃんどうする?」
    「メガネの人はまずは自己紹介して。おなまえは?ってこの子に聞いて」

    私のベタなひとり芝居に、銃兎は顔が引き攣っている。

    「……では……おなまえは?」
    「じゅーと」
    「おっ、……おやおや、これはこれはめずらしい。私と同じ名前ですねぇ」
    「🐿ちゃんの好きなひとの名前なんだってぇ」
    「……そうですか。その……好きなひと、というのは🐿さんの恋人ですか?」

    銃兎と目が合う。

    「うーん……あわてんぼうのサンタクロースかも?」
    「では、……ご友人のじゅーとくんにお聞きしますが……🐿さんはサンタが来るほど良い子にしていたんですか? 例えばぬいぐるみと会話したり、夜遅くまで友人とゲームしたり……心当たりはありませんか?」

    そう言って、銃兎はコンビニの袋からビールを出した。まるで賄賂だ。

    「もう何もクリスマスらしいものは残ってなかったんです」

    おつまみ、ポテトチップス、サンドイッチ、牛丼……牛丼?!

    「だからって牛丼買う?!」
    「腹が減ってるんです。今日も朝からほとんど飲まず食わずで」
    「……ごめん」
    「いえ、……謝るのは私のほうですね。」


    今よりずっと前、サンタクロースはいないのだと理解して受け入れられたのに。どうして大人になった今のほうが、聞き分けのない子どもみたいになってしまうんだろう。


    銃兎がシャワーを浴びている間に歯磨きして片付けてそそくさとベッドに入ろうとしたのに、片付けの途中で簡単に見つかってしまった。視線を感じながらベッドに入ったけど、布団を引っ掴まれた。私はまんまと泳がされたのかもしれない。

    「もう寝るんですか?」
    「まぁ……銃兎も今日はもう寝たら? どうせろくに寝てないんでしょ?」
    「……チッ」

    銃兎は本来ならそこに自分がいるはずの場所に横たわるぬいぐるみを睨んだ。ほんの数日前に銃兎がプレゼントしてくれたものなのに、銃兎はまるで知らない男がくれたものにそうするみたいに私からぬいぐるみを取り上げた。

    「あーっ!やだやだ返してー!」
    「いいじゃないですか本物の私がいるんですからっ」
    「このこのっ!返せっ!」

    銃兎からどうにかぬいぐるみを奪って、ぎゅっと抱きしめて思わず身体を丸めると銃兎は背中に乗っかってきた。手加減しているのだろうがそれでも充分くるしい。

    「つ、っ、つぶれる!」
    「では人質を解放しなさい」
    「うぇっ!わかった!わかりました!あーもう!なんなの?!」

    身体を起こした勢いのまま銃兎にぬいぐるみを渡そうとすると、ぎゅっと抱きしめられた。

    「……今度は私が人質?」
    「そうですねぇ……私はあまり良い行いをしていませんが、あなたがいればサンタが来るかもしれませんから」
    「……来ないよ。来るわけないじゃん。私なんて良い子じゃないし。わがままだし、いろいろ好き嫌いもあるし。でもサンタさんは来なくていいの。私は銃兎がいればいいから」
    「それならご心配なく。私がサンタの代わりにプレゼントを用意しておきました」
    「え〜?」
    「明日の朝のお楽しみということで」

    そんなこと言って、急に呼び出しが入ったとか言って、今すぐにでもいなくなるかもしれないくせに。
    どんな嫌味を言ったって、銃兎は私を置いて行ってしまう。

    だけど今夜だけは良い子にするから、明日の朝は銃兎と一緒にコーヒーを飲めますように。
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