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    nekomata002

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    nekomata002

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    🐈ワース長くなりそう
    まだまだ続くのでちょいあげ

    「おい聞いたか?ランス・クラウンの妹が飼ってるあの猫、【チョコ】がまた中等部の3年生を床に沈めたらしいぜ?」

    「私も聞いた!2年の先輩が突然風に飛ばされたって!生徒だけじゃなくて教師にも攻撃してるんだって!怖いよね〜」

    「猫が魔法使ってるんじゃないかって言われてるらしいけど、猫って魔法使えるの?」

    「ケッ、くだらねぇー。
    どうせ神覚者のお偉いお兄さまが可愛い可愛い妹に持たせた使い魔なんだろ?
    いいよなぁあ〜神覚者の兄妹ってだけで使い魔が」

    「にゃ″」( んなわけねーだろ、クソが)

    「えッッ⁉︎うわぁアァアァアっっ」

    たまたま聞こえてきたありえねぇ会話に俺はアンナのフードから顔を出してにゃんと一声、魔法を唱えて男子生徒の足元の床に穴を開ける。
    まだ中坊のテメェらが知らねー消失魔法だよバァカ。
    床が抜けて生徒たちはそのまま下の階に落ちていく、アンナが「私を守ってくれるのは嬉しいけど、人を傷つけちゃダメだよ?」と何度もしつこく言うので、癪だが落下地点に柔らかい泥を用意しておいた。
    ほんっとーに癪だがな!

    「コラ!チョコちゃん関係ない人に魔法使ったらダメだよ」

    「…ナ〜」

    …怪我はさせてねぇもん。

    「あ!今、怪我させてないからいいだろ?とか思ったでしょー!チョコちゃんが私のこと守ってくれるのは嬉しいけど、それでチョコちゃんが悪口言われるの、アンナが嫌なんだよ…」

    「…」

    心読むなよ。
    相変わらずお前は優しいな…

    優し過ぎンだよ

    アンナの説教がはじまる予感がして俺はすぐにフードの中に体を引っ込めて中で丸くなってあくびを一つした。
    俺がアンナの使い魔だぁ?
    優しいアンナがテメェらの悪行をランスに報告してねぇんだから使い魔なんて持たせるわけねぇし、ランスなら使い魔なんて使わねぇで直接グラビってるっつーの!

    あの日、アンナと出会った俺はアンナのフードに入ったまま、かつての学舎であるイーストン魔法学校に猫として戻ってきた。
    歩きながらアンナが森に来るまでの経由を話してくれたが、やはりアンナはクラスで虐めを受けていた。どうやらクラスの中心的な人物(どっかの名家の坊ちゃん)がランスに個人な強い恨みを持っているとかで、生徒を金で賠償、担任の先生も両親から圧力をかけるという徹底ぶり、寮部屋で同室となった生徒はアンナが話かける前に「先生から頼まれて同室になっただけだから、気安く話しかけてこないでね、巻き込まれたくないし」と開口一番に突き放されたらしい。
    森に来た日も魔法薬学の授業に行くために
    机の中の教科書を取り出したら、アンナが手に持った瞬間に教科書がバラバラにアンナの手の中で破れたらしい。
    クラス中からクスクスと笑い声が聞こえて、唖然としながらアンナが隣を振り返るとニヤニヤとした表情の女子生徒が杖をアンナに向けて悪びれもせずにこう言った

    「ごっめーん、魔法の練習してたら間違えてアンナちゃんの教科書に当たっちゃったの
    ごめんねぇ?ワザとじゃないのよ?」

    「……リリアちゃんはワザとじゃないって言ってたけど…先生が前の授業であの魔法は絶対に人に向けちゃダメだって…だから、ワザとだってすぐにわかったの…っでも、バラバラになった教科書見てたら…っ今、までのこととか浮かんできちゃって…わたし、耐えられなくて…っもう何もかも嫌になって、教室を飛び出してきちゃったんだぁ…っ」

    「…」

    フードの中でアンナの話を聞きながら、俺は想像以上に酷いアンナの現状に泣きそうになった。
    お前、なんでそんな状態なのに…兄貴に助けを求めないんだよ。
    これはもう虐めの域を超えてる。

    「…教室に戻るの、怖いな…」

    涙混じりに言ったアンナの震える言葉に俺はフードから出てアンナの肩に飛び乗った。
    これからは俺が側にいるから大丈夫だと、アンナの髪にスリスリと頭を擦り付けて、肉球でアンナの涙をテシテシと拭ってやる。

    「ふふっ、くすぐったいよぉ」

    「なーん」

    ランスが言っていた、妹の笑顔は尊いと
    見ているだけで元気が貰える、頑張ることができるって…すげぇ幸せそうな柔らかい笑顔を浮かべながらアイツは語っていたんだ。
    だからさぁ、お前は笑ってなきゃダメなんだよ。
    価値の無い俺なんかと違ってランスの生きる希望なんだよ、お前は価値のある存在なんだよ。

    「出たらダメだよ?先生に怒られちゃう」

    「にゃ〜」

    お前の笑顔を奪う奴らはランスの代わりに俺が泥の中に沈めてやる。
    お前はもう涙なんか流さなくていいンだよ
    ずっとランスと…

    兄貴と一緒に笑ってろよ

    「…猫ちゃん…ありがと。
    本当は1人で戻るの…っこわか、たから…
    猫ちゃんがいるだけで、心強いよ」

    「…」

    たどり着いた教室の扉の前、アンナは深く息を吸って扉を開けた。
    扉を開けると同時に俺は猫になってから使っていない、固有魔法の呪文を唱える


    「にゃ″ぁあ」( マッドロス)




    ◾️


    「フィン先生お久しぶりです!」

    「アンナちゃん!久しぶりだね、元気にしてた?」

    「うん!最近はチョコちゃんのおかげで毎日楽しいよ!」

    「チョコちゃん…?」

    「うん、チョコちゃん!わたしの新しいお友だちなの!ほら、チョコちゃんフィン先生に挨拶して?」

    「にゃ?にゃ〜」
    (あ?なんだよ、レインの弟か)

    アンナのクラスメイト全員と教師を泥に沈めてから一週間後、俺はアンナが学校でできた唯一の友達とやらに会いに来た…というか、連れてこられた。どんな奴かと思えば、まさかのフィン・エイムズだった。
    卒業後にフィンはイーストン魔法学校の保険室の先生になっていたらしい。
    猫になってからずっと森で過ごしていたから
    ランスや兄の現状、アビスやアベル様シュエン、後輩たちの情報は一切入って来なかった。
    まさか劣等生と言われていたフィンが先生になってるとは…まぁ、予想外ではない。
    むしろ勉強を見てる時に進路に迷っているフィンに、観察眼が鋭くて弱者の気持ちに寄り添えるお前なら先生に向いてるんじゃないか?と言った記憶があるからだ。

    「あのねチョコちゃん。チョコちゃん飼うの許して貰えたのはフィン先生のおかげなんだよ?」

    「にゃーん」(へぇ、そうなのか)

    「僕のおかげって…その、アンナちゃんの虐めってかなり露骨だったのに誰も先生も助けてくれなかったから、僕も魔法局と掛け持ちしてるから毎日学校にいるわけじゃない
    どうせ権力とか親とかに板挟みになって動けないなら猫1匹飼うくらい許してもいいんじゃないかなって言っただけだよ?
    少しでもアンナちゃんの傷を癒せればいいなって、だから僕もそのアンナちゃんの猫が強いなんて思ってなかったから、偶然みたいなものだよ」

    「でも、フィン先生が味方してくれたから
    わたしは今もチョコちゃんと一緒に居られるんだよ?本当にフィン先生ありがとうございます!」

    「にゃ」(ありがとな)

    「…」

    「?…フィン先生?」

    「…ッアいや、ごめん…なんか、なんでだろな…チョコちゃん見てると、なんか懐かしいなって…おかしいよね、チョコちゃんとは初めて会うのに…っごめん、上手く説明できないんだ」

    「懐かしい?もしかしてフィン先生もチョコちゃんと森であった?」

    「…そう、なのかなぁ」

    「…」

    フィンは椅子から立ち上がるとアンナに抱っこされてる俺に近づき、目線が合うように片膝を立てて背を屈めた。
    フィンが頭に触れようとするとアンナがすかさず「チョコちゃんはわたし以外は頭触られるの苦手なんです」と言うとフィンは頭を撫でようとした手を止めて、頬に優しく手を伸ばして揉むように頬と髭を親指を使って撫でる。
    優しい手つきに眠くなる、ウトウトしながら薄目を開けてフィンを見ればフィンは今にも泣きそうな表情で俺を見ていた。
    唖然としながらアンナと一緒に言葉もなくフィンを見ていると、フィンの瞳からはボロボロと涙が溢れ出し俺もアンナも突然のことに驚いた。

    「っごめん…ごめん、アンナちゃん
    いきなり泣いて…っびっくりしたよね…っ」

    「う、ううん…わたしは大丈夫。
    フィン先生の方が辛そうだよ?大丈夫?」

    フィンはアンナに取り繕った笑顔を向けると俺のもふもふの毛を撫でながら話しを続けた。

    「…チョコちゃんの、毛がね…懐かしいなって
    あの人も、こんな髪型してたなぁって…サングラスでよく見えなかったけど、こんな目の色してたなぁって…
    凄く不器用な人で、でも優しい人で…意外と世話焼きで…僕やマッシュくんが進学できたのはその人がテストギリギリまで勉強を教えてくれたからなんだ。
    僕が先生になれたのだって…っ全部先輩のおかげなんだ…っだから、居なくなるなんて、思ってなかった…
    一回でいいから、マッシュくんと一緒に、髪、触ってみたかったなって…っ」

    「……」

    「あの、その懐かしい人って言うのは」

    …たぶん俺のことだ。
    アビスの行ったシュークリームパーチーにはコイツも必ずいたから、たぶん俺の失踪に気づくとしたら同室のアビスだ。
    アビス経由でフィンたちにも俺が行方をくらましたことは伝わってるのだと容易に想像がつく…
    アビスには悪いことしちまったなぁ…

    「…話すと長くなるんだけど…
    アンナちゃんはこの後なにか予定はある?」

    「もう授業も終わったので夕食の時間まではとくに何も…」

    「そっか、じゃあ美味しいハーブティーがあるから、それ飲みながら話そうか」

    「は、はい!」

    フィンは立ち上がりアンナの頭を優しく撫でると薬草の入った瓶が並ぶ棚の上からハーブティーの入った袋を取り出し魔法でポットに水を入れてお湯を沸かす。
    あの劣等生時代とは比べ物にならない
    魔法の使い方も上手く手際がいい、フィンの一連の動きにアンナと一緒につい見入ってしまった。
    ガラスカップにハーブティーを注ぐと室内に甘く柔らかい香りが漂った。
    たぶんこのハーブティーの提供者はあの赤髪だろうな、俺も何度か勉強のお礼にとドットから香りのいいハーブティーを貰っていたから匂いで美味いハーブティーだとわかる。
    チョコちゃんはフルーツジュースだねと言ってフィンはハーブティーの入ったカップの隣、透明な入れ物にジュースを注いだ。
    アンナがハーブティーを一口、俺がりんご味のジュースをひとなめしたところでフィンが真剣な表情で話はじめた


    「あの日、僕たちは3年生の先輩達のために最後のシュークリームパーチーをしていたんだ…」






    ▫️


    「すみません、やっぱりワースも連れてきていいですか?」

    3年生の先輩たちとの最後のシュークリームパーチーでアビス先輩は申し訳なさそうにそう言った。
    ワース先輩はシュークリームパーチーに一度も参加したことがない、アビス先輩から「ワースは素直じゃないだけなんですよ、本当はマッシュくんたちのこと好きだと思います」って言っていたけど、僕たちも勉強会を通してワース先輩が本当は優しくて世話焼きなところを知っていたから、僕とマッシュくんはワース先輩の参加を大歓迎した。
    それにワース先輩が参加しないのにシュークリームパーチーには必ずフルーツポンチが並んでいるんだ、もちろん作ってるのはランスくんだから味は文句なしに美味い。
    アビス先輩の背を見送りながら、ようやくワース先輩にフルーツポンチを食べてもらえるね!なんてマッシュくんと一緒喜んでいた。
    僕たちは悪態つきながらもアビス先輩に手を引かれながらこの会場にやってくるんだろうなって思っていたんだ…


    「っ大変ですっ‼︎っワースが、ワースが…ッ」

    「アビス先輩⁉︎どうしたんですかっ⁉︎
    顔色が…」

    「…アビスくん、ワース先輩は?」

    会場に戻ってきたアビス先輩の顔色は真っ青で僕がすぐに駆け寄り固有魔法を発動しようとしたら「落ち着けフィン、怪我をしてるわけじゃない」とランスくんに肩を叩かれ止められた。気づいたら他のメンバーも食事を止めてアビス先輩を見ているし、アベル先輩はアビス先輩の肩に手を置いてる。
    七魔牙は先輩を囲むようにして心配そうな表情で見ていた。



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