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    mort*

    トマトジュースって分類はオカズなんですかね

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    mort*

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    キバナ君に嫌われてるのでは…と悩むリーマンダンデ君と、素直になるのが恥ずかしい大人なりたてほやほやキバナ君のdnkb
    恋はもうすぐ始まる感じの二人。

    #dnkb

    飼い主×ウサギパロ



    「ダンデさん、最近恋人が出来たってほんとですか?」

    思わぬ後輩からの質問に、ぱちくり、と瞬きを返すこと数秒。ダンデは数秒置いて口を開いてかぶりつこうとしていたサンドイッチに、ようやく噛み付いてシャクリ、と無駄に大きな音を立ててもぐついた。

    「…その話は誰から聞いたんだ?」
    「いや、別に誰かが言ってた訳じゃないですけど。社内でもっぱら噂ですよ。あれだけ帰れと言われても帰らなかったダンデさんが、ここの所定時で上がってるわ、挙句の果てに万年コンビニ飯だったのに急に手作りのランチボックス持ってきてたらそりゃ話題になるでしょ」
    「なるほど…」

    目を輝かせて好奇心を隠さずにダンデの返答を期待して見てくる後輩の青年からの追求に、ダンデは少し考えてから口を再度開いた。

    「半分当たって…半分不正解ってところだな」

    我ながら何とも判然としない微妙な返答だ。当然、目の前で好奇心を持って真実を追求したがる若者を納得させる理由になる筈も無く、後輩は更にダンデの言葉へと食いつきを見せた。

    「え?と言いますと?勿体ぶらずに教えてくださいよ〜」
    「…そんなに気になるか…?」
    「当たり前ですよ!社内全体の士気に関わることです!俺は女子社員全員から脅…、頼まれて聞いてるんですから…!」
    「君も大変だな」

    さぁ早く、と前のめり気味の後輩に少し引きつつ、ダンデはこれといって面白みも無いぞ、と暗に言い含むようなトーンで答えた。

    「最近ウサギと暮らし始めたんだ」
    「へ、…、ウサギ?」

    そう言ったダンデに、同僚はぱちくりと瞬きして心底驚いた後、すぐさま興味津々な様子で笑顔を向けてきた。

    「へー、ダンデさんウサギを飼ってたんですね」
    「飼う…と言うより、同棲に近いというか…」
    「ははっ、面白いですね。そう言えばウサギって寂しいと死ぬって本当なんですか?」
    「いや、それは迷信で彼らはむしろ自我が強い生き物だし案外俺が居ない方が伸び伸びしてるぜ」
    「そうなんですね。でもウサギかー…いいなぁ。モフモフ…」

    なるほど、ウサちゃんの為に食生活も気をつけて定時上がりになったのか…、と納得している彼にダンデは何とも言えぬ気持ちで同意をして話を流した。
    何せ、同僚がイメージするようなウサギとは違ってダンデが飼っている…というか共に暮らしているウサギのキバナは一見するとただの人間の青年のように見える姿で、世間一般の常識からは有り得ない特殊とも言える存在だからである。
    垂れた茶色の耳を生やして柔らかなしっぽをおしりに出している以外は、どこからどう見ても容姿の整った人間の青年の姿のキバナに、ダンデはそれでも彼が普通のウサギと変わらない姿だった頃と変わらずに家族としての愛情を注いでいるが、彼は人間の姿になってからダンデに対してどこか素っ気ないのが最近の悩みでもあった。ただ、このランチボックスだって頼んでも無いのに家で一人の留守番は暇だからとキバナが作ってくれているので嫌われては無いだろうが…。それでも、子うさぎの頃こちらの膝元に擦り寄って甘えてきたキバナを知っているダンデとしては、キバナのある種の自立とも言える行動は素直に喜べないくらい寂しさを感じているのが本音だった。

    「写真は?ねぇ、写真とかないんすか?ダンデさん」
    「あー…、いや。君が見たらキバナが減るから駄目だ」
    「減らないでしょ!?え!?何その飼い主の独占欲!?」
    「もういいだろう、君も俺に構ってばかりだとランチタイムが無くなるぞ」
    「えー!ウサギのキバナちゃん見たかったのに…。モフモフ…」

    肩を落とした動物好きの後輩が離れた後、ダンデは一体どこで覚えたのか。かつてウサギだったとは思えない学習速度で巧みに家事を熟すキバナの成長を、クオリティの高すぎるランチボックスの内容から常々感じさせられていた。
    そんな事を悶々と考えつつ、ダンデはキバナが手軽に食べやすい食を好む己のことを知ってか作ってくれたサンドイッチを食んで、ぼんやりと家で今頃キバナは何をしているかと想いを馳せた。


    (早く帰ってキバナに会いたいぜ…)





    ⿴⿻⿸


    「…ただいま、キバナ」

    オートロックの扉を開いて、帰宅したダンデの前にはシーンとした無音と磨きあげられたフローリングだけが視界に入る。
    ウサギのキバナと暮らしはじめてから特に何の歓迎もないこの生活には慣れたもので、特段別にそれが寂しいとかは思わないが、それでももしキバナか犬だったなら俺を迎えに来るのだろうか、と少し考えてしまいそんな愚かな発想にダンデは慌てて首を振った。
    ウサギは自然界では非捕食者側であるからか、共に暮らしていても存外その存在を安易にこちらへ実感させて来ない生き物である事をキバナと暮らすようになってダンデは知ったのである。
    そそくさと、まっさきに洗面所に向かって手と口を洗ったダンデはリビングに入る前に自室で着替えると、恐らく定位置とばかりに今日も長い足を伸ばして座って居るだろうキバナを思い、少し流行る気持ちを抑えてリビングの扉を開いた。
    案の定、リビングにて大きな画面と反比例するように小さな音で映像を流して見ていたキバナは、ダンデが帰宅した事にはとっくに気がついて居ただろうが、扉の開いた音に漸く垂れた耳を少し揺らしてこちらへと青い瞳を向けた。

    「……おー、おかえりー。おつかれさん」
    「ああ、ただいま」

    特にこれといって仲が悪いという訳でも無いが、かと言ってそれ以上会話がある訳でもないいつものやり取りである。毎朝早起きなキバナが作ってくれるランチボックスに今日も美味しかったと感想を告げると、キバナは「そっか、良かった」とだけ言ってまたテレビへと視線を戻した。
    恐らく倦怠期のカップルでももう少し会話があるのでは…と思う必要最低限の会話を削ぎ落としたやり取りだが、もう最近はずっと二人(一人と一羽)の距離感はこんな感じだった。正直言うと寂しい。否、めちゃくちゃさみしい。

    「キバナ、何を見てるんだ?」
    「んー…、ここ最近の株価の変動?」
    「きみは本当にウサギだよな…?」
    「ウサギだよ」

    後ろから話しかけたダンデの声に反応してぴょこ、と揺れる耳に触れたいとは強く思うが、キバナはプライドが高い上にあまり触れるのが好きでは無いようなのでダンデは思わず出そうとなった手を引っ込めて、誤魔化すように拳を閉じたり開いたりして落ち着かせた。

    「なに?今日は先にご飯食べるのか?晩飯なら今日はシチューだからすぐ用意できるけど」

    未だ無言で背後で立っているダンデを通じて不審に思ったのだろう。少し考えたような目でこちらを見てくるキバナの瞳は、子うさぎだった頃から変わらない癖で、ダンデはおもわずそんなキバナの仕草に胸がぎゅっとなった。

    「いや、…いつもありがとう。シチューは後で食べるよ。それよりキバナ…、実は今日は君に聞きたいことがあって…」
    「ん?何?」

    食卓である広いテーブルに移動せずに、キバナの座るソファへとやってきたダンデが隣へ座るのを見たキバナは、どこか気まずそうな緊張した面持ちの飼い主である男の顔を見て疑問符を頭に浮かべた。

    「君は…、その、あんまり俺のことが好きじゃないのだろうか…」
    「は?」

    何で?と言った様子でキバナはただぽかんとした顔でこちらを見た。これはもしや今更何面倒な事を言ってるんだという意味合いか?と考えてしまったダンデは、慌てて取り繕うように必死に口を開いた。

    「い、いや…!いくら便宜上の俺たちの立場が飼い主とペットだとしても!君にちゃんと自我がある事も人間個人…じゃないか、ウサギ個人…?として君の事を俺としては尊重してるつもりであるんだ!だが、その、…」
    「待て待て、ダンデ。ちょっと落ち着けよ。な?」
    「う、うん…」

    ついつい早口に言葉を連ねるダンデに待て待て、と手の平をこちらへ向けて制したキバナは飼い主のダンデよりも遥かに落ち着いている。
    そんな宥めるキバナの声にダンデは冷静になるべく深呼吸して、こちらを伺う青い二対の瞳を見た。

    そもそも、キバナとの出会いは、ダンデがたまたま仕事帰りにセール中!と貼られたゲージに一羽だけ入れられたチョコレート色の子うさぎを見つけたのが全てのきっかけである。
    生き物を飼うことは大きな責任と覚悟が必要だとダンデは思っていたので、これまでは安易に動物を飼うだなんて行為を社会人になって独り身の生活を暫く続けて居るうちはしないと思っていたのだが。つぶらな瞳とひくひくとした鼻を動かして、こちらを健気に見てくる子うさぎに何故か運命的な出会いを感じ、気がつけばウサギの飼育に必要なあれやそれを全て一括で購入してキバナを家に迎えたのが半年ほど前の話。
    そこから、まさか当初は普通の子うさぎだったキバナが色々あって人間のような姿に成長したのは本当に働きすぎて自分の脳みそがおかしくなったのではと当初は疑ったものだが、幼なじみで獣医でもあるソニアに特別に家に来て貰い診察して貰った所。「確かに…耳も神経が通ってるし、ウサギと人間のハーフみたいな状態だね…。ねぇ、キバナ君の血液のサンプルって貰える?」と期待を込めた学者の知的好奇心を向けられ慌てて断ったので、(冗談だと笑われたがあの目は半ば本気だった)これが現実である事はきちんと理解したダンデである。世間的に見てキバナのような生き物が他に居る可能性すら分からない今、ダンデは半ば一人の人間を家に軟禁してるような現状に罪悪感にも似た感情も抱いてはいた。だが、ダンデの不安を他所に、キバナは人間に近い姿となってからも伸び伸びとした暮らしを自由に謳歌して、ダンデの力を借りず、むしろ家の家事を器用にこなしている始末である。「暇だから」の一言でダンデに彩のある生活を提供してくれるキバナに、ダンデはある種申し訳なさと焦りを常々感じていた。

    飼い主の存在意義とは果たして…?


    「その…な、キバナ…。俺は、情けない話。君に必要とされてないんじゃないかって、度々思うことがあるんだ…」
    「んん…?」

    目の前でプレゼンよろしくエアろくろを回す素振りで語るダンデに、キバナは耳を揺らして真剣に聞こうとしてくれているようだが意図は余り伝わっていないのか、判然としない反応で「うーん…?」と首を傾げた。

    「別に…俺さまがそんな風にお前に言った事ないだろ」
    「けど、人間で飼い主の俺が現に君に世話されまくっている状況じゃないか…」
    「世話って…。まあ別に…けど稼いでるのはお前だろ?」
    「でも飼い主として情けないぜ…」

    ダンデとて、キバナが来るまでは一人で生活をしていたので家事に置いても生活力が一切無い訳では無いが、それでも効率を重視して仕事メインに生活する無駄の一切を無くした一人暮らしに比べて、今の彩りと余裕のある…なんと言うか丁寧な暮らしはキバナがいるから実現してると言って良い。
    キバナには必要なものがあれば買ってくれと限度額を設定せずにネットショッピング用の端末を渡しているのだが、ダンデはこの間初めて自分のキッチンに見たことの無いハーブの調味料を見つけた時に、謎のショックすら受けたのだ。これではまるでダンデの暮らしばかりが丁寧に文化的に充実していくばかりである。如何せん、キバナは元々がウサギのせいか、素っ気ない割に買うものが生活必需品かダンデのプラスになることしか買わないのだ。申し訳なさしかない。

    「キバナ…俺はカレーをスパイスから作るような男じゃないのに、何故か今のこの家には見たことの無い何とかマサラがある。君はもっと俺に遠慮せずに自由に過ごしていいんだ」
    「ガラムマサラな?いや、料理は趣味みたいなもんだし…。たまに私物は買ってるぜ?無添加の…野菜とか…」
    「それも結局俺の健康も良くなるじゃないか!」
    「それいい事じゃねぇか」

    駄目だ…。あくまでキバナはやはりダンデに対して気を遣わせる事を好まないらしい。ダンデはとうとう最後に取っておいた核心の切り札を出した。

    「…それにきみは…あんまり俺に触れられるのが好きじゃないだろ?」
    「え、」

    このダンデの言葉には、キバナはまさかバレていたとは思わなかったのか、酷く驚いた様子を見せた。慌てた様にぴょこ、と揺れた耳が可愛くて触ってみたいがダンデはぐっと堪えて尚のこと追求した。

    「知ってるんだぜ。キバナ。これでも君が子うさぎの頃は俺に対してべったりだった事を。俺は網膜に焼き付けてるからな。なのにその姿になってからの君はまるで俺を避けている」
    「………べ、つに…」
    「嘘だ!現に今目を逸らしてるじゃないか…!」
    「逸らして無いぜ!」

    さあ、包み隠さず本音を言いなさい!と、言わんばかりに詰め寄る育ての親で一応主人の男に、キバナは少し迷ったように目をうろつかせると、観念した様子で一つため息をついて話し始めた。心做しか垂れた耳も更にへにょ…と少し下がっている。

    「…いや、だって…。考えてみろよ?子うさぎの頃ならいざ知らず、今のキバナはお前よりデカい人間の見た目したオスだぜ?こんなの触って何が楽しいんだよ…」
    「俺は楽しい!!触りたい…!」
    「えぇ……」

    というか人間の姿になってから余り触れ合えてなくてそろそろ寂しさで死ぬのは俺の方…と鬼気迫る勢いで言うダンデに、キバナは「わかった…わかったから」とどうにか納得した様子で観念したようだった。

    「…そこまで言うなら、お前の好きに俺さまを触りなよ」
    「…!ほんとか!い、今からでも!?」
    「おー…、まあ別に構わないぜ」
    「なんて事だ!嬉しい!ありがとうキバナ!」

    ぎゅっ!と勢いよく抱きついてきた飼い主に、うおっと驚きの声を上げつつも体幹の良さで受け止めたキバナは、心底嬉しいと、これではどちらが飼い主でペットなのか分からないほど喜ぶダンデの顔を見て気恥ずかしくて言えなかった本音を少しこぼした。

    「別に、キバナも、お前に触られるのが嫌だった訳じゃないよ…」
    「…えっ、」

    ガバッとキバナの肩口に寄せていた顔を起こしてこちらをガン見してくるダンデの眼圧には少しビビるが、キバナは負けじと視線をそらさずに少し熱いと感じる頬をそのままに、何だよ、と剣呑な目つきで促した。

    「俺は、ずっと…君に嫌われてるんじゃないかと…」
    「はぁ…?なんでさ」
    「だって君、俺に全然もふもふさせてくれないし…」
    「もふもふ…」
    「話しかけても必要以上反応もしないし、俺が話す度に耳をぴょぴょこ動かしてるし鬱陶しがられ警戒されてるのかと…」
    「ぴょこぴょこ…」

    うぐぐ…と唸るダンデのオノマトペを反芻したキバナは、ダンデが耳の動きに言及した言葉を改めて理解した途端、不思議そうな顔をしているダンデを他所に、ぼんっ、と自らの頬が羞恥心で火照るのを強く感じて慌ててダンデから距離をとろうとした。だが、現状はそれを許すわけも無いダンデの腕に囚われてろくに撤退もできやしない。

    「なんだ、キバナ、まだ何か俺に対して隠してるのか…!?」
    「っ、…!別に…!それより離してくれよ」
    「キバナが話したらな!さぁ!遠慮しなくて良い!俺に何か不満があるなら言ってくれ!無言で足ダンされる方が俺は嫌だ!」
    「あーもう、!わかった、分かってるから…」

    何だよこの羞恥プレイは…と、恨めしげにダンデを見てもウサギ心飼い主知らずか、依然としてキラキラと輝く目の前のダンデの瞳に見つめられたキバナは彼には珍しく少し歯切れ悪く話した。

    「俺が…キバナが、耳を動かしてるのは…ダンデの話をちゃんと聞きたいからで…、ダンデにも、もふもふれるのが嫌なのは…ドキドキして恥ずかしいから…っていうか……」

    キバナとてもう立派なオスウサギなのである。だから、子供の頃のように無邪気にダンデの足元をぴょんぴょん跳ねていたあの頃とは違うわけで…。というか、今更こんな複雑な心境の自己申告を強要してくるな察しろよ!とぐるぐると回る気持ちで話した、キバナはふと、つい表情を見るのを躊躇っていたダンデがあまりに静かな事に気がついて、恐る恐る彼の顔を見た瞬間、そこには驚愕過ぎて死ぬのでは?というほど目を開いてフリーズしているダンデが居た。え、これ、この人、生きてる…?


    「ダンデ…?」
    「…………キバナ…。君をめちゃくちゃにぎゅっーて抱きしめていいか…?」
    「はっ!?なんでだよ!てかもうしてるし!ぐえっ!」
    「何でもだ!いや、無理だろ!可愛いな!?何だそれは君!ズルすぎるぜ?!」

    うちの子が可愛い過ぎて感情の容量が限界を越えた…とナレーションが聞こえてくるレベルで、ダンデはキバナのいじらしいとも、可愛いとも言える悩みを知って脳が理解をするのに暫し時間がかかったのだ。
    そんなフリーズをしたかと思えば、感極まって再度抱きしめてくるダンデの奇行テンションに思わず引くキバナのウサギ心は再度飼い主知らず、ぎゅぎゅっと抱きしめられたキバナはそれでも拒むことはせずに、素直に抱き枕に徹した。

    「お前今日本当にテンションどうしたよ…。ちょっ、締まるしまるって…!ひっ、ちょ!GOした途端めっちゃ自由だなお前!」
    「…耳…耳一生触れる…」
    「そんなにかよ…」

    ふにふに、と柔らかな耳を触ってくるダンデの触り方はキバナがまだ彼の手のひらサイズ程しかなかった子ウサギの頃と変わらない思いやりを持った優しさで、それを享受している側のこちらとしてはムズムズとしてとてつもなく気恥ずかしい。だが、けっしてそれが嫌かと言うと嫌でないのも事実で。

    「ま、まぁ…ダンデが触りたいのなら、今後もこのキバナ様は快く許可してやるよ…」
    「ほんとか!」
    「ああ。別に構わないぜ」

    ふい、と視線を逸らすキバナは未だ余り表立った喜色の感情を晒すのはやはり恥ずかしいのかダンデには見せないが、何よりもそれ以上にダンデの声に反応して動く耳が雄弁でダンデは緩む口元を何とか堪えた。
    だがそんなダンデの飼い主としての忍耐など知らぬキバナは、人間の姿になってから初めてダンデの方へ擦り寄るとぽすん、と固まるダンデの胸元に額をぐりぐり押し付けた。

    「むしろ……俺さまだって嬉しいと言うか…」

    供給…突然の供給過多だぜ…と脳内で己が叫び散らかす声も遠くに、何とか意識を保ったダンデは、ダンデに甘えてくれていた子うさぎの頃と同じくぐりぐりと頭を撫でて欲しい時にするキバナの仕草に、感極まりつつゆっくりと柔らかな黒髪と耳の生えた生え際をなぞるように触れた。なんだこれは夢か?かっ…かわいいがすぎる…。

    「なぁダンデ…」
    「なっ、…なんだキバナ!」

    じっと、伏せていた顔をダンデの視界に入る形で上げたキバナにびっくりして過剰反応したダンデだが、キバナはそんなドギマギとしたダンデの反応なんて知らず、綺麗なアイスブルーをやわらげた。

    「…ダンデといるとキバナは幸せなんだぜ?」

    そう言って、照れた様子でへにょっと垂れた耳をダンデの肩口に乗せて目を和らげて笑うキバナの笑みに、ダンデのキバナへの愛しさメーターが振り切れてぶっ壊れたのは言うまでもなかった。


    次の日、やたらとニコニコした笑顔のダンデが、後輩に「やっぱり先輩、恋人が出来ましたよね?」と再度追求されるのは別の話。
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    mort*

    DONEキバナ君に嫌われてるのでは…と悩むリーマンダンデ君と、素直になるのが恥ずかしい大人なりたてほやほやキバナ君のdnkb
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    「ダンデさん、最近恋人が出来たってほんとですか?」

    思わぬ後輩からの質問に、ぱちくり、と瞬きを返すこと数秒。ダンデは数秒置いて口を開いてかぶりつこうとしていたサンドイッチに、ようやく噛み付いてシャクリ、と無駄に大きな音を立ててもぐついた。

    「…その話は誰から聞いたんだ?」
    「いや、別に誰かが言ってた訳じゃないですけど。社内でもっぱら噂ですよ。あれだけ帰れと言われても帰らなかったダンデさんが、ここの所定時で上がってるわ、挙句の果てに万年コンビニ飯だったのに急に手作りのランチボックス持ってきてたらそりゃ話題になるでしょ」
    「なるほど…」

    目を輝かせて好奇心を隠さずにダンデの返答を期待して見てくる後輩の青年からの追求に、ダンデは少し考えてから口を再度開いた。

    「半分当たって…半分不正解ってところだな」

    我ながら何とも判然としない微妙な返答だ。当然、目の前で好奇心を持って真実を追求したがる若者を納得させる理由になる筈も無く、後輩は更にダンデの言葉へと食いつきを見せた。

    「え?と言いますと?勿体ぶらずに教えてくださいよ〜」
    「…そんなに気になるか…?」
    「当 7911

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