あの日から
出会ったときから、好きだった。
もちろん、最初から恋い慕うような感情が、あったわけではないのだけれど。
あんな情熱的なラブレターに落ちない男なんて、この世にいるわけがないだろう。
僕は僕よりも僕の曲を、歌を愛してほしかった。お前は最初から僕の望みを叶えていたんだよ。
お前の手を握って、背中を抱きしめた時に僕はたくさん欲しくなった。守りたくて、大切で、かけがえのないお前のことが、もっと欲しくなったんだ。
今までよりずっとそばにいたい。
誰にも渡したくはない。
これは僕が見つけた輝きなのだから。
溢れた感情が旋律になったこと、お前は知る由もないだろう。
僕のことを愚かな男だと世界は嗤うかもしれない。
お前はそんな僕のことを蔑むかもしれない。
けれど僕だけは知っている。お前という光を見出した僕は、世界で一番幸福な人類で間違いない。
たとえお前が僕を愛さなくとも、僕の歌は永遠に愛してくれるだろう。
それだけでもう充分だ。
だから手を離そうとした。
まばゆい輝きを、僕だけが独り占めしていたかったけれど。
お前はお前という可能性をまだまだ広げていける。僕ひとりに限定されることはない。
僕はもう一生かけても使い切れないくらい、たくさん輝きを貰ったよ。
手を、指を、するりと抜いた。