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    nekomata002

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    nekomata002

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    チョッパー+ヒルルク+ローの義親パロ
    思いつきネタなので時間軸とか気にしてないで好きに書いてます‼︎ 
    感想頂けると嬉しいです〜!

    季節外れのトナカイからのプレゼントこの人生はきっと何気ない会話から始まったのだと思う。


    「へぇ…トニー屋の恩人は面白いこと考えるな、そんなぶっ飛んだ発想は俺には浮かばねェよ」

    「そうなんだ!ドクターは凄い医者なんだ!あの時はおれ、医者を目指してなかったから気づかなかったけど…今ならドクターが凄いことしてるって分かるんだ!」

    ドレスローザに向かう最中、俺とトニー屋は分野が近いこともあってかよく話をしていた。トニー屋はトナカイだが医療の腕は病院を一つ持てるほどあるし、薬草の知識に関しては悔しいが俺より上だ。
    まぁ、外科と内科だから互いに知識の差があるのは仕方ないことだが…
    トニー屋の話には医術、薬草と同じくらい
    【ヒルルク】という男の話が出てくる。
    トニー屋の命の恩人かつ父親のような存在で
    サクラ島(現在はサクラ王国)ではヤブ医者と呼ばれていたらしいが、トニー屋の話を聞く限り現代の医療が出来ないこと、やろうともしなかったことに着目している面白い男だと思った。
    トニー屋がヒルルクと過ごした日々はツッコミ所満載で何回か笑ってしまいそうになるエピソードばかりだったから聞いてて飽きることはなかった。

    「ドクターが生きていたらトラ男に会わせてやりたかったなぁ〜。ドクターならきっとトラ男のこと気に入ってくれるよ!」

    「そいつは光栄だな。俺もヤブ医者屋が生きていたら一度会って医療の話をしてみてェ」

    「エッエッエ‼︎トラ男とドクターならきっとなんでも治せる薬作れそうだな!」

    「ヤブ医者屋と俺だけじゃ無理だ
    薬草学に関しちゃトニー屋が一番だからな」 

    「え⁉︎お、おれもいていいのか⁉︎」

    「あぁ」

    「え?えへへ〜エッエッエ」

    「…前から思っていたが、その変な笑い方はなんだ?」

    「ドクターの笑い方だよ!」

    トニー屋のたまに聞こえる悪役のような笑い方は正直可愛いらしい見た目と合わないのでやめてほしいのだが、大好きな恩人の笑いだと胸を張って言われては「…そうか」としか返せない。

    「ドクターが生きてたらなぁ〜
    おれとトラ男とドクター一緒にいたら
    毎日楽しいのになぁ〜」

    足の間の座って薬草学の本を読んでいた
    トニー屋が体に比例して少し大きめの頭をぽすんっと俺の腹に押し付ける。

    「ふっ…来世に期待だな」

    「来世?」

    読んでいた医学書を閉じて頭を撫でながら言えば、足の間に座っていたトニー屋がキョトンとした表情を俺を見上げる。

    「来世ってなんだ?」

    「なんだ知らねェのか?」

    「うん」

    「…来世というのは死んだ後に生まれ変わって迎える新しい人生のことだ。
輪廻転生とも言われている。
    昔から人は死んだら生まれ変わるという考えがあるんだ」 

    「死んだら生まれ変わる」

    「あぁ、リセットとも言うな。
    だからトニー屋の新しい人生は俺と兄弟かもしれねェし、お前の大好きなヤブ医者屋と本当の家族かもしれない」

    「え⁉︎ドクターと本当の家族になれるのか⁉︎」

    「さぁな…それは死んでみねぇと分からない人生だし、まず生まれ変わった時点で前の記憶はねェ」

    「えぇ⁉︎前の記憶がなかったら
    ドクターともトラ男とも会えないじゃないか⁉︎そんなのっ、寂しいよ!イヤだよ!」

    「落ち着けトニー屋」

    「っあ、ごめん…」

    「…あぁ、記憶を持ったままか…
    生まれ変わりでも、ごく稀に前の記憶を持ったまま生まれ変わる人間もいるらしいな」

    「記憶を持ったままの生まれ変わり⁉︎
    おれ、絶対ソレになりたい‼︎」

    「なれる可能性は低いぞ?」

    俺の言葉にトニー屋が俯く。
    「どうした?」と声をかければトニー屋がぐるんっと一回転して俺に向き直った。

    「おれ記憶を代償にドクターとトラ男と家族になれなくてもいいよ!
    だっておれがドクターとトラ男覚えていたら、2人を探すことが出来るから!」

    「‼︎」

    「だから、もしトラ男が生まれ変わって
    辛かったり、虐められたり、酷い場所にいたらおれ、ドクターと一緒に必ず迎えに行くよ!おれ、トラ男大好きだから!」

    「…トニー屋……そうだな
    お前とヤブ医者屋と家族なら
    俺も退屈しないで済みそうだ」

    この大海賊時代はいつか必ず終わる。
    もし、この大海賊時代の記憶を持ったまま生まれ変わったら新しい時代は退屈に決まっている。それならトニー屋とヤブ医者屋と家族ってのも面白い…

    そう思って口にした軽い言葉だった…




    ◾️



    「なんだいその目は?
    アンタまた私を睨んだね」

    「睨んでねーし、何もしてねぇよ」

    「その目が生意気なんだよ!」

    「痛っ‼︎」

    俺の新しい人生は前のフレバンスよりはマシかもしれないが、漫画でよく見るような世に言う【可哀想な人生】だった。
    娼婦と客の間に産まれた子供、父親は既婚者で子育てのための金を振り込むだけ。母親はその金を俺には使わずに男と遊び歩き、飯もロクに食えない俺は餓死寸前の状態で警察に保護された。
    そして、この劣悪な環境の養護施設に送られたわけだが、とにかくこの施設は体罰が酷い。俺なんか目が合っただけで目付きが悪い、睨みつけただのよく分からない理由で毎日殴られた。
    これが普通の子供なら耐えられなかっただろう。しかし、俺は記憶持ちの子供だった。
    大海賊時代に戦った海賊、悪魔の実能力者、海軍、ドフラミンゴ、ビックマム、黒ひげたちと比べたら一般市民の暴力なんぞ痛いとすら思わない。
    まぁ、それが態度に出てしまっていたのか
    施設内で一番職員に目をつけられ暴力を振るわれるのは俺だった。

    「痛っ…クソババァめ、思いっきり殴りやがって…」

    俺は黒色のパーカーをいつも着ているが
    服を少しでも捲れば腕や腹に虐待の跡が見えることだろう。
    昨日もベルトで思いっきり裸の背中を叩かれた。
    クソが、オペオペの実能力があればアイツを真っ先にバラバラにしてやる…と心の中で悪態をついて1人になった小部屋で本を読んでいると過去の、いや…前世のトニー屋との会話をイヤでも思い出してしまう。

    【もしトラ男が生まれ変わって
    辛かったり、虐められたり、酷い場所にいたらおれ、ドクターと一緒に必ず迎えに行くよ!おれ、トラ男大好きだから!】

    「…トニー屋、お前いつ迎えに来るんだよ」

    まさか自分が確率の低い記憶を持ちだと思わなかった。トニー屋は記憶持ちがいいと言っていたが、前の記憶を持ったままだと精神年齢が実年齢との間で喧嘩を起こし、泣きたい時に泣けない、いい歳した大人が…と10歳にして我儘と遠慮を覚えている可笑しな子供になってしまう。

    だから母親も可愛くないと言っていた。
    暴力を振るう奴らも子供ならもっと泣け!と言って更に暴力を振るう。

    記憶持っているからかつての仲間やコラさんが恋しくなって会いたくなる。
    記憶持ちは自分と同じように覚えている人間がいない限り何もいいことはないのだ。
    ベルトで打たれた背中が痛くてそろそろ横になろうと思った時、部屋の扉がノックされて返事をするより先に開かれた。

    「ロー、お前を養子にしたいと言う物好きが現れたぞ」

    部屋に入ってきたのはこの施設の所長だ
    肥満体系で顔から常に大量の脂汗が出て
    体臭が油臭い不潔な男。

    「俺を養子に…?」

    生意気で目付きが悪いからお前を欲しがるやつなんて居ないと口煩く言われてきた。
    俺を養子にしたいと言った夫婦には俺は施設の問題児で暴れて手がつけられない、動物を殺すなどある事ない耳打ちしては俺の里親候補を切り落としてきたのに…
    どうやら今回の里親はその攻撃が一切効かない相手だったらしい。
    珍しいこともあるもんだ、唖然としながら考えていると分厚くぬるぬるした指が痛いくらいに腕を掴み部屋から引きづり出した。

    「お前の体は見られると面倒だ
    いいかロー。お前が断るんだぞ?
    私は何も言わない、お前がここに居たいと言うんだ!」

    「…わかってるよ」

    だったら体罰しなきゃいいのに…
    俺だって新しい家族が欲しい
    こんなとこ早く出て行きたいよ…





    「お待たせしましたぁ〜
    ほら、ロー挨拶しないさぁい」

    「…ローです、はじめまして」


    「おー!キミが【トラ男】くんか‼︎」

    部屋に入った瞬間に聞こえたのは知らない男の声で、大変不名誉で馴染みのある呼び名に俯いていた顔を上げるとそこには藁を紐で縛ったやつを十字にクロスしたような…とにかく変わった髪型をした黒髪の白衣を着た男が両手を広げて俺との出会いに歓喜していた。

    「は?」

    「えっ…とらお、って」

    「俺の息子から話は聞いてる!
    キミはとても優秀な医者だってな!
    いやぁ〜会いたかったぞぉ!トラ男くん!」

    「息子って…っ痛‼︎ちょっ、いきなり抱きしめんなッッ‼︎」

    俺の里親候補、いや変なおっさんは満面の笑顔で俺を力一杯抱きしめた。
    煩いし、体は痛いしで最悪だったのにおっさんの体から香る薬品や消毒液の馴染みのある匂いに強張る体から自然と力が抜けた。
    抱きしめて、何かに気づいたのかさっきまでの笑顔が嘘のようにおっさんは険しい表情で俺のパーカーの袖を捲る。
    腕には打たれてドス黒い紫色に変色した体罰の跡がくっきり残っている。

    「…ッ」

    わかりやすいくらいにおっさんの表情は怒りに満ちた。その表情に暴れるか、暴言を吐くのかと思ったがおっさんは「辛かったな」とニッコリ笑い頭を優しく撫でると持っていた鞄の中からピンクと緑の試験管を取り出し静かに言った…

    「…トラ男くん、今から俺はこの〇〇(危険薬品)」にこの〇〇(絶対混ぜちゃいけない危険薬品)を入れるぞ」

    「は、はぁぁあぁあ⁉︎その2つはゼッテェェ混ぜちゃいけねぇやつだろ⁉︎」

    何考えてんだアンタ⁉︎と怒鳴れば、おっさんは何故か凄く嬉しそうな表情で振り返る

    「おぉ!トラ男くんやっぱりこの薬品のこと知ってるのか⁉︎流石だなぁ‼︎」

    「その薬品を培養して作る医療薬品を知ってるからなっ!原液は危険だってのは知識で知ってる‼︎だから早くその危ないモン仕舞え!爆発すんぞ⁉︎」

    「え⁉︎爆発‼︎⁉︎」

    俺の爆発発言に所長が悲鳴を上げる。
    それを見たおっさんは「エッエッエ」と何処かで聞いた笑い声を上げて迷う素振りもなく〇〇の中に〇〇をぶち込んで所長に向けて投げた。


    「捕まってろよトラ男くんん‼︎‼︎」

    「なっっ⁉︎」

    おっさんは俺の体を米俵のように抱えると
    窓を突き破った。

    ここは3階だ、落ちたら確実にー

    「死ぬぅうぅうう〜ッッ‼︎⁉︎」

    「エッエッエ‼︎大丈夫だぞトラ男くん!」

    「何が大丈夫なんだよッッ⁉︎」

    「俺の息子が下で待機してるからなっ!


    お〜い‼︎チョパー‼︎‼︎
    トラ男くん回収したぞぉおぉお〜‼︎」

    「トニー屋⁉︎」



    「ドクター‼︎トラ男‼︎」

    「⁉︎」


    まだ変声期を迎える前の高い声に落下する先に目を落とすと、そこには二足歩行の見覚えのあるトナカイの姿があった。
    トニー屋はこれまた見慣れた黄色のボールを噛み砕き雪男のように巨大な化け物の姿になると落下してきた俺とおっさんを受け止め、次に毛のボール状態になって近くの車輪付きのソリの上に俺たちを優しく運んだ。

    「ットニー屋、なんで…」

    毛だまからトナカイの姿になりソリを引く
    トナカイに声をかける

    「なんでって…だって約束しただろ?
    もしトラ男が生まれ変わって辛かったり、虐められたり、酷い場所にいたらおれ、ドクターと一緒に必ず迎えに行くって‼︎」 

    「⁉︎」

    本当に迎えに来るなんて…思ってなかった…

    「トラ男あのな…おれ…
    人間に生まれ変われなかったんだ」

    「‼︎あ…」

    あの時代は喋るクマ、二足歩行のトナカイ
    電気を操る獣人…とにかく可笑しなこと変なことが当たり前の世界だった。
    だからすっかり忘れていたんだ、これは諸説あるらしいが…人間は人間にしか生まれ変われないように動物も動物にしか生まれ変われない。
    つまり悪魔の実でトナカイ人間になったトナカイも例に外れず、動物だった。

    「…悪いトニー屋…説明不足だった」

    「え?なんでトラ男が謝るんだ?
    あのな、トラ男!おれ記憶持って生まれ変われたんだ!産まれたばかりはトナカイだったけど…おれ記憶を頼りに悪魔の実を食べてドクターを探したんだ‼︎
    そしたらドクターもおれのこと
    覚えててくれたんだ!」

    「⁉︎じゃあ、この変なおっさんは
    トニー屋がよく話していたヤブ医者屋か⁉︎」

    「そうだよ!」

    トニー屋が元気良く返せば俺の後ろに座るヤブ医者屋が「誰がヤブ医者だ!」と抗議の言葉と同時に後頭部を軽く殴られた。
    ヤブ医者屋はソリに乗ってからずっとスマホで誰かと話している、詳しい会話は聞こえないが相手側が酷く怒っているのだけは分かる。
    ヤブ医者屋が電話向こうに謝っているのを尻目にトニー屋と会話を続ける。

    「よくココがわかったな」

    「ロビンが教えてくれたんだ!」

    「ニコ屋が?アイツも記憶持ちなのか?」

    おい待て、俺にトニー屋にヤブ医者屋にニコ屋って記憶持ちの確立って低いはずじゃねえのか?
    …神様どうした?仕事サボってんのか?

    「正しくは、ロビンが最近引き取った養子
    サウロからトラ男の話を聞いたんだ」

    「⁉︎サウロはニコ屋が引き取ったのか⁉︎」

    サウロは施設で同室だった体の大きな優しい子供だった。俺と同じように体罰を受けながらも泣いてる他の子供を励ます少し変わった笑い方をする明るい子供。
    里親が見つかった時は1人になる寂しさよりも優しいサウロが幸せになれることの方が嬉しくて笑顔で見送ったんだ

    「ロビン経由でサウロからトラ男の話聞いて…おれ居ても立っても居られなくなって
    ドクターに相談したんだ!そしたらドクターがトラ男を養子に迎えてくれるって
    おれ、凄い嬉しかったのに……」

    「のに?」

    「〜ッドクター何してんだよ⁉︎
    コレじゃあただの誘拐じゃん⁉︎
    おれたち犯罪者になっちゃうじゃんか
    ばかぁぁあッッ‼︎」

    「⁉︎」

    トニー屋がヤブ医者屋に放った言葉に今更ながらに自分の状況が大変よろしくない状況なのだと認識した。

    おい、このヤブ医者は里親に必要な手続きをしたか…?いや、俺が現段階で見たのは危険な薬品をミックスして施設を爆発させたイカれ野郎な行動しか見てねェ…

    「〜トニー屋の言う通りだっヤブ医者屋‼︎今から引き返して所長が気絶した状態でもいいからせめて判子だけでも押してこいっ!」

    「と、トラ男⁉︎そういう問題じゃねぇよ⁉︎」

    「いやぁ、すまんチョッパー!
    俺だって誘拐するつもりなんてなかったぜ?でもよぉ、トラ男が虐待されてるって知っちまったら我慢出来なくてなぁ」

    「えぇええ⁉︎トラ男っ虐待されてたのか⁉︎
    じゃあ、いいっか。」

    「よくねェよ⁉︎
    何納得してんだよトニー屋ぁ!」

    「だっておれもトラ男が虐待されてるって知ったら同じことするから」

    「前世でテメェとヤブ医者屋の話を聞いてから薄々思っていたが…
    トニー屋!なんでテメェら親子の思考回路はすぐに爆発に繋がるんだよ⁉︎」

    「よくドクターが爆発させてたからだ!」

    「だからなんで病気の健診で爆発すんだよ⁉︎」

    「ダァアァアッ‼︎チョッパーもトラ男もウルセェぞ!少し黙れい‼︎」

    「「なんだと⁉︎」」

    「今そのめんどくせぇ里親なんたらのことでババァに頼んでんだよ⁉︎」

    「めんどくさくしたのはお前だろ⁉︎」

    「お〜、誰に電話してるのかと思ったら
    ドクトリーヌに電話してたのか!
    確かにドクトリーヌなら里親の件
    なんとかしてくれそうだな!
    流石ドクター‼︎」

    「ドクトリーヌって」

    まさか世界一の外科医と呼ばれている300歳超えと噂の魔女のことか?
    トニー屋とヤブ医者屋があのドクターくれはと知り合いとは驚いた。

    少し喋り…いや、怒鳴り過ぎて疲れた。
    俺はヤブ医者屋に寄りかかりながらヤブ医者屋と電話向こうの相手との会話に耳をすませた。

    「だからアイツらトラ男くんを虐待してたんだって!お前だってそんなやつ許せないだろ⁉︎

    …え?なんで息の根止めて来なかったのかって? 

    いやいやいや、俺は医者だぞ⁉︎
    爆発はさせるが、命を奪うなんて真似出来るわけねぇだろ⁉︎」

    (…爆発はいいのか?)

    「頼むくれは!俺はチョッパーからトラ男くんの話を聞いた時にこの子はこの世界の医療を変える力を持ってるって思ったんだよ!
    クズしかいねぇ、金のことしか頭にねェ医者がいる中で優しく腕のあるトラ男くんは貴重な存在だ。
    俺ぁ、この才能を見殺しにすることなんて出来ねぇ‼︎ましてや、これから人を救うこの子の手を傷つける奴らのいる場所に一分一秒でもいさせたくなかったんだ‼︎」

    「…っ」

    なんか…よく分からないがヤブ医者屋がスゲェ俺のことを褒めている。
    前を走ってソリを引くトニー屋が良かったなぁ〜とばかりにニヤニヤとこちらを見るものだから「前を見ろ、事故るぞ」と言って睨みつけた。

    「本当か⁉︎あぁっ、ありがとうくれは!
    助かるぜ‼︎‼︎…っえ?条件がある⁇
    おう!なんでも言ってくれ!未来の天才外科医を育てられんなら俺ぁなんだってするぜ?なんせ今回は若いし、病気にもなってねぇからな!エッエッエ‼︎」

    (〜っコイツ、このヤブ医者屋はこれ全部無意識で言ってんのか⁉︎手放しで、俺のこと天才だの…ッックソ、顔アチィ…)

    「トラ男顔真っ赤」

    「み、見るなトニー屋‼︎」

    「エッエッエ‼︎」

    「クソッ、なんか調子狂う」




    「あん?【黒鉛病】の治療薬を3日以内に作れだぁ〜?」

    「⁉︎」

    突然聞こえた恐ろしい病名に体が硬直する。
    黒鉛病は現代版の珀鉛病に近い不治の病。
    珀鉛病と同じ中毒で遺伝性の病気だ。
    悲しいことに珀鉛病を知らない現代の人間たちも歴史を繰り返すように、黒鉛病を感染病だと言っている。
    その感染症だと叫ぶ沢山の声に唯一抗議しているのがドクターくれはだった。
    だから俺は覚えていた。
    ドクターくれはなら、黒鉛病を治してくれるって…だが、先ほどの会話を聞く限りあの天才外科医がこの爆発頭イカれ野郎に治療薬を頼んでいる⁇
    どういうことだ⁉︎
    頭が混乱する中でヤブ医者屋が更に爆弾を投下する。



    「黒鉛病は珀鉛病の劣化版みたいなもんだろ?その薬ならあと2日もすれば出来るから、そう焦るな‼︎それよりトラ男くんのー」

    ーは?この男はいま、なんって言った?

    珀鉛病の劣化版

    薬はもうすぐできる?

    …出来る⁉︎


    「⁉︎ッオイ!ヤブ医者屋‼︎
    薬が…っ黒鉛病の治療薬が出来るって本当なのかっ⁉︎
    まだあの病気は治療法どころか治療薬が作られていないんだぞ⁉︎」

    あまりの衝撃に俺は立ち上がりヤブ医者屋の胸ぐらを掴んで揺さぶった。

    「わわっ!いきなりどうしたんだトラ男くん⁉︎」

    「黒鉛病に近い珀鉛病は政府が消した!
    カルテどころか、それがどんな症状なのかも伝えられたないのに…っどうやって…ッ」

    分かるわけない。
    だってフレバンスの生き残りは俺で
    治療法なんてなかった…。 

    コラさんが命をかけて獲ってきてくれた
    悪魔の実があったから俺は生き残れた

    泣きながら問い詰める俺をヤブ医者屋は優しく腕の中に抱きしめてくれた

    「……大変だったな」

    「っ⁉︎」

    「…死んじまった男の言葉だから
    信じられないかもしれねェが…

    聞いてくれるか?」

    「……ん」

    ヤブ医者屋は俺を抱きしめたまま背中を優しくポンポンと一定間隔で叩いた。
    母親が小さい子供によくするやつだ
    俺は記憶持ちだが、体はまだ小さい10歳の子供…ヤブ医者屋の行動は己の実年齢を分からせる行為であり、落ち着かせるためのものでもあった。

    「トラ男くん…俺はな、珀鉛病についてずっと調べていたんだ。

    フレバンスには俺の知り合いがいてなぁ
    彼は画家でフレバンスの美しい街並みが好きでサクラ島からフレバンスに移り住んでいたんだ。
    最初はフレバンスの楽しい生活を絵葉書で送ってくれていた。

    その男は見たものをまるで写真みたいに紙の上に描き移せるほどの画力の持ち主でな…

    何枚か送られてる絵を見ていて、俺は街の人たちの肌に現れる白いものに気づいた。

    ーまだ珀鉛病が発見される前のことだ」

    「…アンタそんな早い段階から気づいていたのか?」

    「あぁ、だから俺は友人に言った
    その白い肌はなんだと、何かの病気かもしれない!…と……だが人間と言うのは手遅れになってから初めて過ちに気づく人間だ…
    ましてや冬島に住む草臥れた男の戯言など友人どころか、フレバンスの人たちは誰1人聞き入れてくれなかった。」

    「…」

    「しばらく経って、友人から謝罪の言葉と共に絵が送られてきた…その絵に描かれた道を歩く住民の肌には白い斑点が浮き出ていたんだ…!」

    「っ‼︎」

    「その頃には珀鉛病という病名が出来ていた。 
    病名が出来たということは被害が広がってるということ…俺は後悔したよ、もっと酷くなる前に何か出来たんじゃないかって…‼︎
    だから俺は珀鉛病の治療薬を作ることにしたんだ!」

    「…ヤブ医者屋」

    違う、アンタは悪くない。
    医者の国と呼ばれていながら病気を見落とした
    自分の国でもねェ国を本気で心配したアンタの言葉を何一つ信じないで足蹴にした奴らが悪い。

    「研究と実験を繰り返してるうちにイイところまで行ったんだ!
    あともうそろそろで治療薬が出来るってときにフレバンスのニュースを新聞で知った…

    …本当にあともう少しで完成するはずだったんだ!…死んじまって悪かったな、トラ男くんの家族を救えなくて…っすまん!」

    「っ…うぅ」

    「俺ぁ、記憶を持って生まれてきて本当に良かったよ。あの日の研究や実験の記憶があったから黒鉛病の治療法も治療薬も見つけることが出来た‼︎
    フレバンスのような悲劇を…っ
    誰が起こさせるもんかっ‼︎‼︎
    俺が2度と起こさせねェ!」

    「ヤブ医者屋…っ」

     
    【最悪の病院だ…!】 

    【悪かった…昔のことを思い出させちまったか…‼︎
    だが!次はいい医者がいるはずだ!】

    【次行くぞ‼︎
    次はきっと治る‼︎】  

    ーなぁ、コラさん…コラさんの言う
    いい医者はちゃんといたんだ。
    遠い冬島でずっとフレバンスを救おうとした
    医者がいたんだ…‼︎


    「どんな病気も治す‼︎
    それが医者だ‼︎‼︎」

    「‼︎」


    【俺が万能薬になるんだッッ!】

    「…アンタとトニー屋は…
    似たもの同士だな」

    消毒液の染み付いた白衣にぎゅっと抱きついて頬を擦り寄せる。ヤブ医者屋は俺の父さまよりもコラさんよりも歳上だからか、爺ちゃんに甘えてる気分になる。あとヤブ医者屋の頭を撫でる手が優し過ぎるのも悪いんだ。
    前世でトニー屋がヤブ医者屋のことを尊敬して大好きだと言っていた意味がわかった気がする。

    「当たり前だろぉ〜?
    チョッパーは俺の自慢の息子だからなぁ!」

    「ドクターは俺の自慢の父ちゃんだぁ!」

    「…おれは?」

    少し拗ねたように言えばヤブ医者屋からは頭ごと抱きしめられ、ソリを止めたトニー屋はいつもの二足歩行に姿を変えると俺の腹にぎゅっと抱きついた。

    「トラ男くんも自慢の息子だぁ!」

    「トラ男はおれの自慢の弟だぞっ‼︎
    今世はおれが歳上だからなっ!エッエッエ!」

    「エッエッエ‼︎」

    「…ははっ、だからその笑い方やめろって

    ーなぁ、ヤブ医者屋…俺にも黒鉛病の治療薬の実験手伝わせてくれよ」

    「⁉︎…あぁ、もちろんイイぞ!」

    「ドクターの実験はよく爆発するから
    トラ男も気をつけろよな!」

    「…本当に2日で出来んのか?」

    「え〜?エッエッエ!」

    「エッエッエ‼︎」

    「……」


    今世の俺ははじまりは最悪だったが
    俺には医者として一流だが
    なんでも爆発させるイカれた義父と
    小さく頼りない変幻自在のトナカイの
    兄が出来たらしい…

    コラさんが生きて、もし記憶を持って再会できたなら…俺は新しい家族を自慢してやりたいって思ったんだ…。














    【もしトラ男が生まれ変わって
    辛かったり、虐められたり、酷い場所にいたらおれ、ドクターと一緒に必ず迎えに行くよ!おれ、トラ男大好きだから!】



    迎えに来てくれてありがとうな…

    チョッパー…




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