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    y4ec57

    @y4ec57

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    y4ec57

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    無題「——だから、ごめんなさい」
     頭を下げる瞬間、雪狐くんの表情が見えてしまった。傷ついた顔をしていた。でもそれは私が意図してやったことなのだから、罪悪感なんてあるのが当たり前。それを表に出すのはもっと相手を傷つけてしまうことになる。だから、顔を上げて笑ってみせる。
    「気持ちは嬉しかったです」
     だけど私は受け取れない。受け取るだけの優しさも思いやりも持っていないから。そういうものを持っていたのだとしたら、目の前の彼のことも、親友のことも、あんなに傷つけなかった、あんな顔をさせずに済んだ、はずだから。
     もう、誰とも深く関わるべきじゃない。何もかも失って、本当の独りになるべきなんだ。これでいいんだ。こうするしかないんだ。
    「……そっか」
     雪狐くんの声が続く。
    「ずっと付き纏って、迷惑かけてごめんね」
     そうじゃない。……否定する権限なんて持ち合わせていない。私は自分の意思で彼を突き放した。だから、心の中で、ごめんなさい、と呟く。それすら本当はしてはいけないことだけれど。
    「いいえ! それじゃあ、私はこれで」
     いつもみたいに取り繕った笑顔で別れを告げた直後、一度だけ呼び止められた。立ち止まった直後、抱きしめられる予感がして思わず避けてしまった。
     避けるべきじゃ、なかった。
     今までで一番淋しそうな顔をした雪狐くんがすぐそこに居て、私は笑っていることすらできそうになくなって、逃げ出した。
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