答えは一つしかない俺には目に入れても痛くないほどに可愛い歳下の子供がいる。
名前はトラファルガー・ローと言ってローと初めて出会ったのは団地近くの公園だった。
ソイツはまるではじめから俺を知ってるかのように「くらしゃん!」と可愛いヨチヨチ歩きで突っ込んできた、コラソンは俺のミドルネームみたいなもので、名前を呼ばれた時はなんで知ってるんだ?とは思ったけどキラキラした可愛い表情で俺を見るローがスゲェ可愛いくてデレデレしながらその小さな体を抱き上げてやったんだ。
それからすぐにローの両親が迎えに来てローがギャン泣きして離れることを嫌がるものだから俺はローを抱っこしながらローの両親と一緒に新居に招かれることになった。
ローの家が俺の住んでる自宅から近いことが分かり、ローが懐いてることもあってロー一家とは家族ぐるみで付き合うことになった。
まだ幼いローは両親よりも俺にベッタリだ
ローは俺にぎゅっと抱きつきながら口癖のように「くらしゃん、すきぃ」と愛を伝える。
たぶんローの好きは親愛の類の好きだ、それでも可愛いローからの拙い愛の言葉は嬉しいもので俺はローの告白にニコニコ笑って「俺も好きだぞ」といつも必ず返事を返していた。
「くらしゃん、すき」
「俺も好きだぞ〜」
「くらしゃん、あいちてる」
「俺も愛してるぜ、ロー」
「こらしゃん、おれとつきあって」
「ん〜?いいぞぉ〜」
…と軽く返事をしたのが運の尽き。
ローが成長して中学生になっても、彼女の話を全く聞かなくて、ローの親友のシャチ君ペンギン君からはいかに学校でローがモテているのか、嫉妬混じりの話をよく聞かされてはいた。
ローがいつものように俺の自室で寛ぎ本を読んでいる時に何となく「ローお前、彼女とかいないのか?」と聞けば、ローが俺の方を振り返って心底不思議そうな表情で言うのだ
「コラさんソレ冗談で言ってんのか?
コラさんっつー恋人いんのに
他に女作るわけねェだろ?」
「⁉︎」
「コラさん以外いらねぇし、興味もねぇし」
笑えない冗談言うなよな、そう言ってローは再び手元にある本に目線を戻した。
俺はというと、絶句していた。
そして頭の中で走馬灯のように
幼いローの言葉が蘇る
ーくらしゃん、すきぃ
ーこらしゃん、おれとつきあって
「〜っ⁉︎え?はぁ⁉︎うう嘘だろぉお⁉︎」
アレ、マジの告白だったのか⁉︎
「…コラさん」
驚愕、困惑様々な感情が爆発して動けないでいる俺の前には舌足らずにくらしゃん!と呼んでいた幼いローはいない。
スラリと伸びた背に癖のある黒髪、鼻筋の通ったイケメンと呼ばれる類の男に成長したローは海賊のような悪人顔で笑っていた
「コラさん俺の子供とか子孫とか
くだらねェこと気にしてる?
なら心配はねェよ、子孫はラミにお願いしておいた。アイツも【記憶持ち】だったから
俺がコラさんに対する執着心高いの知ってる
イケメンと結婚して沢山子供作るってよ
本当に自慢の妹だよアイツは…」
「ら、ラミちゃん?」
「それでも彼女作れって言うなら…
そうだなぁ…10人」
「じゅうにん?」
「コラさんが納得するまで
俺に告白してくる女10人と付き合って
10人全員一週間で別れる」
「はぁぁ⁉︎えっ、ちょっと待てロー‼︎
それただのクズ野郎じゃねぇかッッ⁉︎」
「キスもセックスもしねぇよ」
「そぉおいう問題じゃねぇぇえ!」
付き合うってそういうことじゃねぇよ⁉︎
コイツの倫理観ってどうなってんだ⁉︎
彼女と付き合ってやるよ、それは良い
10人付き合って一週間で別れる?
ハイ‼︎意味がわかりません‼︎
薄々気付いてはいたが、コイツ自分がモテると自覚している。普通の男は10人の女と付き合えるとか堂々と言わねぇし、別れる前提で付き合うとかも言わない。
「ろぉ〜、俺、お前が…可愛いローが
そんなクズになるの見たくねぇよぉ〜っ」
「ははっ、泣いてるコラさん可愛い」
「可愛いとか、そういうのはこんな大男に向けて言う事じゃねぇんだって…‼︎」
「?コラさん以外に言うつもりなんてねぇよ」
「…」
ボロボロと泣く俺の目元にローは笑って口づけを落とす。それからちゅちゅっと顔中にキスの雨を降らすんだ。
これはドジって転んでよく泣いていた俺に小さいローがよくする癖だと思っていたけど、違ったようだ。
後ろのベッドに押し倒されながら俺は恐ろしい考えに行き着いた…
俺がローと付き合わないと沢山の女の子たちがローに傷つけられて、ローを忘れることが出来なくて次の恋にも進めなくなるって事なのか⁇
えっ、待ってなんで俺はそんな全国の女の子たちの恋を死守しなければいけない存在になっているんだ⁇⁇
コイツがイケメンに成長しなきゃこんなことにならなかったのか⁇
もう分からない、俺はどうすればって…いや、もう答えは一つしかねぇんだよなぁぁ…
「ロー…」
「ん?」
「愛してる」
「…くくっ、ようやく認めたな、コラさん」
「うん。だってお前、俺以外愛すつもりねぇんだろ?俺がお前からの愛を受け取らなかったら、ローの愛はどこにも行けないで寂しい思いをする…っそんなの俺が耐えられねぇよ」
「コラさん…」
「なんでかなぁ、俺はお前と初めて出会ったときからさぁ…ひとりぼっちにさせたくねぇって思ったんだ。ローから好きって言われた時もスゲェ嬉し…」
「っアンタもう黙れ…‼︎
こっちが早い段階から外堀埋めてんのに
そうやって自覚無しで俺が欲しいもん全部与えてくれんの、マジでズリィんだよ!」
「?」
悔しそうに歯を食いしばるローを抱き寄せて頭をポンポン撫でてやれば、ローはため息を一つ吐いて「覚えてろよ、コラさん」と言って昔みたいに俺の体にぎゅっと抱きついた。
言い忘れていたが俺が今まで女の子と付き合わなかったのはローより可愛いと思う女の子がいなかったからだ。
コレ言ったら絶対ローは拗ねちゃうから
俺とラミちゃんだけの秘密…