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    nekomata002

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    nekomata002

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    酒場のロシーさん2
    ロシーさん炊飯器を抱えて走るの回

    酒場のロシーさん2「ポーラータング号ね…」

    ローとローのクルーの前から逃げた俺はトットと初めて出会った浜辺に来ていた。
    浜辺近くの船着場には黄色の潜水艦が浮かんでおり、ハートの海賊団のクルーたちが荷物を次々と潜水艦の中に運んでいる。

    「へぇ…女の子もいるのか…
    ローの彼女かなぁ?」

    ローの船が潜水艦なのは知ってはいたが、こうしてジョリーロジャーを掲げた実物を見れば嫌でもローが海賊になってしまったのだと現実を突き付けられる。

    「…潜水艦なのも、きっとオペオペだから
    …なんだよなぁ…」

    はぁ、と深いため息をついて項垂れる。
    原因である俺が落ち込む資格なんてないのに、目の前の潜水艦を見てるだけで辛くなってしまう。
    だって海賊なら普通はデカイ船だ、海賊船が潜水艦なのは世界広し、海賊十色なれどローの船だけ。俺と別れてからローに何があって、何がどうして海賊になったのかは知らない…だけど、潜水艦の理由には絶対にローの 実が関連していると思ってる。

    「ローの体の刺青、凄かったなぁ…
    あれって前と指だけなのか?」

    諜報部員をしていたおかげか俺は短い時間で相手の特徴を見るのが癖になっていた。
    ローの手の甲、指先、何もきね上半身にはデカイハートマークの刺青が彫られいた…
    あの刺青も俺のせい? 
    ローはあの後、コラさんを恨むあまりにめちゃくちゃグレちゃったのか…?
    自分勝手に落ち込みながら近くに生えてる草をぶちぶちと引っこ抜いていると

    「おにーさん!目キレーっスね!」

    「とょっとぉ?にゃに、しゅんだよ…」

    目の前に立ったトットがパチン!と俺のほっぺを両手で挟み込みブロンドのカーテンの向こうを覗きこんだ。

    「ん〜…ロシーさんのあのキレーな赤い目見えないの、なんか寂しいっスね!」

    「別に、好きに見りゃいいだろ?」

    「え⁉︎いいんスかぁ?やったァア!」

    トットは飛び跳ね喜んだ。
    よくわからないがトットは俺の赤い目が好きらしい。
    ハイ、と言って渡された昼メシのおにぎりを2人で食べながら黄色の潜水艦を眺めた。

    「ロシーさんが助けたトラファルガー・ローって人やっぱいい海賊だったっス!」

    「いい海賊?…そう言えばローは市長と何を話していたんだ?」

    「ローさんはログポースが貯まるまでの滞在中に街の人たちの病気治してくれるって言ってたっス!金の代わりに水と食糧を寄越せって‼︎」

    「治療の代金が水と食糧か
    なるほど、アイツらしいなぁ…」

    「ローさんって人間10人くらい殺してそうな顔してるから俺も市長も最初は信じてなかったんスけど、あの人…酒場にいる人間全員の病気言い当てて、俺なら街の人たちの病気を全部治せる、まだ生きてェなら場所を用意しろって…そう宣言した時のローさんスゲ〜カッコよかったんスよ!」

    「おいおい、お前までローに惚れんなよ?
    ただでさえアイツはクルーにモテモテなんだ。彼女も…いるのか?まぁ、あの顔ならいても可笑しくねぇか…」

    ローは、あの子が一番【生】と【死】を理解している。命の大切さを知っているアイツが殺生なんてするはずがねぇのに…
    俺は少なからず不安になっていたみたいだ。
    トットの話を聞いて安心したのか肩の力が抜けて、流れるままに後ろに倒れた。
    隣にいたトットも笑って一緒に横になる

    「じゃあさっきから運んでる荷物は
    街の人たちの感謝の気持ちなんだな…」

    「そうっス‼︎さっきもココに来る途中でローさんに足の怪我治してもらった人がいて
    あの人松葉杖がずっと手放せなかったのに
    今はちゃんと自分の両足で歩いていたんス‼︎ロシーさん、医者って凄いんスね!」

    「…医者が凄いんじゃねェ
    ローが凄いんだ…あの子は優しいから…」

    「え?」

    「…」

    ローと回ってきた病院は酷いものだった。
    調べもしないで、噂を信じて、病気に向き合う勇気も無い医者とは名ばかりの奴らばかりだった…その経験もあってローは言ったんだ

    【俺なら街の人たちの病気を全部治せる】

    「ロシーさん…確かにロシーさんの助けた
    ローさんは海賊になったっス。
    俺はローさんの過去もローさんがどんな人なのかも知らないけど…あの人からは辛いとか苦しいとか、そんな感情一つも感じなかったよ…」

    「トット…」

    「正体…ローさんには教えてもいいんじゃないっスか?俺なら、もし死んだとーちゃんが実は生きてたって知ったら…スゲェ嬉しいっス…」

    「…ありがとな、トット」

    腕を伸ばしてトットの頭を撫でる

    「酒場に戻ろうぜ」

    「………ロシーさんは、頑固っスね」

    「…」

    海賊になることをロー自身が選んだのは分かっている。
    ローのことが大好きな優しい仲間たち.…だけど、俺が生きてることで今のローが…ドフィを倒して過去も俺の死も乗り越えたローにまた過去を思い出させるのは嫌だった…。
    俺だって馬鹿じゃない、ローの七武海入り、ドフラミンゴの失脚、インペルダウン収容、ドレスローザの解放…ローはあの日、俺が出来なかったことをやり遂げるために海賊になったんだ。
    死ぬつもりだったのに旅をしようと、希望とは真逆のあの子を悲しませるだけの嘘をついて死んで行った男が今のローに会う資格なんてねェ…

    それにロシナンテもコラソンもコラさんも
    あの日確かに死んだんだ…


    「うわぁ〜…今日の客は全部ローさんに持って行かれたっスね〜」

    「…予想してた通りって感じだなぁ」

    酒場に戻ると昼時だと言うのに客1人いなかった。どうやらローの診療所には治療を求める患者だけではなくソレを見る健康な野次馬たちも集まっているらしい。
    周りの店も商売にならないと早々に店を閉めてローたちの診療所に行ってしまった。

    「今日は商売にならねぇな…
    トット、店番は俺1人で充分だから
    久しぶりに彼女とデートでもして来いよ」

    「えぇえっ⁉︎い、いいんスか‼︎⁉︎」

    トットには1年前から付き合ってる彼女がいる。その子は元々は店の常連客で店に来ていたのもトットに惚れているからだった。
    エミリーちゃんの方から告白したが、実はトットはエミリーちゃんが初めて来たときから一目惚れだったらしく、両想いの2人は今でもラブラブなカップルだ。

    「あぁ、今日は客なんて来ねーからよ
    たまにはエミリーちゃんと映画でも見に行けよ」

    「ロシーさん…っ〜じゃ、じゃあお言葉に甘えてもいいっスか⁉︎」

    「おう!早く行かねぇとエミリーちゃんもローのとこに行っちゃうぜ?」

    「⁉︎それはダメ‼︎俺っエミリー誘いに行ってくるっス!留守番任せたっスよロシーさん‼︎」

    「気つけてなぁ〜」

    慌てて出て行くトットの後ろ姿を見送ると
    俺は店内の掃除をはじめる。
    もし客が来たとしても数人くらいだろうから、今から掃除してもいいだろうと思ったからだ。
    しかし、待てど暮らせど数人どころか客が来ない。何人かは来るかなぁ?と思いながら初めた掃除も気付けば食器も洗い終わりトイレ掃除まで終わって2階の掃除も終わり…ついにやることもなくなった。


    ーすいません、ごめんなさい
    トラファルガー・ロー舐めてました…

    ピカピカになったキッチンに腰掛け項垂れる。あれ?今日の俺項垂れてばっかだな?
    外はもう真っ暗だった。
    向こうに薄っすら見える明かりはローたちのいる簡易的に作られた診療所だ。
    そう言えばローたちはちゃんとしたご飯食べているのだろうか?

    「…」

    この街の人たちは一度海賊に支配されていたせいか、優しい海賊に感謝はすれど海賊たちに何かを与えることは無い。
    今回は治療費の代わりに食糧を与えてはいるが、その食糧も次の島までの蓄えであるため
    用心深く頭のいいローが腹が減ったからと口にすることは無いと思った。
    ピカピカのキッチンの隣には今日使わなかった大量の米が置かれている。
    一度気になると落ち着かない…。
    関わってはいけないと分かっていてもローがご飯を食べていない、それだけで心配になった。
    居ても立っても居られなくなってキッチンから離れさっき仕舞ったばかりのおにぎりの具材を取り出し、配達用の保冷バッグに全部詰め込んで、業務用のデカイ炊飯器を抱えてローの診療所まで走った。
    診療所は相変わらずの行列で周りにはやはり元気な野次馬たちがローの治療の様子を眺めている。
    その最前列には目をハートにしてローをうっとりとした表情で見る女たち…

    「胸糞ワリィな…」

    この街の人間はいい奴ばかりだ、新しいものが好きで噂好き…それを分かっていても俺には目の前の光景が気持ち悪いものにしか思えなかった。

    ー病気で苦しむ人間は見せ物なんかじゃねぇんだよ…



    【ホワイトモンスター‼︎】

    【フレバンスだと⁉︎
    だっ、誰かぁ早くこの子供を
    殺してくれぇ‼︎】

    【ッコラソン…辛いよ…っ】


    「…っ」


    俺は炊飯器を抱え直すと診療所の裏手に周った。裏に周るとそこには昼間会ったばかりのペンギン帽子が治療に使ったメスを消毒しているので声をかけた。
    向こうも俺のことを覚えていたようで昼間の店員さん?と言って近寄って来る。

    「昼メシありがとうございました!
    みんなスゲェ美味いって食べてましたよ」

    「そっか!そりゃあ良かった!
    俺はあの酒場で働いてるロシーってんだ
    なぁ、お前らさぁ飯食ったか?
    ずっと働きっぱなしじゃねぇか?」

    「メシ?…あ!確かにロシーさんから貰ったやつ食べてから何も食べてねぇかも!」

    「やっぱりなぁ」

    「ーペンギン、メスの消毒は」

    ペンギンの背後、透明なカーテンの向こうから来たのは素肌に白衣を身に付けたローだった。
    いや、治療中くらいは中にTシャツとか着ろよ、と思いながら少し緊張気味にドウモと挨拶をすれば…スゲェ勢いで睨まれた。

    「…アンタは昼間の…何しに来た?」

    「何って…飯炊き?」

    「は?」

    俺の答えが予想外だったのか濃い隈に縁取られた目が大きく見開かれる。

    「…意味がわからねェな…
    いや、アンタの行動は最初から違和感しか感じねぇ…」

    「違和感?」

    ローは血の付いた手術用の手袋を脱ぎ近くのテーブルにそれを置くと距離を縮めるように足速に近づいてくる。

    「アンタ、ロシーさんと言ったか?」

    「え?スゲェな、さっきの会話聞こえてたのか?」

    「話を逸らすな。
    ロシーさん、アンタこの街は
    海賊がよく来ると言ってたな?
    だからと言ってこの街に初めて来たばかりの海賊にタダ飯渡す一般市民なんて俺は見たことねェ。 

    俺たちは海賊だ。

    海賊が街に立ち寄る理由なんざ物資の調達以外他に理由はねぇ…
    ーまぁ、女を買うやつもいるが
    そんなもんは性欲処理で終わる。
    連れて行くことはない。
    つまりすぐに出て行く余所者に優しくしても市民に得なんて何一つねェ」

    「…た、確かにろ…船長さんの言う通りだ……

    ーあ、あの、近くない?」

    「…昼間のことも気になってんだよ」

    「昼間って…っ」

    ローの気迫に押されて俺はどんどん後ろに追い詰められていく、近くにいたペンギン帽子は困惑した表情でローを見ていた。

    「あの場にシャチとペンギンだけが居たなら偶然だって納得出来るし、俺も気にしねェ
    …だが、あの場には見聞色を持ったベポがいた。それでも、誰一人アンタが居なくなったことに気づかなかった」

    「⁉︎そ、それは…うわぁっ⁉︎」

    テントで作られた簡易施設なので俺の後ろには硬い壁も無いし扉も無い。
    ローに追い詰められテントのヒラヒラした生地を踏んだ俺は後ろにすっ転んでしまった。
    倒れた俺の上にローが馬乗りになって胸ぐらを掴み引き寄せる。
    キャプテン!とペンギンから咎めるような声が聞こえた。あと少し顔を動かせばキスしちまうんじゃないかって距離までローが顔を近づけてくる。
    …近い近い近いって!俺は男だぞ⁇

    おかしい、コイツはこんなにパーソナルスペースが近い奴だったか?
    クソガキの頃から知らない人間に対しては警戒心が人一倍強くて、病院を回っている時も唯一信頼している俺の側から片時も離れなかったはず…

    「…俺は危険因子は早めに排除してェタチなもんでなぁ…この街でテメェだけが異質。
    親切心?だとしても海賊に対しての距離が近ェし、慣れてるようにも見える。
    アンタは一体何モンだ?」

    息も吐かせぬ質問に俺は汗を流すことしか出来なかった。
    …本当に前髪を伸ばしててよかった。
    目を見られたら最後、俺の思考や戸惑いがローにバレる。

    「…サンクリットの近くには海兵駐屯所が設立されてるのはアンタも知ってるはずだ
    あぁ、アンタはこの街の住人だから知ってるのは当然だよなァ?
    この街にはその海軍本部の密偵部隊も潜んでいるという情報は俺たちの方でも入手済みだ…。」

    「…俺が、その密偵だと?」

    「それもあるが…
    アンタに会ってからずっと、気持ち悪りぃんだよ。俺は目に見えねェモンに振り回されるのも、計画通りに行かねェのも大嫌いだ。

    だからロシーさん
    アンタの実の能力を教えろ」

    「…」

    本人と対峙して改めてわかった。

    ロー…お前には気が休まる日が
    なかったんだな。

    お前は仲間のために常に頭フル回転させて
    最善のパターンよりも最悪なパターンばかりを考えて生きてきたんだ…。
    喋る前に必ず間が開くのもお前が常に思考を巡らせて、相手の動向を先読みしようとしている証に他ならない。
    お前の頭の中はずっと雑音だらけで…
    俺がその音を消してあげることが出来れば良かったのに、今の俺には出来ないんだ…
    だって能力使ったらお前なら俺だって1発でわかるだろ?

    「…何を勘違いしてるのか知らねェが
    船長さん、俺は能力者なんかじゃねぇよ
    あとは、なんだっけ?密偵?俺はそんなモンがいること自体初めて知ったぜ」

    「嘘だな」

    「嘘じゃねぇって‼︎たぶんシロクマの奴が気づかなかったのは偶然だよ。ほら、アイツはあの時、スゲェ腹減って意識も目線も全部メシにいってたんだから」

    「……」

    ローは俺の言葉に対して何も答えずに空いてる方の手で俺の頬に手を添えた。
    厳しい言葉とは裏腹にその手はまるで割れ物に触るような優しい手つきだったので戸惑った。

    「…その前髪邪魔くせェな…」

    頬から手滑らせ流れるようにローは俺の前髪を指先で撫でると口角を吊り上げニヤリと笑った。


    「切っちまうか?」

    「ダメに決まってんだろっ⁉︎」

    俺はフンッと勢いよく起き上がり目の前にあるローの額に頭突きをかます。
    短い時間ではあるが、過去の経験上ローのように頭の良い用心深い奴は有言実行するタイプの人間だ。
    俺はローが怯んだと同時に下から逃げ出し近くにいたペンギンの背に隠れた。

    「痛っ〜ッ…テメェ…俺に頭突きするとはいい度胸じゃねぇか」

    「…ロシーさん、あの…アンタのその身長じゃ俺の後ろに隠れても意味ないと思いますよ?」

    「ちっ、近づいたらメシ抜きだかんなっっ!」

    「あ?メシなんて要らねェよ
    まだ話は終わってねェんだ…
    逃げんな。
    ペンギン、ソイツをこっちに寄越せ」  

    「いやぁ、今回は俺、ロシーさんの味方かなぁ」

    「?」
     
    「「コワッ‼︎」」

    「キャプ〜テン新しい患者さん待ってるよ?
    …あれ?あーっ!昼間のおっさんじゃないかぁ‼︎またご飯持ってきてくれたのかぁ?」

    「お〜?本当だ、おっさん昼メシ美味かったぜ〜…って、何この空気⁇え?なんか俺たち場違いだった⁇⁇」

    ペンギンの背後でローを威嚇しているとカーテンの向こうから今度はシロクマとシャチが現れた。
    明るい2人が現れたことで先ほどまで漂っていた不審な空気が和らぐ

    「…ベポ、シャチ取り込み中だ」

    「いやいやお取り込み中でもなんでもないからむしろ船長さんお引き取り願いたい‼︎
    あ〜っナイスタイミングだぜお前‼︎
    シロクマくん!シャチくん‼︎お腹減ってねぇか⁉︎俺はお前らに晩飯作りに来たんだ‼︎」

    「え⁉︎ご飯⁉︎食べたい!俺、腹減った‼︎」

    「俺も‼︎」

    「…」

    「キャプテンご飯食べようよ!」

    「……はぁ、わかった」

    ーマジで助かったよ
    シロクマくんシャチくん!

    俺はローに押し倒されたせいで落としてしまった炊飯器と具材の入ったケースを拾い
    手早く米を洗う。

    「本当は作って持ってくるのが一番時短だしいいんだけどよぉ、アンタらのとこの船長さんはかなり用心深いだろ?
    だから船長さんの目の前で作っちまえば
    スキャン無しですぐに食える。

    ほら、過保護な船長さん
    この米をスキャンなり好きにしな
    と言ってもマジでただの米だから」

    「…過保護…はぁ…スキャンしなくても分かる。そのまま作れ。
    ベポ、シャチ…
    向こうにいる奴らに声かけてこい」

    「アイアイキャプテン!」

    「…ペンギンは患者たちを全員帰せ
    今日はもう閉める。
    どうせログポースは一週間しないと貯まらねェんだ、明日は昼時に開くぞ」

    「アイアイキャプテン!」

    ローのテキパキとした指示は妙に心地いいものを感じる。
    なんか、本当…海賊団の船長って感じだな
    炊飯器のスイッチを押したら次は具材の仕上げだ、ローのまだ疑ってますと言わんばかりの視線を背後に感じながら俺はシーチキン缶の蓋をパカっと開けた。
    具材の準備が出来たタイミングで米が炊けたら、水とたっぷりの塩をつけて米を三角に握った。
    片付けの終わったハートのクルーたちが晩飯を今か今かとウキウキした様子で待っているので、いつもより早めに握る。
    デカイ手で作られたおにぎりは普通の人なら3つ食べて腹一杯なのだが、ベポたちはソレを1人5個も完食してくれたんだ。
    ちなみにローは一個多めの6つ食べていた。

    口いっぱいリスみたいに頬張り食べる癖は昔から変わってなくてその姿を盗み見ては懐かしさに笑った。
    潜水艦に残っているクルーの分のおにぎりも作った。潜水艦のメンバーのおにぎりはローの能力で手紙と一緒に直接潜水艦に届けられたらしい。つくづく便利な能力だ。
    もう少し早く気づいて来てあげれば良かったと謝ればクルーたちは来てくれただけで有難いよと笑っていた、優しい奴らだ。
    沢山用意した米もおにぎりもあっという間に無くなって、来た時と同じように炊飯器を持って帰ろうとした俺にペンギンに声をかけられた。

    「それ俺が洗って後で持っていくんで
    置いてってください」

    「えっ?いいのか?
    お前だって疲れてるだろう?」

    「美味いご飯作ってくれたお礼ですから、気にしないでください!」

    「そうか?じゃあ…お言葉に甘えさせて貰うよ。実はコレ、スゲェ重くて持って帰るの大変だなって思ってたんだ」

    「ははっ!見るからに重そうだもんな!
    任せてくれよ、すぐに洗って持って行くからロシーさんは店に戻ってなよ」

    「あぁ、そうさせて貰うよ」

    来た時よりも軽い足取りで酒場に戻る
    無論、客なんて来てるわけもない
    苦笑いを一つこぼして店内に入りキッチンに向かう。
    先ほどのローとの緊張したやり取りのせいでずっと喉がカラカラだったんだ。
    電気をつけようか迷っていたが、窓の外から丁度良い感じに月の光が差し込んでいたので、電気は点けずにコップに冷えた麦茶を一杯注いでゴクゴクと喉を鳴らし飲み干した。
    カラン…とコップ中の氷が溶けてぶつかり静かな音色を奏でる…


    「…う〜みは見ている…

    世界の始まりも

    う〜みは知っている…
    世界の終わりも…」

    カラン、カランと中の氷を鳴らしながら
    無意識に口ずさんでいたのは海兵の頃に
    よく耳にしていた歌だった…

    

「…だぁからいざなう〜

    進むべき道へと…
だから導く…
    正しい世界へ


    痛み、苦しみ、包み込んでくれる

    大きくやさしく…包んでくれる
    

海は見ている

    世界の始まりも
    
海は知っている

    世界の終わりも…


    もしも、自分が消えたとしても〜

    全て知っている海の導き…」

     
    【アンタは一体何モンだ?】

    「…何者か…」

    ー何モンなんだろうな、俺は…

    ロシナンテもコラソンもコラさんも
    あの冬島で死んだ…
    いや、正しくは死に損なった

    もし、あの時に…
    俺がちゃんと死んでいれば

    海になってローを導くことが
    出来たんだろうか?

    
「…恐れてはいけない
    あなたがいるから」

    きっとあの仲間たちと出会うまで
    ローは寂しかったんだろうな…

    
「怯えてはいけない
    仲間も持つから」

    だけど…背中を預けられる
    信頼できる仲間ってのにお前は
    出会えたんだ…

    ベポ、ペンギン、シャチ…
    ローを…孤独で寂しがり屋なアイツを
    見つけて、側にいてくれて…


    
「…進まねばならない
    蒼きその先へ…」


    ありがとうな…
     

    「…」

    「…初めて聞く歌だな」

    「⁉︎」

    突然聞こえた声の方向に振り返ると酒場の入り口に炊飯器の入った段ボールを片手で持つローが立っていた。
    …これを返しに来るのはペンギンだと思っていた。どうやら俺はまんまと船長大好きペンギン野郎に騙されたようだ。

    さっきは味方してくれたのにヒデェよ…。

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