「$&&くん」
その二つ名は本名であるはずなのに、十何年経っても聞き慣れない。顔を上げると女が一人立っていた。クラスメイトだった気がするが、それは少し離れた場所にあと二人立っていたためようやく思い出せた。
会う約束をしているペンギンやシャチを、彼等が勤める病院の近くの広場で待っていた。目の前には噴水があって、その周りを円をかいて木々が植えてありベンチが置かれている。メインストリートからほど近いこの場所は、人々が行き交い笑い合っていた。そのうちの三人がこちらを見ている事にも気づいていたが、本に集中しているふりをして無視していた。話し掛けてほしくなかったから顔も上げなかったのに、と内心ごちる。
「$&&くん、聞きたいことがあるの」
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