雑諸③山の木々が色づきはじめ、庵の庭にも赤や黄の葉が舞い降りる。
風は少し冷たくなってきていたが、陽だまりはまだ暖かい。
雑渡昆奈門は、小さな囲炉裏の前で、そっと湯呑を置いた。
番茶の香ばしさが立ちのぼり、秋の空気にとけていく。
「こんなもんさま、お外、行きませんか?栗が落ちてきてるかもしれません」
「ほう…坊は栗が好きだったな」
「はい。でも今日は、拾ったら、こんなもんさまにも食べてもらおうと思って」
「うん、ありがとう。それじゃあ、付き合おう」
もう歩くのにも慣れてきた足取りで、雑渡は坊の後を追う。
ふたりで拾い集めた栗は、小さな布袋にいくつも溜まっていく。
「ほら、見てください。この大きいの」
「ふふ…坊の手の中にあると、なおさら大きく見えるな」
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